2017年5月20日(土)代々木。今日は人生で初めて自分の歌をスタジオレコーディングするのだ。私のようなアマチュア・ヴォーカリストは数多かれど、自分の歌をちゃんとしたスタジオでレコーディングしたりCD化したりなんていう機会はそうそう無いんじゃなかろうか。そう思うとドキドキしてくる。

どういう経緯でそんなことになったかというと、クラウドファンディングで
藤枝利教さんの絵本を制作するプロジェクトに参加したことは
このブログの記事でもご紹介した通り。そして絵本の朗読CDを制作するに際して作曲家でもあるプロジェクトメンバーの順いづみさんが藤枝さんの詞に曲をつけてテーマソングとして朗読CDに入れることになったのだ。ヴォーカリストでもあるいづみさんが歌うのかと思ったら「男性(藤枝さん)の詞なので男性ヴォーカルの方が自然」とのことで私にお鉢が回ってきたという次第。光栄な事である。
【写真左】プロジェクトリーダーの橋本美佳さんと藤枝利教さん

【写真右】作曲者の順いづみさん、私、橋本美佳さん
スタジオに入ると、TVのスタジオレコーディングシーンでマイクの前にある、あの丸いネット(ポップガードと呼ぶらしい)が目に入る。おお、プロッぽいじゃん!とまたドキドキする。

そして、ディレクターが指示を出す副調整室(通称「サブ」:sub control room)もある。中では宇宙船のコクピットのようなコンソールに囲まれたプロジェクトメンバーの浅賀希義さんが、忙しそうに機器を操作してはモニターボタンを押しながらガラス越しにスタジオ内と会話をしているではないか。
おー、プロだ、プロだ。まるで俺もプロみたいだ~、とドキドキ。

今回のテーマソング「アオシのように」(アオシは絵本の主人公の名前)は、4月初めにいづみさんから歌詞と譜面を送って戴き、その後、いづみさんがピアノで弾き語りした音源、そして最後にオーケストレーションしてミキシングされたマイナスワン(カラオケ)音源を、浅賀さんから送って戴いた。
それらをもとに自分なりに家で何度も歌ってみてはいたものの、作曲者のいづみさんにお会いするのもこの日が初めてなので「本当にこんな感じでいいのかな?」と、不安でドキドキしていた。
そもそも「作詞者と作曲者の前で歌う」なんてことはjazzのスタンダードナンバーでは、まずあり得ないことである。先日の朗読と同じく、またもや作者の前でのパフォーマンスではないか。作曲者のいづみさんからのディレクションは「『夢をかなえてドラえもん』や中村雅俊の『青春貴族』の雰囲気で」「身体を横に揺らして歌う感じで」「気楽にかるーく」というもの。
ヘッドフォンからのマイナスワン(カラオケ)音源を聴きながらマイクに向かって歌うのだが「最初は録音せずに、私も一緒に歌いますので」といずみさんが横で一緒に歌ってくれたのでホッとした。そしてファーストテイクを一人で歌った。さて、どうだったんだろう?
譜面を見ながら私のファーストテイクを聴いていたいづみさんが、サブ(副調整室)から出て来て具体的にダメ出しをしてくれる。

「ほぼイイカンジなんですけど、う~ん、あまり言葉を伸ばしてつなげようとせずに、もっと、もっと切ってもらっちゃっていいです」
「あ、はい」
「全体的に、ポルタメントがかかっている感じなんですよね」
「あぁ、なるほどぉ…」
ポルタメント(port.)とは、音程を変化させる際に階段状にではなくスロープのように移行させること、極端にいうとトロンボーンのバルブをスライドさせるような音の変化の仕方だ。自分では殆んど無意識なので、きっとこれは私のクセなのだろう。
歌詞の単語はたいてい複数の音階から成っている。例えば一番の歌詞にある「うれしいね」という単語は「レ・ド♯・シ・ラ・シ」というメロディになっているので、単語としてつなげて歌おうとすれば「レ」から「ド♯」に移行する間は一瞬であってもその中間の音階を連続的に変化させることになるが、言葉をつなげずに「う・れ・し・い・ね」と音階ごとにブツ切りにして歌えば「レ」と「ド♯」の間の音はなくなるというワケで「なるほどぉ…」なのである。
「ではもう1回、練習テイク録ります」とインターホンから浅賀さんの声。結局、このテイクを含め練習テイク2本を録った時点で、あとはその両テイクの良い所を編集すればOKということで本番テイクを録らずに終了した。ヨカッタヨカッタ、だって「本番いきま~す」なんて言われたら恐らく緊張してうまく歌えなかったと思うしね。

歌の録音は予定通り1時間で終了、いよいよメインの絵本朗読だ。橋本さん、前尾さん、久木崎さん、中田さん、加藤さん、5人の朗読家による分読をシーンごとに録音する。私はもうアガり状態なので、サブ(副調整室)からガラス越しに皆さんの朗読を楽しませて戴いた。いやあ、歌(の録音)の方が先で本当に良かった~。

↑レコーディングを終えたプロジェクトメンバーと藤枝さん
Saigottimo