夢見る宇宙 / BUCK-TICK | 安眠妨害水族館

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夢見る宇宙(初回限定盤)(DVD付)/BUCK-TICK
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1.エリーゼのために-ROCK for Elise-
2.CLIMAX TOGETHER
3.LADY SKELETON
4.人魚-mermaid-
5.夢路
6.ONLY YOU-WE ARE NOT ALONE-
7.禁じられた遊び-ADULT CHILDREN-
8.夜想
9.INTER RAPTOR
10.MISS TAKE-I'm not miss take-
11.夢見る宇宙-cosmix-

不動のメンバーで25周年。
新レーベルLingua Soundaを発足したBUCK-TICKの、18枚目のオリジナルアルバムです。

原点回帰のようで、新境地のようでもある。
2年ぶりとなる新作は、実にポップな仕上がりで、とっつきやすい。
80年代の香りを残した古めかしさを、近年強めてきた、デジタルな質感でコーティングしたといったところで、メロディの節々にB-Tっぽさは感じられるのですが、こんな弾け方をした彼らは聴いたことがない、という感想も同時に出てきます。

タイトルのとおり宇宙を表現したのか、空間系のエフェクトで包み込むようなアレンジが特徴的ですね。
ゆらゆら揺られるような浮遊感と、明るくポップなメロディが、カーテンの影のように、陰と陽を交互に映し出す。
心地よく、優しい響きは、さすが、ベテランの味。
熟成された表現力は、ゆったりと、じわじわリスナーの想像力に侵食していきます。

一方で、そんな世界観を演出するために、ボーカル・エフェクトが強めにかかっている。
Vo.櫻井 敦司さんの渋く、艶のある声質を活かす方向ではないのが、もったいないような気もするな。
あちらを立てれば、こちらが立たず、といった部分ではあるのですが、もう少しバンド感があっても良かったでしょうか。
どうしても、エフェクトが強いと歌メロが引っ込んでしまうので、ポップであってもキャッチーさが出てきませんしね。
シングル以外で、キラーチューンになりうる楽曲が欲しかったのも事実。

ひとつ、確実に言えるのは、25周年を迎えても、なお、BUCK-TICKというバンドは、変化を求めているということ。
ダークさを期待した人には不評な作品のようですが、それまでの音楽的な流れを、あっさりと裏切ってしまえるのが、彼らの強みでもあるわけで。
過去の傾向からも、ずっと、このままポップな方向性が続いていくとも考えにくく、そういう意味では、ここまで振り切れた作品というのは、非常にチャレンジ精神が旺盛だと言い換えられるのです。

確かに、本作だけを聴かされて、絶賛するほどのインパクトがあったかと問われれば、微妙なところ。
しかしながら、彼らの歴史という長い目で眺めれば、じっくり作り込まれた作品群の中で、アクセント的な役割を果たす、必要不可欠なピースの一枚なんじゃないかとさえ思えてくる。

不健康なパーティーチューン。
彼らを知る最初の一枚にするには、向いていないかもしれませんが、先入観を持たずに聴いたほうが、純粋に楽しめるのではないかとも考えてしまいます。

<過去のBUCK-TICKに関するレビュー>
memento mori