・俺は、子どもたちのことを、

 嫌いなことやイヤなことから、

 簡単に逃げ出すような人間には育てない。



・お義父さんやお義母さんに対して、

 気に入らないこともある。

 逆に、俺に対してもあるだろう。



・こうなってしまえば、

 ただ水に流すことは無理だと思う。



・だけど、みんなで全てをぶつけ合えば、

 そうやって話すことで、

 お互いが理解できて、

 きっと上手くいくと思う。



・全てを話し合って、

 その上でなら水に流せるはずだ。







親父も妻の父親も、

ちゃんと俺の目を見て、

黙って俺の話を聞いていた。







・実は、子どもの入院がなければ、

 昨日、俺は、お義父さんの家へ

 泊まりに行く予定だった。



・そして、お義父さんとは、

 男同士、腹を割って話すつもりだった。



・ちゃんと話し合って、

 上手くいかせるつもりだった。



・どうやって4人で上手くやっていくか?



・どうやって互いの実家や両親とも、

 上手くやっていくか?



・俺は、それだけしか考えていなかった。







親父も妻の父親も口を挟まないで、

そのまま聞いていた。




予想どおり、親父たちは、

病院の喫茶店にいた。






親父は、俺が席に着くと、


「今まで話していた内容を言う。」


と、話を切り出してきた。






俺は、


「いや、まだ今は聞かない。

 今まで話していた内容を、

 今の俺は知らない状態だから、

 今から俺が話すことを聞いてくれれば、

 より真実味があるはずだから。」


と、親父の話を遮って、

俺は、自分の考えを話し始めた。







・今は、子どもを全てにおいて優先すべきだ。



・俺は、4人での生活をどうやったら、
 
 上手くやっていけるかしか考えていない。






そして、親父と妻の父親は、

この日の子どもの病状を、

まだ知らなかったから、

俺は、病状の説明を始めた。






子どもの髄膜炎の病状は、

まだ検査結果が出ていないから、

ハッキリとしたことは分からないけど…。


でも、少しずつ回復している様子を

説明しているうちに、

情けないかもしれないけど、

少し安心してきて、

涙が出てしまったんだ。






「女衆には、言わないでほしい。

 みっともないから…。」






そして、俺は、話を続けた。



妻の母親は、

健常者であるにも関わらず、

妊婦の患者さんに、

道をあけるという考えがなく、


妊婦の患者さんが、

健常者をよけて通れば良い。

と、考えているんだろうか…?






ましてや、自分の娘が、

最近まで同じ妊婦だったのにも関わらず、

しかも、この病院の妊婦さんは、

患者さんでもあるんだ。







俺には、妻の母親の神経が、

全く理解できなかった。






俺は、妻の母親に、


「患者さんにとって、

 最短コースをあけるもんでしょう。



と言ったけど、


妻の母親は、

顔をそむけて、返事をしなかった…。







そこへ妻の一言が、


「そういうところがイヤなの!」








お前まで逆ギレか…。


面白いじゃないか!


「そうか、でもな、

 お前の母親が非常識だって、

 お前は、分かってるんだろうが!

 実際、お前は、俺の指示どおりに、

 患者さんに道をあけてるだろうが。」







「………。」



妻は、言葉に詰まっていたようだ。






俺は、話を続けた。


「俺は、お前の親とも、

 真剣に付き合うために話してるんだ。

 俺は、俺の親とも、お前の親とも、

 同じようにしてるだけだ!」







妻の母親に向って、


「お義母さんは分からないかな?」






妻の母親は、


「分からない。娘の気持ちが全てです!」





ん?

娘の気持ち?

何の話をしてるんだ?

意味が分からないぞ。


「違うでしょ。

 今は子どもが全てだ!」






やっぱり全く話にならない……。



そうだ。

親父が妻の父親と話しているんだった。





ナースステーション前の受付のところで、

おふくろが待っていたから、

俺は、おふくろと一緒に、

エレベーターに乗った。



妻と妻の母親も一緒に乗ってきた。






妻たちは、妻の母親の車へ向かっていったから、

俺は、その後を追って妻たちに話しかけた。






「いつも母の腰を気に掛けてくれていますよね?

 俺は、親父たちを探してくるから、

 母を車で休ませて下さい。」





こう言えば、断れないはずだ。


おふくろを置いてきたのは、

妻たちを逃がさないためだ。


おふくろが一緒にいることで、

下手な作戦も練れないだろう。





俺は、母を妻の母親の車に乗せて、

親父たちのいるであろう

病院の喫茶店へ向かった。



妻の母親は、近づいてくるなり、


「むこうのお父さんが凄い勢いで来て、

 お父さんを下へ連れて行ったの!」


と、妻に話してきた。







下へ?



おそらく病院の1階にある喫茶店だろう。



親父が妻の父親を連れて出して、

話しているんだな。



親父、なかなかやるじゃないか!








俺と妻と妻の母親は、

子どもの病室を出てから、

ナースセンター近くの

廊下の真ん中にいた。






そこへ、妊婦の患者さんが現れた。







俺は、患者さんが通れるように、

廊下の端に寄った。






どういうつもりか、

妻と妻の母親は、

患者さんに道をあけようとしない。







俺は、妻と妻の母親に、


「こっちへ寄ってあげな。」


と、患者さんと逆側に退くよう言った。






ところが、妻の母親は、

俺の指示とは反対の患者さん側へ動いた。






なぜ?





俺は、妻の母親に、


「そこじゃ患者さんが通るのに、

 邪魔になるから、こっちへ。」


と、再び言ったけど、

妻の母親は、動かなかった……。







俺は、妻の母親に対して、

どうしようもない怒りがこみ上げてきて、

それを抑えることができなかった。



「なんて非常識なんだ!」







妻の母親は、逆ギレして、


「通れるでしょ!」








その妊婦の患者さんは、

結局、妻の母親を避けながら、

通り過ぎていった……。



子どもの病室に入って、

子どもと面会中に、

妻に聞かなくちゃならないことを、

タイミングをみて切り出した。






・役所から電話があって、

 子どもは長女になるらしいから、

 出生届の訂正しなくちゃならない。

 訂正印が必要なんだけど、
 
 出生届と同じ印鑑じゃなきゃダメらしい。

 その印鑑は、お前が持ってるはずだ。






妻は、探しもしないで、


「持ってない。家にあるはず。」






・お前がいま持っている

 そのバッグに入ってるだろう。






そう言われても、

妻は、バッグを開けることもなく、


「無いよ。」







子どもの出生届のことだぞ…。


何なんだ。この態度は…。






・さっきの話、子どもの前でも、

 同じことが言えるのか?






「もう決めたから!」






また出た!


決まり文句だ!










俺は、子どもの面会ノートへ、


「早く4人で生活したいね。」


と書いて子どもの快復を祈っていた。






すると、それを見ていた妻は、

もの凄くイヤそうな顔をした。






・なに?その顔は?






「もう決めたのに、

 そんなこと書くからだよ!」








全く話にならない………。





結局、妻からは、

前日に持ってくる予定だった、

妻と一緒に搾乳して冷凍保存していた、

母乳をどうしたのか?とは、

聞いてこなかった………。








子どもとの面会後、

二人で退室して、廊下を戻っていたら、

血相を変えた妻の母親が、

こっちへ突き進んで来た。