小さな銀貨を左手に / amber gris | 安眠妨害水族館

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小さな銀貨を左手に/amber gris

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1. arch.
2. 流星群の夜に
3. Absolute being

惜しまれつつも解散が決定してしまったamber gris。
ラストシングルとして届けられたのが、この「小さな銀貨を左手に」でした。

解散が決まってから制作されたとのことですが、必要以上にラストっぽさは出していない印象。
それがまた、彼ららしいと言えるでしょう。
とても強引に結び付けようとするならば、マンネリにならないようなチャレンジが必要なくなり、王道一色でドロップできた、ということはあるのかも。
"amber grisの音楽性って変わったよね。"
そんな台詞が要らないままに解散していく彼らには、美学すら感じられます。

「arch. 」は、Vo.手鞠さんが作曲を担当。
優しいアルペジオからスタートするミディアムチューンです。
穏やかで牧歌的。
相変わらずの異国の物語のような世界観。
どこまでも広がっていく解放感には、高く高く手を伸ばしても届かない空の上の虹を掴もうとするイメージが浮かびました。
「arch. 」という単語から、"虹"を連想したからなのかもしれないのだけれど、これには"笑ったときの目の形"の意味もあるのだとか。
これを知って、更に衝撃を受けたものだ。
急に鋭くなる間奏でのギターのフレーズも格好良いですな。

続く「流星群の夜に」は、Gt. wayneさんによる楽曲。
軽快なリズムで疾走していく、彼ら流のバンド感に溢れるナンバーに仕上がっているかと。
同期を使わず、その代わり、弦楽器を複雑に絡みあわせるamber grisのサウンド。
ツインギターのコンビネーションだけでなく、Ba.殊さんの歌うベースまでハーモニーに加わってくるのだから、どこに意識を置いて聴こうかとワクワクしてしまう。
音源の良さは、こういった場合に何度も聴き返せるというのもありますよね。

Gt.kanameさんがコンポーズしたのは、「Absolute being」。
Dr.ラミさんによる洪水のようなドラムが、押し寄せる感情を演出。
ミディアムバラードとも言えるし、バンド感のあるアッパーチューンとも言える、不思議な聴き心地。
壮大さのあるサウンドだけでなく、歌詞も含めて、これをラストに持ってきた意味が、なんとなく感じ取れるような。

いつも通り。
だからこそ、感傷的になってしまう。
マンネリも限界もまだまだ感じていなかったのに、"おはなし"はこれで終わり。
美しさというものは、かくも残酷なものなのだなぁ。

なお、ベストアルバムである「amber gris THE BEST - I'll be right here -」も同時リリース。
彼らの物語を聴きそびれていた人という人も、これを機に手に取ってみてはいかがでしょうか。

<過去のamber grisに関するレビュー>
Across the blow
this cloudy
CHILDREN+
AROUND CHILDREN
bright or blind
The collapsing garden.-顛末には最上の花を-
フラニーはご機嫌斜め/an fade
pomander
少女のクオレ