ふと目を開けると、眩い日差しが目に飛び込んできた。ぐるりと見渡すと猫が寝ていた。
眠気に勝てなかった僕は腕にあごを乗せてまどろみに戻ろうとした。が、そのとき、今見た景色が爆発的に変だったことに気づいて、はっと顔を上げて視線を左右に振った。
なんだ、なんか変だぞ!
じっと目をこらす。背筋をゾワゾワッと毛虫が這い上がる。
この猫たちは、なんでこんなにでかいんだ! 人間ぐらいでかいじゃないか!
目の前には規則正しく上下する、山のような三毛猫の背中があった。背筋と首を伸ばして向こう側を見た。
眠りながら尻尾をくねらすキジ猫。2匹が寄り添うように寝ているチャトラと三毛猫。
右を見るとあごを庭の地面につけたまま、トロリと眠そうな目をこっちに向ける黒と茶のまだら模様のサビ猫。
花壇の縁の木で爪研ぎをする、鼻の下に髭のような黒い模様のある白黒の猫。その横で仲良く眠る親子のキジトラ。

春の陽射しを浴びて空にそびえる花水木。葉を茂らせた紫陽花。花が咲くのはもう少し先になるはずの青い花を咲かす紫陽花。正確には萼(がく)片なのだと、母が教えてくれた。
この景色に僕は見覚えがあったし、この猫たちにも見覚えがある。ここは僕の家の縁側だし、この猫たちは、この庭に昼寝をしに来る野良猫たちだ。なんて夢を見ているんだ。僕は おかしくて少し笑った。
僕が生まれたときに植えたというネモフィラに、植えたわけでもないタンポポに、僕が小学校に入学した祝いにと、父と母が近所の河原から抜いてきて植えたまま、雑草化してしまったような花ニラ……。
陽射しがそれたちをくっきりと浮かび上がらせている。良介(僕)が中学に入学したらまた違うものを植えるという母。
嫌いなネギだけはやめて欲しいと要望を出した僕に対して、ネギなんて植えるわけないでしょ! と眉間を険しくした母が、ああ、ネギもいいかもね、大根は育つかしら、ジャガイモはどうだろう、と言った、あの花壇。

「隣町と戦争になる」静かだが、響き渡るような声がした。頭上を見上げると、真っ黒な猫が、こちらを見下ろしていた。

は……?
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