エンドロール 著者:鏑木 蓮 出版社:早川書房 出版年:2014年1月 評価:☆☆☆ 完了日:2014年10月20日 ラベル:現代
その瞬間を迎えるとき
頭のなかに流れるエンドロールは
幸福なものでありたい
エンドロール=走馬灯
2011年。さわや書店年間ベスト作品〈さわベス〉文芸書 第1位選出作品。
さわベスとか言われても、さわや書店がどこにあるのか分かんないんですけど。
建物も、そこに住んでいる人たちも老朽化してしまっている大阪吹田市にある団地。
門川誠一(29歳)はそこでアパート管理のアルバイトをしている。
ある日、隣近所からの通報により、独居老人・帯屋の部屋まで様子を見に行くことになった。ここ数日、帯屋は姿を見せていないのだという。
「孤独死」。核家族化で高齢化が進んだ現代では、そんなことは珍しくもなくなった。それを見つけてしまった時には、おったまげて腰抜かすと思うけど。なんのせ、死というものに自分は直面したことがない。3、4歳の頃、同居していた父方の祖母が亡くなったけど、理解してなかったし。
遺品整理を押し付けられた門川。そこで彼は、故・帯屋が映画好きだったことを知る。何を隠そう、門川も映画監督になる夢を見て、故郷を飛び出してきた若者なのだ。
遺品に8ミリフィルムがあった。そこに映っていたのは、行商人の女性。いつしかその映像に見入ってしまっていた門川。一介の老人が撮ったにしては、不思議な魅力が詰まっている映像に、門川は自分もこのような作品を撮りたいと思うようになる。
と同時に、孤独に思えた帯屋老人の人生についても知りたくなった。
門川は、なぜだか人との付き合いを避けているフシがある。人に興味を示さないそんな彼が、これほどまでに帯屋に惹きつけられたなぜなのか?
人に興味ないって・・・・、映画監督を志している者としてそれはどうなんだ?(;^_^A
門川は遺品のノートに書いてあった帯屋の友人・知人と思われる住所録に連絡を取り、直接会ってみることにした。会えたのは3人。多くの人たちは、帯屋のように鬼籍に入っていた。
一人目の長塚に、帯屋老人のノートに書いてあった詩ともつかない意味を掴み損ねる文章を見せた途端、彼は大激怒。「すぐに処分しろ」と言って、それ以上のことを聞き出すことができなくなってしまった。
詩のような文章の意味とはなんなのか?8ミリフィルムに映っている女性はだれなのか?なぜ、長塚は態度を急変させたのか?謎は深まるばかり。
それでも、門川は知りたいと思う。忠告を無視して調べを進めていく。
人間嫌いの門川だけど、調べ物をするとなると、やっぱり一人では限界がある。小さな手掛かりを追って、他人と協力していく。そこで、いままで心を閉ざしていた頃には感じ取れなかった気持ちに気づくのだ。人との縁って不思議だな。
孤独死とは、本当に孤独なものだろうか。その人の死の瞬間だけをもって、孤独な人生だったと断定しないでほしい。可哀想な人、と哀れみの目でもって見ないでほしい。可哀そうな人生だったかどうかなんて、誰にも分からないじゃないか。
解説は、さわや書店フェザン店・田中幹人氏。フェザン店ってなんだよ!?