泳ぐ写真家龍之介 -28ページ目

「空き缶と思いやり」

資源ゴミ回収の日になると、
ビールの空き缶がたくさん回収箱に出ます。
それを、多摩川の河川敷に住んでいるホームレスが
早朝集めて回っているのを目にすることができます。

その様子を見ていると、
NYに居た頃のある出来事を思い出します。

私は、ビールが大好きです。
NYに住んでいた頃、
ビールはコーラよりも安く手に入れることができました。
ですから、貧乏生活していた私でも
毎日、思う存分ビールを飲むことができました。
そうすると、
空き缶が溜まってきて、
部屋を占領するようになりました。

ある日、ゴミ袋に空き缶を満載して、
それを担いで
サンタクロースみたいな格好で、
近くのスーパーの空き缶回収窓口まで出かけました。

そこには、回収した空き缶で生活しているホームレスが
大勢並んでいました。

長時間並んだ後で、
窓口で袋を差し出すと、
これは、受け取れないと係の女性が言います。
私が持って来たビール缶は、すべて500ml缶。
回収できるのは350mlだけだと
取り付く島もありません。

途方にくれていると、
後ろに並んでいた、黒人の老人が
「500ml缶を買い取ってくれるところを知っているぜ」
と言います。
振り返ると、明らかに、ホームレスです。
虐げられて、疲れて、ぼろぼろになっている様子が
一目で分かる風体です。

「どこで買い取ってくれるんだ?」
との私の問いに
「ここから20分くらいダウンタウンに下ったところにある」
との答え。

私は、面倒くさくなって、
「この缶、全部あんたにあげるよ」
と、空き缶を満載した袋を差し出して、
その場を去ろうとしました。

その瞬間、その老人は
私のジャケットの裾を掴んで、
「俺はこんなにめぐんでもらって、それはうれしいぜ、
しかし、おまえ、今日のメシはどうするんだ?」
と、子を思う親の様な心配顔です。

私は、一瞬何を言っているのか
理解しかねましたが、
「ああ、私のことをホームレスだと思って、心配してくれているんだ」
と分かると、胸に熱いものが込み上げてくるのを感じました。

この冬を超すことができるか分からないような
よぼよぼの黒人の老人が、
他人の、その日のメシのことを心配してくれる
その、思いやりと、心の余裕に感動しました。

自分のことしか考えない人間が多いNYで
底辺に生きている老人が
得体の知れない東洋人のことを心配してくれたことに
感動しました。

「思いやり」とは、このような事を言うのだと
実感しました。

もう、その老人は生きてはいないでしょう。
しかし、
彼は、とても大切なことを
私に残してくれたと思っています。





「ホンダF1撤退」

F1は、私が中学生の頃、
おそらく1960年代から、放送されていました。
ときどき父といっしょに見ていたことを思い出します。
世界が、特に日本が高度成長するに従って、
時代の気分として、人気を得てきたと思います。
多くの人が
時代のスピードとF1のスピードがシンクロしているような
イメージをもっていたのではないのでしょうか?

そのF1の常連であるホンダがF1から撤退するとか。

私は、
「よく決断した。あっぱれじゃ! ごくろうさまでした。」
と言いたいと思います。

F1レース自体が消費するガソリンや排気ガスは
全体から比べると、微々たるものだと思いますが、
いくら、ヨーロッパを中心に継承されてきた文化とは言え、
もう、「時代の気分」がそうではないのです。
アフリカの小国の国家予算に匹敵するような金額をつぎ込むだけの価値が
あるのか?21世紀に入った頃から、疑問に思っていました。

今は、スピードで変化する時代から、
パラダイムが劇的に変化する時代に変わってきたと思います。
そんな時代にF1はいかにも不釣り合いだと感じます。


フェラーリも撤退しそうな気配で、
もう、このへんで、あのような20世紀的なイベントは、
考え直した方が良いのではないでしょうか。


ホンダの決断は、F1の行く末を予見していると思います。

他のメーカーの英断を期待したいと思います。



「Nikon D3X」

Nikon D3Xが発売されるそうです。
2400万画素だとか。
スタジオプロ向けに満足の画質だと評価してありますが、
基本的に画素数と、画質は関係ありません。
画素数は、サイズを決める要素なのです。

画質は、CCDやCMOSの大きさが大きいほど(画素の面積が大きいほど)
良くなります。
ですから、CMOSが35mmフルサイズだったら、
大体、1200~1600万画素のカメラが諧調を含め画質的には
優れていると言えます(ソフトウェアの問題をクリアーしたとして)。

ですから、プロがもっと画質を求めるとしたら、
ブローニーサイズのCCDを搭載した
中型カメラ以外に選択肢はないと考えています。

ハッセルブラッドが今度150~160万円程度で販売されそうですから、
そうなったら、選択肢として良いと思います。

フィルムカメラと同じですが、
フィルムや、CCDが大きいほど
画質に優れます。

35mmカメラのメリットは画質ではなく
機動性と速写性なのです。
35mmデジタルカメラのベストは
35mmフルサイズで、1200~1600万画素数のCMOSを
搭載したカメラだと断言できます。

仕事でA4の見開きを撮るような仕事では
その位の画素数がサイズ的にも無駄がなく、画質もベストなのです。
2400万画素の35mmカメラを使うなんて
私には、考えられません。
必要も無いサイズを撮るために、
無駄なリソースを使うことになります。

無意味な画素数主義にとても疑問を持ちます。
もし、ニコンにその気があるのなら、
2400万画素の中型カメラを出してほしいと思います。