風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」 -94ページ目

「来たよ。たぶんあれだ」木の上から聞こえる静かな声が合図だった。キャラともう一匹を先頭にして、猫たちは公園の前の茂みに身を隠した。



「行くぞキャラ」
えさを置いて立ち去った人間たちの姿が見えなくなるのを確認して、2匹は公園の前に進み出た。
一匹の猫がそのえさに歩み寄る。

飛び出したキャラが声を限りに叫ぶ。
「それを食べちゃダメよ!」
「やめろキャラ! そんな奴ら死んだっていいんだ!」
「あなたは放っておいて! 毒の食べ物なんて見過ごせないわ!」



2匹は取っ組み合いになった。
よほど腹を空かせていたのか、騒ぎをよそに一匹の猫がガツガツとそれを食べ始めた。

「やめて! 食べちゃダメ!」
「こいつらなんて死んだっていいんだって!」



1匹が食べ始めるとほかの猫も寄ってきた。
その時だった。えさを食べた猫が突如嘔吐し、苦しみ始めた。

「やっぱり毒だわ! だから言ったのに!」キャラは泣き叫ぶ。
ほかの猫たちも驚いたように見つめている。

「不用意に食べちゃダメよ! 大丈夫な食べ物を運んでくる人たちは、私たちだけが知っているわ! 私たちはここでずっと暮らしてきたんだから」



「お前たち、なにをしておる!」長老たちが出てきた。
「何を争っているんだ」



「僕たちの公園が奪われたんだ!」
「それはまた、どうしたことだ」隣町の長老は目を大きくし、この町の長老は眉間を鋭くした。

「俺たちの公園が閉鎖になったからさ」どうやら隣町のボスらしき猫だ。
「公園が閉鎖?」
「事故が起こったらしいいんだ」


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公園のテーブルに2匹の猫が寝ていた。木漏れ日がその毛並みを優しく揺らす。
「右側が隣町の長老だよ」
殿下の囁きに、僕は頷いた。

僕たちはゆっくりと歩み寄り、そっと木のベンチに飛び乗った。
「おやすみのところすみません」遠慮がちに殿下が声をかけると、2匹がゆっくりと振り向いた。

「ん? おお、五右衛門じゃないか」
げ……殿下は五右衛門なんて純和風の名前だったのか。マギーの方がまだましな気がする。

「ご無沙汰しております」
「どうした、突然」
「実は、隣町と戦争になりそうなんです」

「なんじゃと!」隣町の長老が目を見開いた。
「知恵をお借りするために来たのです。もちろん、それを回避するための知恵を」



経緯(いきさつ)は殿下がかいつまんで話した。二匹の長老は目を閉じたままそれを聞いていた。本当に寝てしまったのではないかと、心配するほどの静けさだった。

「なるほど、そんなバカげたことをあいつらやりよったか。すまんの」隣町の長老は苦渋に満ちた表情を浮かべた。

「いえ、長老様が謝る必要などありません」殿下が慌てて首を振る。
「しかし、ワシらの仲裁などあいつらが受けるだろうか」
「その前に手を打ちます。頃合いを見て出ていただければいいのです。長老様たちの力が必要なのです」

「ということは、状況を見ながらワシらは待機ということじゃな。おいぼれで役に立つならなんでも引き受けよう」

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「マギーも騒ぐ案かい」殿下がちょっと呆れた顔をした。
「うん。でも、すこしというか、だいぶ違うんだけどね」
「じゃあ、聞かせてもらおうか」

「人間たちが捕まえに来るのは昼間に違いない。だから、夜中は騒ぎ続けながら毎日交代で見張りをするんだ。そして、見慣れない人が食べ物を置きに来たら彼らに知らせるんだ」

「見慣れない人が食べ物を置きに?」
「毒が入っている恐れがある。だからそれを食べたら死ぬよって教えるんだ。たとえ毒の食べ物を置かれなくても、見慣れない人たちが大勢でやってきたら教えるんだ。捕まえに来たから、逃げろって」

「で、どうやって陥れるつもりなんだい」
「いや、卑怯な手は使わない」



「そうか……でも、もしも、それを食べちゃったらどうする」
「犠牲者が出るかもしれないけど、それは僕たちにどうにかできることじゃない。忠告の役はキャラにやってもらおうか。彼女なら真剣に説得すると思うし」

「食べないように言えばいいのね。誰も傷つかないのなら、やります」キャラが頷いた。

「しかし、それだけのことで、解決するのかい」
「そこで、長老たちに出てもらうのさ。まずは長老たちに会うのが先かな。殿下その公園に行ってみようよ」

「よし、分かった」




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台風一過のような、雲一つない空と日差しでしたね。
気温が上がって、熊本の避難者たちの熱中症が心配になります。

夏の前には梅雨もやってくるのだし、早く対策を打ってほしいものです。

「猫たちの戦争」の一編が失せてしまって、ワードなどに下書きをしていないから、簡単に書いて、さっきこっそり間に挟みました。
ウィンドウ10にアップグレードしたせいでもないだろうけど、どこへ行ったか謎です。

ウィンドウズ10、右クリックでBing検索できるからまだいいけど、日本語変換辞書のATOKが使えません。いざ書こうとポイントするとタスクバーが消えてしまって、半角入力しかできないのです。

そうそう、これは以前にアップグレードした時も出た不具合でした。だから削除したんだけど。

Microsoft IMEが中途半端で使いづらいこと……。

ATOKの辞書機能に色んなものを登録してあって、文字を打ち込むだけでその記号などが出るようにしてあったので、かなり不便です。

たとえば「さんてんりーだ」と打ち込めば「……」が表示されるように登録してあったのです。
かぎかっこと打てば、左右の鍵カッコが出るように。

いじくりまわして何とかしなければ。

連休最終日の明日はUターンラッシュなのでしょうね。この時期には自動車事故が気になります。
みなさま、お気をつけてお戻りくださいね。


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「そう。人間は愚かだって、お父さんが、いや……僕は思うんだ。人間は闘いばかりをしてきた。いい暮らしを求めて闘った。庭を広くするために闘った。お腹いっぱい食べるために闘った。いっぱい食べたのに、それでも飽き足らなくて餌を作って運ぶ人をたくさん作るために闘った。蓄えるために闘った。自分たちが楽に暮らせるために、自分たちが信じたものを押しつけるために、闘ったんだ。人間は愚かだ」

しんと静まりかえったまま、誰も声を出さない。お父さんの受け売りが役に立った。
「ところで、長老たちはいまどこにいるの」僕は殿下を見た。

「町の外れに用水路が流れている」
「ああ、知ってる」
「その途中に、小さな公園がある」
ある。木のテーブルと木のベンチがあるだけの、公園とも呼べないような場所。木の枝が覆い被さり、薄暗い地面は粘土質で、いつもジメジメとしている、誰も近寄らないような場所。



「長老たちに動いてもらおう」
「しかしマギー、追われるように引退した隣町の長老に、そんな力があるだろうか」

「その前に、僕たちがやらなければならないことがある」
「いったい何を」
「夜中に騒ぐんだよ」

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「夜中に騒ぎ続ければ、眠りを妨げられた人間たちが動き出す」
「捕まえに来るってこと」
「そうさ、そして怖いところへ連れていかれる」

「ホケンジョだ! 聞いたことがある」
「殺されちゃうの!?」
「新しい人間の家族が見つからなければ、最悪そうなるかもしれない」

「ダメよそんなこと!」
「だって、僕らの公園を奪われたんだよ。そもそも悪いのは向うじゃないか」
「愛がないわ」

「愛ってなに?」

視線の先で子猫たちが振り向いた。

「食べ物じゃないよ。愛って何かを、今キャラが説明してあげるよ。な、キャラ」

「急にそう言われても困るんだけど……たとえば、食事を運んでくれる人たち、あのおじちゃんやおばあちゃんや、親子連れ。あれって愛なんじゃないのかな。私たちは何もお返しなんてしないわ。あの人たちだって、それを望んでのことじゃないだろうし」


「僕も、その乱暴な案には賛成できないな」三毛猫が首を振った。



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「マギーどうすればいいの?」
キャラの声に、僕は腕にあごを乗せて目を閉じた。そして口を開いた。もちろん、何の作戦もなかったけど。

「戦争はいけない」
「そうよね! ぜったいそうよね!」キャラの嬉しそうな声が弾けた。
「ダメか」黒猫殿下の重々しい声が、僕んちの庭に響く。

「そう、戦争はダメだ」眠気に引き込まれながら僕は声を出した。その間も、何の手段も思いつかなかったけど。

「マギーがそこまで言うなら、戦争は避けるべきなのだろう。しかし、どうすれば……」

「作戦を思いついたんだけど」その声に僕は顔を上げた。どうやら黒い鼻髭模様の白黒猫のようだ。



「聞いてくれるか、マギーに殿下」
夢だからどうでもいいや。僕が頷くと同時に、殿下もゆっくりとあごを引いた。

「夜中に騒ぐのさ」
「夜中に、騒ぐ?」殿下が首をかしげる。

「僕たちの公園の周りで騒ぐんだよ。毎晩毎晩。すると隣町の猫たちも応戦してくるだろう? それを繰り返すんだ。するとどうなると思う?」
「質問はいらないから、要点だけを話してくれないか」

黒猫殿下の声に、白黒猫が頷いた。
「人間を使うのさ」
今度は僕が声を出す番だった。「人間を?」

「そうだよマギー。人間は優しいけれど、一番怖いのもまた人間だ。それは僕たちが一番よく分かっているよね」

人間が一番優しくて、一番怖い? 僕らは猫たちにどんな優しさを与えて、どんな怖い仕打ちをしてきたのだろう。よく分からなかったけど、全員が頷いたことだけは確かだった。


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「キャラ、あなたの気持ちは分かるけれど、公園を奪われるということは、あたしたちの餌場を失うということなのよ。あなたも知っての通り、あの公園には食事を運んできてくれる優しい人たちがいるわ。それがなくなったらどうなると思うの?」

キャラと呼ばれたチャトラの猫は、それでも嫌々をするように首を振る。




「それで命を落としてゆく仲間たちも、いるかもしれないのよ。この住宅地では、滅多にネズミも見かけないのは知っているわよね」サビ猫が諭すように口にする。

面白そうな夢だけど、眠いからもう寝よう。腕にあごを乗せて目を閉じたとき、声がした。

「マギー、作戦はどうする」黒猫の声だ。
「作戦って、どうして闘う前提になってしまっているの?」キャラが食い下がる。

「いや、キャラ、闘わない選択だってもちろんある。それも含めての作戦だ」

「闘いを避けるのは、作戦じゃなくて策じゃないの? ほらマギー寝ている場合じゃないでしょう? どうか戦争を回避してください」

考え込んでいるのか、マギーと呼ばれた猫の声はしない。

「ねえ、マギー」耳元で声がして僕は目を開けた。見上げるとチャトラのキャラが憂い顔で見下ろしている。腕にあごを乗せるときに、どうもフワフワしていると思ったら、僕も猫だったようだ。そしてどうやら僕の名前はマギーらしい。テレビで見かけるコミック手品師みたいで、嫌だけど。

「いや、いいんだ。そっとしておいてやれ。マギーの爺は我らをまとめる勇者だった。彼もまた、目を閉じて黙考し、答えを導いたと聞く。そしてそれは、すべて成功したそうだ。あの頃は戦争続きだったからな」
「それはなぜですか」三毛猫が静かに問いかける。



「長老だ。長老をないがしろにしたせいで戦争が起こった。だからこそ、それを回避するために長老会議が開かれるようになったのだ。しかし今を見てみろ、隣町の長老は追い出されて、規律もなく、統制も取れず、血気に逸った若者ばかりだ。我が町の長老も、それを哀れみ一緒に出て行った。この世は力でなんとかなると錯覚している若造しかいないのだ。みな老いてゆくというのに、それを忘れているのだ」


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隣町と戦争だって?
それはそれで怖いことだけど、何で猫がしゃべってるんだ?

「殿下、今なんとおっしゃいました!?」黒と茶のまだら模様のサビ猫が尾っぽを振り立てた。
ダメだ。みんなしゃべってる……。



「隣町と戦争だ」
「して殿下、その理由は!?」
「我らの公園を乗っ取られた。公園のぐるりを隣町の猫たちが見張り、誰も入れぬようにしている」
「な、なんと!」サビ猫が眉間を険しくする。



僕はお父さんに教えてもらったことがある。サビ猫ってメスしかいないって。でもこのサビ猫は気が強そうだ。何だか顔もキリリとしている。

「乗っ取られたとは、どういうことでしょうか? 隣町の彼らは自分たちの公園を持っていたはずですよね」チャトラが心配げに問いかける。

黒猫は風のように木を降りて、縁側に立った。
「詳しくは知らないのだが、奴らの公園で事故が起こったらしい。公園は一時閉鎖して全面的に作り直しをするようだ」

「先の戦争で、私のじいちゃんは死にました。戦争なんていやです」チャトラが憂い顔で首を振る。



「知っている。お前の爺は私の爺のよき先輩だったと聞いた。お前の爺の死に様は聞いている」黒猫が苦い思い出を辿るように澄み渡る空を仰いだ。


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ふと目を開けると、眩い日差しが目に飛び込んできた。ぐるりと見渡すと猫が寝ていた。

眠気に勝てなかった僕は腕にあごを乗せてまどろみに戻ろうとした。が、そのとき、今見た景色が爆発的に変だったことに気づいて、はっと顔を上げて視線を左右に振った。

なんだ、なんか変だぞ!
じっと目をこらす。背筋をゾワゾワッと毛虫が這い上がる。

この猫たちは、なんでこんなにでかいんだ! 人間ぐらいでかいじゃないか!
目の前には規則正しく上下する、山のような三毛猫の背中があった。背筋と首を伸ばして向こう側を見た。

眠りながら尻尾をくねらすキジ猫。2匹が寄り添うように寝ているチャトラと三毛猫。
右を見るとあごを庭の地面につけたまま、トロリと眠そうな目をこっちに向ける黒と茶のまだら模様のサビ猫。

花壇の縁の木で爪研ぎをする、鼻の下に髭のような黒い模様のある白黒の猫。その横で仲良く眠る親子のキジトラ。



春の陽射しを浴びて空にそびえる花水木。葉を茂らせた紫陽花。花が咲くのはもう少し先になるはずの青い花を咲かす紫陽花。正確には萼(がく)片なのだと、母が教えてくれた。

この景色に僕は見覚えがあったし、この猫たちにも見覚えがある。ここは僕の家の縁側だし、この猫たちは、この庭に昼寝をしに来る野良猫たちだ。なんて夢を見ているんだ。僕は おかしくて少し笑った。

僕が生まれたときに植えたというネモフィラに、植えたわけでもないタンポポに、僕が小学校に入学した祝いにと、父と母が近所の河原から抜いてきて植えたまま、雑草化してしまったような花ニラ……。

陽射しがそれたちをくっきりと浮かび上がらせている。良介(僕)が中学に入学したらまた違うものを植えるという母。

嫌いなネギだけはやめて欲しいと要望を出した僕に対して、ネギなんて植えるわけないでしょ! と眉間を険しくした母が、ああ、ネギもいいかもね、大根は育つかしら、ジャガイモはどうだろう、と言った、あの花壇。



「隣町と戦争になる」静かだが、響き渡るような声がした。頭上を見上げると、真っ黒な猫が、こちらを見下ろしていた。



は……?


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