Covers / 清春 | 安眠妨害水族館

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Covers/清春

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1. 傘がない

2. 悲しみジョニー

3. SAKURA

4. 想い出まくら

5. アザミ嬢のララバイ

6. 月

7. MOON

8. やさしいキスをして

9. 接吻

10. 恋

11. 木蘭の涙

 

 

デビュー25周年記念としてリリースされた清春さんのカヴァーアルバム。

過去にセルフカヴァー作「MEDLEY」を発表していますが、他のアーティストのカヴァー作となると、キャリア初となります。

 

まぁ、清春節のインパクトの強さは、今更語る必要もなく。

実際、耳にしてみても、やはり清春節だな、と。

どんなに普遍的な名曲であっても、彼が歌うことで清春さんの歌になってしまうのだよな、と。

 

ただし、それが強引に我を押しつけたものかと問われると、そんなことはないのです。

しっかりと原曲へのリスペクトが感じられる。

アコースティックでの活動の延長線上といったところで、「エレジー」あたりのサウンドワークに近いアレンジに仕上げており、パーツを付け替えるのではなく、シンプルかつミニマムなバンドサウンドに整理したという印象。

オリジナルのアーティストが歌っても、十分に成立する範囲内の再構築に留めているのですよね。

 

それはつまり、自身が歌えばハマるという楽曲を的確に選別しているということ。

井上陽水の「傘がない」や小坂恭子の「想い出まくら」など、昭和歌謡ベースの楽曲群については、彼のルーツや実績からすれば絶対的な信頼感があって然り。

面白いのは、いきものがかりの「SAKURA」や、DREAMS COME TRUEの「やさしいキスをして」といった、清春さんの活動と交わることがなさそうなラインナップですら、ピンポイントでツボを押さえているところでしょう。

ただチャレンジする、ただ好きだから歌う、ではなく、もっと感覚的な部分で合う合わないを嗅ぎ取っているような選曲にこそ、彼の才能を垣間見ることができるのではないかと思えるほどです。

 

また、シンガーとしての円熟っぷりにも驚かされました。

既に完成されたヴォーカリストとして認識していたし、自分のものに塗り替えてしまう癖の強さも織り込み済み。

清春色に染まっていたとしてもたいして驚かないだろうと考えていたのですが、それは甘かったと痛感。

様々なタイプの楽曲を、無理なく自分らしく歌い上げる基礎的なスキルはもとより、ハスキーな歌声でときに色気、ときに渋みを表現しており、サウンドをシンプル化した分、表情での深みを与えているのですよ。

癖の強さ=清春節ではなく、この表現力を加味したうえで、清春節は成立していたのだと再発見。

表面的に真似をしても、この格好良さを真似することはできませんもの。

 

個人的には、意外性も含めてUAの「悲しみジョニー」がツボでした。

近年の清春さんのスタイルと、確かに近しいものはあるのだよな。

安易な話題作りのためのカヴァー作と同一視することなかれ。

原曲の良さも、彼の実力も、どちらも再確認できるWIN-WINの1枚です。

 

<過去の清春に関するレビュー>

夜、カルメンの詩集

エレジー

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