武蔵小金井だったろうか。
友人の部屋は駅からかなり遠かったと記憶している。
「泊まっていけばいいじゃん」
一緒に行った友人たちは、胡坐をかいたり、寝そべって肩ひじ突いたり、まったりと泊まる態勢だった。
そう、「貧乏学生が行く!」の頃だ。
けれど僕はやんわりと断った。
「帰る」
でも、結構長い距離を急いだのにもかかわらず、最終電車に間に合わなかったのだ。
普通の人ならどうだろう。
「電車行っちゃったよ」って戻るのではないだろうか。
僕はどうしたかというと、迷うことなく線路を頼りに部屋に向かって歩き始めたのだ。
冬だったと記憶している。それに下駄だった。そんなもので長距離歩いたら後頭部にかなりの衝撃が来ることを初めて知った。
部屋を目指したのはいいけど寂しい道だ。街路灯だけが唯一の灯りの暗い通りだ。人の気配なんてない。もちろんお店なんてものもない。まあ、あっても真夜中だからやってないけど。
僕は車の多そうな道を目指した。たぶん青梅街道とかかな。
その分遠回りに違いなかったけど、歩いた。時折行き交うヘッドライトが照らす道を黙々と歩いた。
街路灯とヘッドライトと夜空の星。それだけが世界と僕を繋いでいるような心もとない道のりだった。
徒歩で近いとはいいがたいけれど、僕にとってはものすごく贅沢な元禄寿司(回転寿司)を食べるために、西武新宿線沿いの僕の部屋から、新宿まで歩いたことがある。そう、電車賃なんてとんでもない。
僕の住むその駅まで、だれ一人歩いていないいくつもの町と闇夜の道を通り抜け、武蔵小金井駅から歩いたのだ。
うろうろしたから相当遠回りをしたはずだ。
今でも僕の記憶に残る一シーンがある。周りは木々。ゆるくカーブを描く上り坂で向うからヘッドライトが近づいてくる。
人が乗っている。それだけが僕の救いだった。
やがて見慣れた景色が僕を励ます。ほっとした気持ちを愛でつつ、ラストウォークに力を入れた。
部屋に帰り着いたときには外が明るくなってきていた。
着いた、着いた、着いたあ……。
ぺたりとへたり込み、やがてうつぶせに、そのうち大の字になった。
やっとたどり着いた。
僕は生還者の気分だった。
なぜそんなことをしたのか。
僕は人の家に泊まるのも、自分の部屋に人を泊めるのも嫌なタイプだからだ。
みんなで旅行に行こうよ!
うん、一人部屋ならOKだよ。
僕はこんなタイプだ。
部屋に泊めるのが面倒くさいとか、物に触られるのが嫌だとか、シャワーも使わずに布団に寝られるのは困るとか。
何か食べ物を出したりとか気を使わなくちゃならないとか。
そんなものとは全く関係ない。
他人が同じ部屋の中で寝ている状況が、僕には耐えられないのだ。
小さいころから、親戚の家に泊まるのも嫌だった。寝付けなくなるのだ。
どうにか許されるのは、おじいちゃんおばあちゃんの家だけ。要するに直系だ。
「泊めてよ」とか簡単に口にする人の気持ちが、僕にはわからない。
今はバツイチの独り者だからだあれだけど、許されるのは家族。
それから、彼女。
この二つしかない。
みなさんの暇な時でいいので、コメント欄に、「おK」「NG」「絶対嫌!」と入れてもらえると嬉しいです。
もちろん、家族、彼氏、彼女、以外の場合です。
僕は少数派だろうか、それとも意外に多数派だろうか。
それがとても気になるのです。
ポチポチッとクリックお願いします。
短編小説 ブログランキングへ