諸手当の設計の考え方
諸手当の設計を考える場合必要なことは、「一度付けたらはずせないような手当は作らない」ということであり、「手当の支給根拠を明確にして、該当すれば支給する、該当しなければ支給しない」ということです。
手当の設定については、自社の実情によりますので、必要に応じて設定してください。
支給根拠が明確であり、支給条件を外れた場合は支給しないということを徹底すれば、特に問題はありません。
下記の手当については、この機会に廃止することを検討しましょう。
精皆勤手当
精皆勤手当とは、出勤促進の狙いをもった手当です。しかし、最近は有給休暇を利用してほとんどの人が皆勤になっているようすので、精皆勤手当の必要性はそれほどありません。特別に事情がなければ、縮小・廃止するのがよいでしょう。
資格手当・技術手当
資格手当とは、職務に役立つ公的資格を保有している者に支給する手当です。
公的資格を持っていることに価値があるのか、それを使って仕事をすることに価値があるのかによって違ってきます。前者の場合は資格手当に意味がありますが、後者の場合は資格手当ではなく、昇格条件などに組み込んで、実際の仕事内容により賃金を決めるほうが合理的です。資格取得を奨励したいのであれば、手当でなく一時金などで対応する方法もあります。
住宅手当
住宅手当は家族手当と同じように生計費を配慮した手当です。しかし、家族手当と違って明確な支給基準(支給根拠)がない場合が多いので一度見直す必要があります。
(例、持ち家と借家で金額が違うのはなぜ?世帯主と世帯主でない場合との違いはなぜ?など)
家族手当の必要性
家族手当とは、社員の生計費を補完するために支給される賃金であり、通常、扶養家族の人数によって金額を決めています。
これは、家族を抱えて生活費のかかる社員が安心して仕事に打ち込めるようにという意味があります。支給基準で多いのは、税法上の控除対象配偶者と18歳(22歳)までの子供です。
家族手当の充実には賛否両論がありますが、少なくても、年齢給で生活保障を考えるよりは、家族手当により家族数で生活保障を考えた方が、現実的であるということです。
家族手当で生活保障を考えれば、必要な人に必要な時期だけ支給することができます。
また、家族手当は時間外手当等の計算基礎には入りません。
支給される人にとっても、支給する側にとっても都合のよい手当といえます。
年齢給を採用しないのであれば、ぜひ充実して欲しい賃金項目です。
特に子供に対する手当は「顧客の創造」という点でも、充実して欲しいものです。
調整給の処理
賃金制度の変更により、賃金が急に増えたり、下がったりするということは、好ましくありません。
したがって、調整給により移行前の賃金総額と新制度移行後の賃金総額とを同じにします。この調整給は期間限定とし、期限を過ぎた後は廃止します。
調整給の処理については、社内で「公平とは何か」という観点でよく検討し、慎重に対応する必要があります。
・ 既得権益をどこまで認めるか
・ 調整給を発生させないために本人はどのような努力をすればよいのか。また、その可能性はあるのか。
・ 廃止の期限はどれくらいにするのか。
・ 徐々に減額するのか、一度の減額するのか
・ 全額廃止するのか、一部残すのか?
金額にもよりますが、目安として、3年間で全額廃止するのがよいでしょう。いつまでも、過去の既得権益を引きずっていると、新しい制度がうまく機能しなくなります。
職能給の必要性?
職能給は職務遂行能力により金額が決まるということであり、能力開発に基づいた人事制度には合致しますが、基本的に能力は経験により上昇するということを考えれば、職能給も上がり続けることになってしまいます。
また、同じ仕事をしている限り能力は低下しないということ、また、仕事が変わった場合、新しい仕事での能力がないにもかかわらず、高賃金を支払うということにより、整合性を欠く恐れがあります。
そして、一番の問題は同じ仕事をしても、担当する人によってコストが違ってくるということです。これは企業経営としては大きな矛盾が発生し、海外との価格競争に勝てないことになってしまいます。
営業や開発など職務遂行能力により職務価値(成果)が決まるような仕事であれば問題ありませんが、製造や一般事務のように本人の職務遂行能力ではなく組織の役割によって職務価値(成果)が決まるような仕事では大きな問題になってしまいます。
また、昇給や昇格は評価によって決まるのですが、職能給の場合、その評価の中心は職務遂行能力になると考えられ、その測定のための基準作りに大きな労力は使ってしまうことになります。
そのような矛盾やムダを避けるために、職能給という言葉を使用しない方が、都合が良いよいようです。
職能給という言葉のイメージから、同じ仕事をしていれば能力は下がらないので、賃金も下がらない、と判断されます。
また、能力の基準は「~できる」というようになりますが、実際にしていなくても、「できる」からよい評価になってしまうということがあります。
人事考課の方も、能力ではなくて行動や成果を中心に評価するようになっていますので、賃金の方も職能給というのはあまり、好ましくありません。
年齢給の必要性?
生活保障の観点から年齢給を取り入れている企業がありますが、これだけ価値観が多様化しいろいろなライフスタイルの人がいる中で、年齢が生計費に連動するのかという疑問があります。
さらに、「年齢が高いことが、自動的に賃金が高い」ということは、逆に年齢が高い人が「リストラの対象」になりやすいことになったり、採用しにくいことになったりしまいます。
昨今の「高年齢者いじめ」の人事政策はすべて「高年齢者=高賃金」が原因になっています。
年齢と賃金を切り離すことで、仕事をする能力や成果に焦点を当てた人事政策ができることになります。したがって、生活保障は必要ですが、年齢に連動した賃金項目は必要ないと考えた方が労使ともにメリットがあると考えられます。
勤続給の必要性?
会社への貢献度ということで、勤続給を採用している企業がありますが、勤続することで能力や習熟度が向上し、その点が賃金に反映するような賃金項目があるのであれば、勤続給は特に必要ないものと考えられます。
また、中途採用者との差がずっとついたままというのも、労働力の流動性を考えると好ましくありません。
基本給の決定要素
まず、金額と賃金決定要素が1対1で対応することが大事です。年齢とか勤続とか能力とかを総合的に判断して金額が決まるという方式は、どうすればどうなるかが明確ではなく、好ましくありません。
「金額と賃金決定要素は1対1」これが基本です。
今まで多くの企業は「基本給=年齢給+勤続給+職能給」という形で運用していました。これはこれでいいのですが、すべて増えるもの同士の合算で金額が決まるというのは、今後の経営環境を考えると、ちょっとムリがあるように思えます。
ここは少し、検討して決める必要があります。
● 年齢給の必要性? → 廃止
● 勤続給の必要性? → 廃止
● 職能給の必要性? → 廃止
賃金体系の検討
月例賃金の中身を検討します。基本給として支給する金額と諸手当として支給する金額があると思います。まず、その項目を明確にします。
さらに、基本給の中身として、賃金決定要素を選定する必要があります。昔、「基本給は本人の年齢、勤続、能力などを勘案して総合的に決める」という制度がありましたが、この「総合的」という考え方が好ましくありません。年齢なら年齢でいくら、勤続なら勤続でいくら、というように、1対1で金額が決まるようにすることが必要です。
諸手当の設計を考える場合必要なことは、「一度付けたらはずせないような手当は作らない」ということであり、「手当の支給根拠を明確にして、該当すれば支給する、該当しなければ支給しない」ということを徹底することです。
また、諸手当には所定内賃金に入るものと入らないものがありますので、確認しておくことが必要です。
人事制度の改善
職能資格制度を導入して、約4年となりますが、現在では形だけの制度になりつつあります。本当の意味での能力評価制度ではなく、手続き上で全社員がとらえている感じです。
店舗によって社員のレベルの差や昇格スピードの差などがあり、平等な評価ができていないのが現状です。公平に評価するために、どのように評価していくのがいいのか、ご意見を頂ければ幸いです。
職能資格制度もきっちり運用すれば、それなりの効果があります。そのような仕組みすらない会社がたくさんあるわけですから、かなりしっかり管理されているものと思います。
今の仕組みでよいと思いますが、更なるステップアップを考えるのであれば、次のような点を考慮してください。
1.能力による等級付けは、結局は年功になってしまう、ということです。
「~ができる」という考え方は、実際やっている仕事とは関係なく、等級が決まり、 「~ができる」ことは、経験により年々増えていきます。
2.「~ができる」「~の知識がある」という事を、基準にするのではなく、 「行っている仕事」を基準にする方が、妥当と考えられます。
3.評価項目は「~ができる」「~の知識がある」など能力ではなく、 目に見える行動や成果にしぼって選定するとよいと思います。
4.会社(店舗)の利益が出れば、昇給ではなくて、賞与に反映するようにするとよいでしょう。
5.もちろん個人評価の反映は大事ですが、その前に、店舗の業績がどのように反映するかを明確にした方がよいです。まず、店舗の業績を上げることが一番です。(全体最適)
個人評価を先に導入すると、店舗の業績より自分の評価を優先するようになります。(個人最適)
以上、よろしくお願いします。
賃金制度作成の進め方
賃金制度を作るために決めるべきことは次の5つです。
① 賃金体系はどうなっているのか 基本給や手当等含めて全体の体系をどうするか
② 賃金を決める要素は何か 年齢なのか、勤続なのか、能力なのか・・・
③ 評価結果はどのように反映されるのか 積み上げ式にするのか、洗い替え式にするか
④ 賞与の配分方法はどうするか 賞与総原資の決め方、個人への配分の仕方は
⑤ 会社の業績をどのように反映するか 賞与へ反映させるか、昇給に反映させるか
まず、基本給を含めた賃金体系全体を設計し、その上で基本給の決定要素を明確にしていくようにします。その後、基本給の賃金表を作成し、評価結果の連動方法を考えます。賃金の仕組みが決まってから、賞与配分方法を検討するとよいでしょう。会社業績の反映については、最後に検討します。
● 賃金制度改定の注意点
賃金制度改定において、注意すべき点は次の通りです。
① 賃金制度が変わったという理由だけで、急に個人の賃金が増えたり減ったりということは好ましいことではありません。移行時には賃金の変動がないようにします。
② 新制度移行後、新しいルールで運用するようにします。
③ 新制度に当てはめた場合の差額については移行期間を設け、激変を緩和するようにします。
④ 移行期間を設ける場合であっても、賃金が減額の対象になる人にはよく説明をし、納得してもらうことが必要です。
問題発見の着眼点
着眼点
① 理想の状態ではない、あるべき姿からほど遠い、抱いているイメージとは違う。
② 変化できない、向上しない、進歩がみられない、革新できない。
③ 期待に反している、ニーズを満たしていない。
④ 成果が上がらない、意図したことが実現できない、強みを活かしていない。
⑤ このままではいけない、放っておくわけにはいかない、無視できない。
⑥ 物足りない、釈然としない、納得できる状態ではない。
⑦ 悩んでいる、壁にぶつかった、どうしていいかわからない、見通しが立たない。
⑧ 人に迷惑をかける、苦情が増える、他に支障をきたす、悪い影響が出そうである。
⑨ やる気がない、沈滞したムードになる。
⑩ 利益が出ない、業績が落ちる、会社の地位が落ちる。