「プッチーニとヴェルディ」
フィレンツェのホテルブリストルでの撮影でのこと。
編集者の立ち会いがなく、
私とマネージャー氏の二人だけののんびりとした撮影になりました。
撮影をそそくさと済まし、お茶でもいただきながら、世間話になりました。
彼が、突然
「君はオペラに興味があるかね?」との問いに、
「少しは」と答えると、
「それではプッチーニとベルディのどちらが好きかね」との質問。
私は庶民的なプッチーニが好きなので、そのことを伝えると、
ニンマリとして「私もそうだよ。今日は私がランチをご馳走しよう」。
という意外な展開になりました。
私は、たまたま彼はプッチーニが好きだったのだ。
と考えていましたが、
あとで、イタリアではヴェルディよりプッチーニの方が
圧倒的に人気があるということを知りました。
確かにヴェルディは芸術性が高く、
イタリア以外の国でもインテリ層に人気があります。
私もヴェルディの芸術性はすばらしいと思いますが、
あまりにクラシックしているところが好きではありません。
そういえプッチーニの作品には水戸黄門的なところがあって、
同じストーリーを何度見ても、飽きず、毎回感動してしまいます。
「遺伝子」
先日、青山近辺で打ち合わせがあったので、
久々に、青山一丁目のホンダ本社ショールームを覗いてみました。
ちょうど、「ホンダの歴史」を、今までのレーサーや名車を展示して、
ショーアップしていましたが、
やはり「レースの遺伝子」というものを
ひしひしと感じてしまいました。
ここが、現在F1にチャレンジしているトヨタとの
決定的な違いなんでしょうね。
レースやプレミアムカーの世界は、
やはり、その企業の成り立ちや、長い歴史の中で
出来上がっていくブランドイメージが絶対的に必要で、
たまたまアメリカで成功したから、プレミアムカーメーカーとしてブランドを作ったり、
お金が余ったので、レースをするということでは
ブランドはだめなんでしょうね。
そんなことを、このショールームを見ながら考えてしまいました。
「白バックに白を撮る」
というのは、
白という色を彩度が全くないものだと定義する場合、不可能です。
人の目には、
白い紙の上に白いタブレットが置いてあるように見えても、
写真上では、
グレーのバックにグレーのタブレットが置いてあることになります。
しかし、
タブレットは、質感を持っているので、
少々、グレーがかっていても気にならないのですが、
背景を完全な純白にしたいといった場合は、
撮影上の技術では、それは不可能になります。
フィルム時代には、
製版技術者やデザイナーさんに、
「背景切り抜いて、白にして。」なんて注文していましたが、
今はデジタル時代。
私は納品時点で、自分で、背景を完全にデータゼロ(R255,G255,B255)の状態にします。
速い話、切り抜くわけですが、
被写体にシャドウや、微妙なボケがある場合は、
製版屋さんには任せられません。
やはり、
写真を自然に見せるというのはカメラマンが一番なのです。
白バックで錠剤を撮るという仕事がありました。
私はあまり商品は撮らないのですが、
やっかいな被写体なので、ここは腕の見せ所と、引き受けました。
こういった撮影は技術的にとても勉強になります。
あとで、
人物やドキュメンタリーの撮影にも
意外なところで役に立ってくるものです。