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this cloudy/amber gris
¥1,050
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1. this cloudy
2. Looking all the pain

amber grisの4thシングル。
初回プレス分が完売ということで、追加プレスされるようですが、基本的には1タイプのみでの販売。
今時、この規模のバンドでは珍しい!と思うようになってしまったのは、よくよく考えれば悲しいところです。

表題曲である「this cloudy」は、Gt.kanameさんの作曲。
サビだけ聴くと、キャッチーな王道チューンに聞こえるのですけれど、全体を見ると、どこか複雑なイメージがありますでしょうか。
シングルっぽい疾走感と、彼ららしい世界観重視のミディアムパートが交互に押し寄せてる。
気持ちの良さと、難解さ、両方の側面があり、一筋縄ではいかないところが、じっくり聴き込むための味わいになっていますね。

カップリングの「Looking all the pain」は、重たくザラザラとしたアメリカンロック。
こちらは、Vo.手鞠さんの作曲ですが、なかなか意表を突く路線ですな。
新境地と呼んでもいいのでは。
ロックンロールテイストを前面に押し出し、ゆったりと進行していくのかと思いきや、後半は疾走していくあたりは、カップリング曲をカップリングに終わらせない工夫。
渋さがあって、格好良いです。

どちらも、新鮮なチャレンジを盛り込みつつ、それだけでは終わらせない安定感も織り交ぜている。
結果的に、amber grisらしさの幅が、広がっていくことになりそう。
既存の曲に馴染めば、間違いなくライブ映えするナンバーになるでしょうし、これからの成長にも期待できそうな楽曲たちです。

一方で、彼らの強みである、表現力を見せ付ける場面に欠けてしまった気がして、物足りなさもあり。
世界観に引き込まれる鮮やかなストーリーテリングは、少し薄まった感はありました。
この辺りは、シングルは断片的、アルバムで答えを出すということなのかもしれませんので、これはこれでアリ、と楽観的に捉えておいても良いのでしょうが。
今後のリリース作品によって、どう昇華させていくのか、楽しみに見守りたいものです。

ちなみに、初回プレス分は、シングルの帯が、9月19日に渋谷O-EAST で開催される無料ワンマンライブの招待チケットとなっているのも注目ポイント。
じわじわとセールスを伸ばし、完売に至る要因のひとつとなりました。
シングルであれば、通常のライブに行くよりも安いですし、ライブに行きにくい環境の人のことを考えれば、ライブ会場で配布というスタイルよりも、お得感がある気がしますね。
こういう仕掛けを取り入れるバンドが増えてきても、面白いのかも。

<過去のamber grisに関するレビュー>
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