No.0 / BUCK-TICK | 安眠妨害水族館

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No.0/BUCK-TICK

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3,240円
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1. 零式13型「愛」

2. 美醜LOVE

3. GUSTAVE

4. Moon さよならを教えて

5. 薔薇色十字団 -Rosen Kreuzer-

6. サロメ -femme fatale-

7. Ophelia

8. 光の帝国

9. ノスタルジア -ヰタ メカニカリス-

10. IGNITER

11. BABEL

12. ゲルニカの夜

13. 胎内回帰

 

前作「アトム 未来派 No.9」から1年半ぶりとなる、BUCK-TICKの21枚目のフルアルバム。

特にコンセプトは定めていないようですが、"No.9"の次の作品が「No.0」とは意味深です。

 

実際に、音楽性としてのベクトルは、前作から地続き。

ある種、実験作に位置付けられそうな前衛的な音楽を、絶妙なバランス感覚によってまとめあげたのが前作だとすれば、本作は、深淵的な部分に潜り込み、ドロドロとした原液を抽出したようなイメージ。

"No.10"ではなく、「No.0」となったのは、いくら本人たちが否定しようと、必然だったのではないかと思うのですよね。

 

サウンド的には、とてもノイジー。

ときにグラマラスに、ときに耽美主義的に濃厚なB-Tワールドを展開してくのですが、どの楽曲にもインダストリアルな質感を持ったエレクトロサウンドが絡みついて、心地良い不協和音を奏でています。

歌っているメロディには、実はポップなものも多い。

それなのに、ダークでマニアック、アンダーグラウンドな雰囲気を醸し出すシアトリカルな演出は、結成から30年を迎えた彼らなりの攻めの姿勢に違いありません。

 

端的に、本作の奥深さを語るとするならば、生から死へ、という普遍的な流れが、音楽によって再現されていることに尽きる。

誕生を示唆する『零式13型「愛」』からスタートし、「ゲルニカの夜」を経ての「胎内回帰」でクローズ。

胎内から胎内へ。

明確なメッセージが込められたこれらの楽曲は、その間のナンバーの振れ幅が大きいほど、ドラマティックに輝きを増すから面白いものです。

先行リリースされていた「BABEL」も、ここにきてポテンシャルを発揮しており、終盤に感情のピークを持ってくる構成は、見事としか言いようがない。

これだけ佳曲を揃えながら、「胎内回帰」のためのアルバムとすら思えてしまうのも、この「No.0」の完成度が高いことの裏付けと捉えるべきでしょう。

 

インダストリアルロックを体現した「美醜LOVE」、曲名から耽美さが隠せない「薔薇色十字団 -Rosen Kreuzer-」、「サロメ -femme fatale-」、「Ophelia」と、3曲続いての星野さんゾーン、禍々しいサイバーチューン「ノスタルジア -ヰタ メカニカリス-」と、個々に見ても聴きどころは数えきれない。

全体的にはシリアスな中、「GUSTAVE」や「IGNITER」のような、独特な言語感覚が爆発したナンバーを用意しているのも、BUCK-TICKらしいポイントでした。

 

ここまでキャリアを積んでいると、どれが最高傑作か、という議論も盛り上がる。

この「No.0」は、その選択肢のひとつとして、多くのファンからノミネートされたのではなかろうか。

新譜を聴くたびに感じていることではありますが、まだまだ進化の途上であることを見せつけてくれた1枚です。

 

<過去のBUCK-TICKに関するレビュー>

アトム 未来派 No.9

或いはアナーキー
夢見る宇宙
memento mori
十三階は月光