Chantyの世界へようこそ2 / Chanty | 安眠妨害水族館

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Chantyの世界へようこそ2/Chanty

 

1. -yureru-

2. 謳う心臓

3. ミツケタ

4. 比較対象

5. 天翔る (Chantyの世界へようこそ2 ver.)

6. 揺らめくあの日は万華鏡

7. 魔がさした

8. m.o.b. (Chantyの世界へようこそ2 ver.)

9. 貴方だけを壊して飾ってみたい (Chantyの世界へようこそ2 ver.)

10. 君とこの部屋

11. 最低

 

Gt.shia.さんの逮捕、および脱退の影響で半年間の活動自粛となっていたChanty。

活動再開後初となる作品は、3年ぶりとなるフルアルバムでした。

 

会場限定シングルだった「貴方だけを壊して飾ってみたい」や、3rdシングル「まばゆいひかり」に収録されていた「天翔る」など、過去の楽曲もアルバムバージョンとして収録。

一方で、直近のシングル2枚からの収録はなしと、選曲の基準が独特な彼ら。

お約束やセオリーに縛られず、あくまで今のChantyを表現できる楽曲だけを詰め込んだという拘りは、止まっていた時間を取り戻すには十分すぎる存在感をもたらしたのではなかろうか。

 

冷静に聴いてみれば、ライブ映えする激しいナンバーもあれば、会場全体で盛り上がることを想定したパーティーチューンもある。

その意味では、歌モノや雰囲気モノだけで構成されているわけではなく、実はとてもバランス感覚に優れた作品なのが、この「Chantyの世界へようこそ2」です。

 

しかし、どうだろう。

1曲目の「-yureru-」からラストの「最低」までを通して聴いて、本作に対して芽生えた感情は、必ずしも、それとは一致しなかった。

淡い色彩で描かれた絵画のようなアート性。

ぼんやりと浮かび上がるファンタジー世界のような非現実感。

世界観という安っぽい表現でまとめてしまうには惜しいほど、感性の赴くままに作り上げたひとつの美意識を提示された感覚だったのですよ。

打算や計算で作り込まれた作品というイメージはあまりなく、貫くべき「Chantyの世界」が、ただそこにあった。

はじめて作品タイトルを聞いたときは、なんだか雑なネーミングだなと思ったのですが、いや、これは確かに他にはあり得ないな、と。

 

たとえば、「-yureru-」から「謳う心臓」への繋ぎが自然なのだけれど、その時点で彼らの術中。

11曲でひとつの作品という意識が刷り込まれていて、「天翔る」のような奇抜な楽曲も、不思議とすんなりハマってしまう。

自分でもスイッチが入ったと気付かないうちに、いつの間にか高揚感を高められているという構成の妙。

パジャマのまま、宇宙に飛び出していたことに気が付かないのと同じぐらい、未知の体験ができましたもの。

 

音楽性としては邦ロックとの境界線を探るアプローチが多く見られ、上手い具合に大衆性も取り入れている印象。

V系シーンとしての王道とは離れてきた感もありますが、だからとって聴きにくさはないでしょう。

メンバーの脱退でパワーダウンするどころか、活動自粛を準備期間と割り切って緻密に練り込んだ作品をドロップ。

ピークは常に今なのだ、と高らかに主張する1枚です。

 

<過去のChantyに関するレビュー>

不完全な音楽

貴方だけを壊して飾ってみたい

Chantyの世界へようこそ