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bright or blind/amber gris
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1.bright or blind
2.グリニッジの針の上で

なんだか久しぶりに、普通のCDでのリリースとなったamber grisの新譜。
2ndフルアルバムのドロップを間近に控え、先行シングル的な位置づけなのでしょうか。

個人的に、amber grisは、冬に映えるバンドだと思うのです。
単純に、白系の世界観を持っているからというだけではなく、凛とした空気に、どこまでも声が響いていくような感覚とか、寒いからこそ際立つ、暖炉の炎や、毛糸のマフラーのあたたかさ、柔らかさとか。
そんな、当たり前な冬の風景が、彼らの音楽のイメージと、ぴったり重なるのですよね。

そういう意味では、この時期に発表された楽曲に、ハズレがあるはずもなく。
そろそろマンネリになりそうだなぁ、という懸念を吹き飛ばす、クオリティの高い作品に仕上がっているのではないかと。
ここ最近で見せてきた、コンセプチュアルなアートワークは控え目になっているけれど、ストレートに響く本作には、シンプルなリリース形態も合っているのかもしれません。

「bright or blind」は、彼らにしては珍しくスピード感を意識したナンバー。
とは言え、激しさよりも、軽快さが先立っているのが、このバンドらしい。
小気味良いイントロに、思わず鳥肌が立ってしまいました。

流れるように、次々に注ぎ込まれる歌メロが秀逸。
ファルセットも綺麗にハマっていて、とにかく、聴いていて清々しさがあります。
一息で駆け抜けるストレートな展開は、まさに、世界観バンドのシングル曲といったところ。

カップリングの「グリニッジの針の上で」は、amber grisのど真ん中。
牧歌的で、どこか西欧的な雰囲気は、もはや、空気に触れただけで彼らだとわかる個性にまで昇華された。
こちらは、「bright or blind」に比べたら構成が複雑なこともあり、第一印象でのインパクトは欠けるのだけれど、従来の彼らが好きだった人なら、安心して聴ける楽曲でしょう。

必ずしも、オリジナリティが突き抜けているというわけではない。
それなのに、現代のシーンにおいて、異質な存在になりつつあるのが興味深いですな。
何はともあれ、やりたい音楽がはっきりしていることと、頑なに貫いていること。
彼らについては、それだけでここまで上ってきたという印象すらあるくらいです。

こうなると、フルアルバムが読めなくなってくる。
相変わらずの音楽性を貫くのか、バラエティを広げるアプローチも見せるのか。
進化、深化・・・もしかしたら、神化してしまう可能性だって、十分に考えられるのではないか。
まぁ、期待しすぎは毒なので、しばらく、本作を聴きながら想像に浸ってみます。

<過去のamber grisに関するレビュー>
The collapsing garden.-顛末には最上の花を-
フラニーはご機嫌斜め/an fade
pomander