夜、カルメンの詩集/清春
夜、カルメンの詩集(通常盤)
2,880円
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1. 悲歌
2. 赤の永遠
3. 夜を、想う
4. アモーレ
5. シャレード
6. 眠れる天使
7. TWILIGHT
8. 三日月
9. 美学
10. 貴方になって
連続リリースの第二弾。
清春さんによる、通算9枚目となるオリジナルアルバムです。
TRIAD移籍第一弾アルバムとなった「エレジー」は、リズムレスでのチャレンジングな作品でした。
第二弾となる本作は、対照的にバンドサウンドで、という触れ込みのようで。
しかしながら、必ずしも王道的なアプローチになったわけでも、移籍前の音楽性に回帰したわけでもないのが面白いところ。
ロックアルバムでありながら、その象徴であるエレキギターを用いないという新たな挑戦を行っているのですよ。
その代わりに打ち出しているのは、スパニッシュな要素。
隙間を埋めていくようなエレキギターの分厚いサウンドではなく、スパニッシュ・ギターの空間に響き渡る情熱的な音色が、グルーヴ感のあるリズムに絡み溶けています。
一方で、ボーカルにおける清春節は、あえてそのままに。
寄せるのではなく、個性として強いアクを出して、その結果で生まれる化学反応を楽しんでいる印象ですね。
また、新たな試みではあるのだけれど、どこか懐かしい気がするのもポイントでしょうか。
聴いたことがないはずなのに、いつか聴いたことがあるような錯覚。
様々な音楽へのアタックを続け、ようやく辿り着いたのがスパニッシュだった、と言わんばかりの巡り合わせの妙。
実際に耳にするまで、こんなにもマッチしているとは思いませんでしたもの。
兎にも角にも、肝は前半戦かな。
「悲歌」、「赤の永遠」、「夜を、想う」、「アモーレ」…
シングル曲も出し惜しみせず、過剰なぐらいにスパニッシュ感を特に色濃く反映している楽曲たちを固めてきた印象です。
もちろん、中盤や後半でもフラメンコモチーフのナンバーはあり、それでコンセプトが薄まるというわけでもないのだが、そのうえでしっかりスタートダッシュを決めてきた。
いや、ダッシュと言うほどスピード感があるわけではないのですけれど、心持ちとして。
大御所になってもなお、トライアンドエラーを繰り返す好奇心。
円熟味を増した艶やかな歌声。
激しいサウンドとともに攻撃的に突進する時代は終わってしまったのかもしれませんが、大人のロックに形を変えても、常に変化と進化を追い求めていることが理解できます。
前作から継続して表現への凄みも感じられる、濃密な1枚。
<過去の清春に関するレビュー>