風神 あ~る・ベルンハルトJrの「夜更けのラプソディ」 -38ページ目

ネットを駆け巡ったこの一文を、ご存知の読者も多いだろう。拡大を続けたスパークの被害が減少に転じたのは、これに違いないという意見がある一方、偶然ではないのかという声も少なくない。その理由は、この文章のどこにも、スパークを避ける手立てが書かれていないことによる。

しかし、これが広がり始めた頃と被害の減少が始まったのは、時を同じくするという見方は一致する。今は削除されてアクセスすることはできないが、筆者はたまたまこの大元となるブログを見た。

これがスパークを収束に導いたとする明確な根拠はないが、否定できる論拠もない。
今はコピーペーストされたものが広がっている。
以下に、全文を掲載する。


タイトルはついていないようだ。

『仄暗い海の中に、身を委(ゆだ)ねる生命があった。暖かな海に揺蕩(たゆた)う萌芽は、恐れという言葉の存在しない世界で、とろとろと眠った──』

僕は食い入るようにそれを読んだ。最後まで目を通したが、確かに、スパークを避けるためにはどうすればいいかなど、どこにも書かれてはいない。

「詩織」隣で眠る詩織の腕を揺すった。
「ふ?」
「これ見てよ」週刊誌のページを開いたまま渡した。

「スパークが収束?」詩織も首を傾げた。ぼんやりした目でこちらを見る。
「どういうこと? 人殺しの神様のところに行かなくてもいいってこと?」
「わからないけど、読んでみてよ」

詩織は両手で持った週刊誌を熱心に読み始めた。電車の床を影が走り抜ける。日向と陽だまり。老人の質問が頭を巡った。

「この神様……」詩織がつぶやいた。「正しいような気がする。嘘をついていないような気がする」

「次は〇〇」僕の視界にうっすら見えたのは、またもや自分のズボンの膝と電車の床だった。再び眠ってしまったようだ。

ふと気づいて周りを見ると、僕の手にも詩織の手にも週刊誌はない。座席を見たが、やはりない。詩織は眠っている。夢をみたのか。あの老人との会話は夢だったのか。

「もうすぐだよ」詩織の腕を揺すった。



「入会金は、お一人様3万円です」
ブロック長と名乗った男が、柔和な笑みを浮かべてひとつ頷いた。

これを宗教と呼んでいいのかどうかはわからないけれど、お金が絡むものはやはり怪しい。宗教とお金ほど似合わないものはない。
けれど、これでスパークが避けられるものなら、決して高い金額ではない。

「あとは、収入によりますが、月々1万から2万円ぐらい、まあ、お若い方が多いので大半の方は1万円ぐらいです。アルバイトをしている学生さんなんて数千円ですから」

「それはなんに使うお金ですか!?」詩織が身を乗り出した。男は気圧されたように身を引いた。詩織はやはり納得していないのだ。女だてらになんて一本気なのだろう。

「あっ、会の運営費です。宮殿を造るための一部にもします」男は少ししどろもどろになった。
「宮殿、ですか?」僕も身を乗り出した。

「はい、神様を迎え入れるためのものです」まるで、その神様をお迎えするように両手を天に広げた。

「愛を知る会が突然できたように勘違いしている人たちがいます。違うのです。私たちは準備をしながら待ち続けたのです」男の目はうっとりとしていた。

「山の上ではだめなのですね」
「はい。そもそもあそこは、私達の土地ではありませんので。場所はすでに確保してあります」

「入会は、今日しなければだめですか?」食い下がりそうになる詩織の腕を抑えて僕は質問した。
「いえいえ、後日で結構です。電話でお伝えしたかもしれませんが、10日間はスパークを避けられるお守りを差し上げます。その代わりと言っては何ですが、お守り欲しさに、何度も説明だけを受けに来られても困りますので、住所とお名前は登録させていただきます」

猶予は10日間。すぐさま入会を勧めないところはまだましだろうか。いや、それほど自信があるということなのかもしれない。

「一度セミナーに参加されて、会員の皆様と親睦を深めていただく方がいいでしょう。都心の会場を借りてセミナーを行った後は食事会です。その後はカラオケに行ったりもしますよ。皆さん良い方です」男は笑った。

「参加費はいかほどですか」
「おひとり2万円です。食事会の後の二次会は別途お支払いいただくことになりますが、このセミナーは好評なんですよ」

「2万円ってことは、ディナーコースですか?」
「あ、いえ、食事会と言っても、居酒屋だったりしますので。まあ、大半はセミナー代というところです」男は、またもやしどろもどろになった。
僕は詩織の太ももをポンポンと叩いた。もうやめておけ。


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「日向と、陽だまり、ですか?」
「ええ、日向と陽だまりです。同じだと思いますか?」老人は目を大きくして、ちょこんと首を突き出した。

面倒とは思いながらも、僕はその違いについて考えてみた。あえて質問されなければ素通りしてしまう事柄は意外に多い。電車の揺れに身を任せて、しばしの時間が過ぎた。

「日向って──」口を開いた僕に、老人が興味深そうな優しい目を向けてきた。

「お日様の当たっている場所ですよね。もちろん陽だまりもそうですけど。ニュアンス的になんというか、日向って──影のできにくい場所のような気がします。たとえば、校庭って日向って感じがします。見晴らしのいい場所って感じがします。ビルの屋上とか、原っぱとか」

グッジョブ! 言葉こそ発しなかったけれど、老人は親指を立てて頷き、先を促すような目をした。

「陽だまりって、影と影との隙間にできた場所のような気がします。猫が丸まるのは陽だまりが似合います。校庭や原っぱの真ん中で昼寝する猫って、なんか似つかわしくないです」僕は自分の答えがおかしくて、少し笑った。



「あなたは今、日向と陽だまり、そのどちらにいますか?」その目は一層優しくなった。できの悪い教え子が思いの外頑張ったときのように。

「広いから」僕は電車を見渡した。「日向ですかね。いや、よくわからないです」そう、ずっと日向にいるような気がするが、それは日陰を早く通り過ぎているからだ。でき悪い教え子はできの悪い答えを出した。

「日向も影も、太陽が動くから生まれます。正確には動いているのは地球ですが」

電車が停まり、離れたところに座る親子連れが座席を立った。父母に挟まれ両手を握られた男の子は、ぴょん、とホームに飛び降りた。

昨夜流れた、幼子を残して焼死した若い夫婦のニュースが蘇る。あの父母とてスパークに怯えているに違いない。男の子だけがなんの不安も恐れも持っていない。そのギャップは、埋めようもない距離だ。

「あなたは動いています」老人の声に僕は再びその柔和な顔を見た。「もちろん、あなたの足で、ではなく、電車で、ですが。それでもあなたは、地球の動きからちょっとだけ逃れているとも言えます。陽だまりは心安らぐけれど、影が訪れるのは早い」

わかるようなわからないような言葉に、僕はそれでも頷きを返した。
「日向にいたほうがいいですね」太陽のつもりだろうか、老人は右手を花でも咲かせるようにホワッと広げた。「日陰の寒さを恐れることもない。それはまあ、気持ちの問題なのですが、それが一番大事な気がします」

はあ、と言いそうになるのをこらえて「はい」と声を出した。
しかし、この老人は、いったい何を言おうとしているのだろう。

「お隣の方は奥様ですか?」眠る詩織を目尻にシワを寄せて見た。慈父のような目だ。
「あ、いえ。まだ結婚していません」スパークが、と言いかけてやめた。どう考えても楽しい話題ではない。それは世間一般でもそうだった。独身で彼氏や彼女いない男女以外の口に乗ることはない。

「恋をするにも物騒な世の中になりましたね」老人は眉根を寄せた。
「スパークは──」老人は言葉を選ぶように言葉を切り、ステッキで重ねた指をパラリパラリと動かした。「どのような基準で起こると思いますか?」

「基準ですか──それは僕も考えてみたんですが、見つけられないんです。無差別としか思えないんです」
ふむ。老人は小さく頷いた。「最初は、無差別だっただろうと思います」
「最初は、ですか?」

「ええ、最初は、です。その後はある一定の法則に則(のっと)っているように思えます。それはとても単純なことのような気がするのです」
電車の天井を見上げ、自分の言葉を吟味しているようだった。次の到着駅のアナウンスが流れた。

「さきほど親子連れが降りましたね」
「ええ、小さい男の子と若いご夫婦でした」
「あの子のようであればいいと思うのです。スパークは止みます。恐れることはない」
さて、老人は後ろを振り向いた。「いい天気で何よりです。明日もきっと晴れる」ステッキについた両手にぐっと力を入れて老人は立ち上がった。

「お隣で眠る方に代わる人はいないでしょう。お大事になさい。時として否定をしたい気持ちも湧くでしょうが認めてあげなさい。100%です。愛と恋のエチュード・ワンです。
過剰も不足もなく、ちょうどいいのです。それから──」老人は人差し指を立てた。
「すべてにおいて不安と怖れは抱かないことです」
電車は止まり、老人は降りていった。

週刊誌の表紙に目を落とした。

全文掲載 神の言葉か高次の存在とのチャネリングか! スパークが収束に向かったのはやはりこれなのか! 真相に迫る!

スパークが収束に向かった? どういうことだ?
僕はそのページを開いた。


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TVでCMをやっているので気になった。読んだことはないけど、『新参者』というシリーズの小説物らしい。

うん。映画は面白いかもしれない。でも、小説はどうだろう?
なんたって東野圭吾だからなあ……。まあ、読まない。

しかし、東野圭吾をこれほど何度もコケにする男がいるだろうか。熱烈な女性ファンを敵に回しているようなものだ。
無謀だ (゚_゚i)
でも、何冊も読んだ男の一意見として、お許し頂きたい。

主題歌は、いかにもJUJUです。いい感じ。

映画『祈りの幕が下りる時』TVCMストーリー篇



JUJU 『東京』Music Video


東京も寒い。寒すぎる。冷たくなった足が、寝てる時に攣(つ)っちゃうし。
静かにゆっくり寝かせてくれ。

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『愛を知る会』の事務局は東京の郊外だった。私鉄からJRに乗り換えて、乗客のまばらな下り電車に乗った。

車窓を、日曜の昼下がりの町並みが流れてゆく。ぼんやりとそれを眺めていると、スパークなんて騒ぎが、どこか遠い世界のことのように思える。

けれどそれは消え去ることなく、常に心のなかに巣食っている。今くるのではないか。この瞬間に火花に包まれてしまうのではないか。耳の奥で血管が脈を打つ。逃れることのできない不安はこの胸を圧迫する。息が浅く早くなる。

『愛を知る会』は、それを解消してくれるかもしれない頼みの綱だった。詩織が、悪魔、人殺しと罵った元凶の、信者たちを束ねる会に二人は向かっている。それが事実であるかどうかの確信はないけれど、疑わしいことは事実だった。
その詩織は、駅前で炎に包まれた男女に両手を合わせたときから、黙り込んだままだった。



「もしもし」声をかけられてハッとした。ぼやけた視界に浮かんだのは、足を組んだ濃紺のスラックスだった。ああ、電車の中だ。どうやら眠ってしまったようだ。日差しを浴びる肩が暖かい。

「落としましたよ」声に顔を上げると、向かいに座る老人がひょいと顎を動かした。立てたステッキに両手を乗せている。
「それ」
「え……はい?」視線をたどると足元に落ちた週刊誌だった。

「あ、すみません」とは言ったものの、僕は週刊誌など所持してはいない。誰かが落としていったものを老人が勘違いしたのだ。

わざわざ声をかけてくれた人の厚意を無にするわけにはいかない。僕は拾い上げた。
「ありがとうございました」お礼を口にすると、老人はソフト帽に手を当てて頷いた。

「そっちはお日様が当たって暖かそうですね。船を漕ぎたくなるのも当然だ」老人はむふっと笑った
「ええ、いつの間にか眠ってしまったようです」僕は苦笑した。

「日向と陽だまりの違いって何でしょうね」老人が自問するように電車の天井を見上げた。
日向と陽だまりの違い?

「どう思います?」こちらを向いて少し首を傾げた。どうやら話し好きの老人に捕まってしまったようだ。


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商品説明
あさのあつこの『バッテリー』、森絵都の『DIVE!』と並び称される、極上の青春スポーツ小説。
主人公である新二の周りには、2人の天才がいる。サッカー選手の兄・健一と、短距離走者の親友・連だ。新二は兄への複雑な想いからサッカーを諦めるが、連の美しい走りに導かれ、スプリンターの道を歩むことになる。夢は、ひとつ。どこまでも速くなること。信じ合える仲間、強力なライバル、気になる異性。神奈川県の高校陸上部を舞台に、新二の新たな挑戦が始まった――。

第28回(2007年) 吉川英治文学新人賞受賞
第4回(2007年) 本屋大賞受賞

以下「BOOK」データベースより

第一部「イチニツイテ」
春野台高校陸上部、一年、神谷新二。スポーツ・テストで感じたあの疾走感…。ただ、走りたい。天才的なスプリンター、幼なじみの連と入ったこの部活。すげえ走りを俺にもいつか。デビュー戦はもうすぐだ。「おまえらが競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」。青春陸上小説、第一部、スタート。



第二部「ヨウイ」
オフ・シーズン。強豪校・鷲谷との合宿が始まる。この合宿が終われば、二年生になる。新入生も入ってくる。そして、新しいチームで、新しいヨンケイを走る!「努力の分だけ結果が出るわけじゃない。だけど何もしなかったらまったく結果は出ない」。まずは南関東へ―。新二との連の第二シーズンが始まる。吉川英治文学新人賞、本屋大賞ダブル受賞。



第三部「ドン」
いよいよ始まる。最後の学年、最後の戦いが。100m、県2位の連と4位の俺。「問題児」でもある新人生も加わった。部長として短距離走者として、春高初の400mリレーでのインターハイ出場を目指す。「1本、1本、走るだけだ。全力で」。最高の走りで、最高のバトンをしよう―。白熱の完結編。



最初はちょっと入り込めなかった。5ページ目ぐらいで「君にさよならを言わない」に切り替えたのだ。それはなぜかというと、地の文が主人公の神谷新二の軽いしゃべり口調になっているからだ。どうにもついていけなさそうだ。そう感じたのだ。

それでもめげずに再び読み始めたのは、吉川英治文学新人賞も凄いけれど、本屋大賞受賞作だということだった。本屋大賞はそそられる。

三部作で、高校の三年間が描かれている。
森絵都『DIVE!』が面白かったというのは書いたけれど、あさのあつこの『バッテリー』は読んでいない。今のところ読む予定もないけれど、僕はスポーツ小説が好きなのだ、ということに、瀬尾まいこの『あと少し、もう少し』に引き続き、気づかされた小説だった。

登場人物が多すぎて頭がついていけなかったけど、まあ、いいや、と読み進めた。
面白かった。ものすごく面白かった。至福の時間だった。

僕は世間の評価で小説を選んでは来なかった。自分で手にとって買ってきた。あらすじを読み、最初の数行を読んで選んできた。

そのせいで、メジャーな小説というのはあまり読んではこなかったはずだ。自分の目で選ぶんだ。それは本読みとしてのプライドだったのかもしれない。
そのスタンスを変えたのは最近だけど、それも悪くないと思える一作だった。もちろんハズレのこともあるのだけれど。

佐藤多佳子は何冊か読んだはずだけれど、あまり記憶に残っていない。
でも、これは良かった。

読み終わっちゃった……読み終わっちゃったよぉ。これからどうしようって感じです。


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恋する自分がここにいて、恋する心というものが自分の中でふつふつと熱を持つ。けれど、それは不可分だ。恋と自分はわけられない。

いろんなことを経験してきた自分がいる。そして、誰に教わるでもなく、人に好意を持つということを経験してきた自分がいる。

その好意が男女になれば、いや、男の子と女の子であっても、それは恋。

この歌は、自分と恋心を分けている。恋心に許しさえ乞うている。その視点が目が覚めるぐらいに素晴らしい。

さあ、そろそろ恋心を復活させよう。ハートのエースはまだ出ていないんだから。


ポルノグラフィティ 『サウダージ』("OPEN MUSIC CABINET"LIVE IN SAITAMA SUPER ARENA 2007)


ポルノグラフィティ 『サウダージ』
作詞:ハルイチ 作曲:ak.homma

私は私と はぐれる訳にはいかないから
いつかまた逢いましょう その日までサヨナラ恋心よ

嘘をつくぐらいなら 何も話してくれなくていい
あなたは去っていくの それだけはわかっているから
見つめあった私は 可愛い女じゃなかったね
せめて最後は笑顔で飾らせて

涙が悲しみを溶かして 溢れるものだとしたら
その滴も もう一度飲みほしてしまいたい
凛とした痛み胸に 留まり続ける限り
あなたを忘れずにいられるでしょう

許してね恋心よ 甘い夢は波にさらわれたの
いつかまた逢いましょう その日までサヨナラ恋心よ

時を重ねるごとに ひとつずつあなたを知っていって
さらに時を重ねて ひとつずつわからなくなって
愛が消えていくのを 夕日に例えてみたりして
そこに確かに残るサウダージ

想いを紡いだ言葉まで 影を背負わすのならば
海の底で物言わぬ貝になりたい
誰にも邪魔をされずに 海に帰れたらいいのに
あなたをひっそりと思い出させて

諦めて恋心よ 青い期待は私を切り裂くだけ
あの人に伝えて…寂しい…大丈夫…寂しい

繰り返される よくある話
出逢いと別れ 泣くも笑うも好きも嫌いも

許してね恋心よ 甘い夢は波にさらわれたの
いつかまた逢いましょう その日までサヨナラ恋心よ
あなたのそばでは 永遠を確かに感じたから
夜空を焦がして 私は生きたわ恋心と


寒さにもだいぶ慣れてきたけど、明日は雪になりそうだ。
あ、正確にはもう今日だけど。

小説を読み終わる。名残惜しいけれど、読み終わる。
雪は何時頃から降るのだろう。
その前に、公園で読み終えたい。無謀とは思えるけれど、外で読み終えたい。


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以前よく、暇つぶしに僕はこんな質問をした。
そしてみんなホイホイ引っかかる。

「パンって何語か知ってる?」
「パン?……英語?」
「ブーッ! 違いますぅ」
「え?……」

「英語はブレッドでしょ」
「あ……そうだ。じゃあ、何語?」
「フランス語」

スペイン語でもpan(パン)と発音するらしい。語源をたどるとロマンス諸語だのゲルマン諸語だのややこしいことになるけど、もちろん覚える気はない。

フランス語ではpain(パン)
イタリア語ではpane(パネ)
英語ではbread(ブレッド)

英語圏でパンと注文したら、きっとフライパンが出てくる。

イタリアンの業界では、半分に切ったバゲットを「半パネーッ」と呼ぶのか!
はい、呼びません。

長らく離れているので分かりませんが、呼んでいないでしょう。
これで呼ぶようになったら、僕の責任ですけど。

しかし、23時に仕事を上がって、8時入りというのはどんな仕組みなのだろう。
電車の時間を見て駅の構内を走り。帰り着いては信号を見て走った。何をする時間もない。

もう寝ます。おやすみなさい。


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月曜日はお休みだった。
午前中に家を出て、公園で読書をした。
もう僕はそれしかしない。それ以外する気がない。まるで生ける屍のようだ。

面白い。今読んでいる文庫本が面白い。
随分前に話題になった本だ。
それはまた読書日記で書こう。

以前のお休みは、自転車であちこち走って、夕方ぐらいから晩酌を始めた。今は……かなり早くから飲み始める。

読書を終えて買い物をして帰ったら飲み始める。
月曜は、おそらく新記録の午後の二時頃からだった。どう考えても真っ昼間だ。

そして、一度寝る。2時間ぐらいかな。
起きてからが本番だ。
ブログを書き始めるのだ。

月曜の夜は疲れもあって、意識が朦朧としていた。
眠くてしょうがない。売れっ子作家でもあるまいに、勘弁してくれ、もう、勘弁してくれよ。もう眠いんだよ。そんな中で短編小説の続きを書いた。

ベッドに入ったのは目覚ましが鳴る9時間も前だった。
まあ、テレビをつけていたからすぐに寝たわけではないけど、そんなに長く横になっていると、腰に来る。

トゥルースリーパーがほしいぐらいだ。
世の中で、腰がちょっと、という人は、寝すぎを疑ってみる目も必要かもしれない。

このところ毎日ブログを上げるという信条を曲げている。
ブログさえ書かなければ睡眠をいくらか長く取れるじゃないか! という単純なことに気がついたからだ。

そんなの当たり前じゃないか。なんて鈍い男だ。

話とは全く関係ないけど、やっぱりこれは名曲だ。
最近再燃してるのかな?
この頃の荻野目ちゃんは頭頂部をペシペシ叩いてやりたくなるぐらい可愛い。

文章がどうにも、支離滅裂だ。

ダンシングヒーロー/荻野目洋子



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震える手でコートを脱いだ。もがく二人に思い切り叩きつけた。
詩織もチェスターコートを脱いで走り寄ってくる。

バッサ、バッサ、バッサ! 上から右から左から叩く。空気抵抗で重いコートを振り回して叩く、叩く、叩く。火花は衰える様子を見せない。二人の間で火花が弾けているのではない。体全体からほとばしっている。

無理だとはわかっている。スパークに見舞われた二人が、近くの池に飛び込んだことが報道されていた。目撃者の証言では、水の中でも火花は飛び続けた。



その色は白に淡い黄色を混ぜ込んだ色。もっとも温度が高い白が優勢を占めている。ゆうに千度を越えているだろう。
火花の中の二人は顔を覆い、声にならない叫びを上げる。やがて体をそらし倒れ込み、のたうち回る。

それを追いかけ、唸り声を上げてなおも叩く。
詩織も言葉にならない叫びを上げながら叩き続ける。

ボヮウンッ!
ガソリンでも注いだように、一気に燃え上がる男女。弾けるように後ろに飛んで尻餅をつき、呆然と見つめる。
チリチリ、ジリジリ、パチパチパチと人体の焼ける音と、タンパク質の焦げる匂い。

赤とオレンジのゆらめきの中で黒いシルエットの二人が胎児のように縮こまっていく。
顔が熱い。

酸素不足で早く意識を失ってくれていればいいのだが。苦しまずに死んでくれていたらいいのだが。
立ち上がり近づき、ボクサーのように体を曲げていく二人を、ギュッと目を眇(すが)めて見た。

同伴者がいない二人は、暫くの間は身元不明として扱われるだろう。
男女の区別もつかないぐらいに燃やされていく二人は、もうなにも考えない。なにも生み出せない。アイデンティティさえ失う。

「──」聞き取れないほどの声で詩織がつぶやいた。
炎に照らされるその顔は、かつて見たことのない異様なものだった。

「──」再びのつぶやきも聞こえない。驚きでも呆然でもなく、狂気をはらんだようなその顔。
「詩織!」その肩を揺すった。

「悪魔」眉間にしわを寄せる詩織のつぶやきがようやく聞こえた。
「悪魔、悪魔、悪魔、悪魔、人殺し、人殺し、人殺し……」

「もう見るな」詩織の肩にチェスターコートを着せた。
「悪魔、悪魔……」
遠くから複数のサイレンの音が聞こえた。

「あたしたち、これから悪魔に魂を売りに行くの」少し笑ったように、軽かやに謳う。
「もう見るな、行こう」肩を抱いて駅に向かおうをしたが、その体は頑として動かなかった。
「あたしたちね」やはり薄っすらと笑っている。思い出し笑いでもしているように。
「あたしたち裏切り者なの」

「いくぞ詩織!」
「やだ! だめ!」
「もう、行かなくちゃ」
「見送ってあげなくちゃ! 最後まで見送ってあげなくちゃ、だって、かわいそうでしょ! 誰もいなくて寂しいでしょ! あたしたち、これから……この人たちを殺した悪魔に魂を売りに行くのよ……お詫びしなくちゃ。人として謝らなくちゃ」
その目には、炎を映し出す涙が堰を切ったように溢れた。

「そうだな」詩織の背中を撫でてから両手を合わせた。
サイレンの音が近くで止まった。

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セミナーの開催日は来週の土曜ということで、個別の説明会を受けることになった。

一刻も早く来てください。すぐにご入会いただけなくても、暫くの間スパークを避けられるお守りを差し上げます。
電話応対をしてくれた女性は、心底心配してくれているようだった。

指定された時間は午後の2時。1月の空はきれいに晴れて、日差しの暖かい穏やかな日曜日だった。

二人は今日、スパークを避けるための手順をひとつ踏もうとしている。嘘か誠か、その効果のほどはわからないけれど、この身を守るために踏み出そうとしている。



あの日以来、比較的若い夫婦や恋人のいる一群と、独身で恋人もいない一群をメインにして世界はいくつかに割れた。

それは会社にいると特に強く感じる。視線を感じるのだ。この人たちは何を考え、どんな恐怖に怯えているのか、独身者たちは気になるのだろう。盗み見るような視線が飛び交うのだ。

彼女いなくてよかったよなあ。通りがかりに、そんな会話を耳にしたこともある。しかし彼らとて、スパークが収束しない限りその領域に行かざるを得ないことは十分知っている。

こんな状況では恋も成就しないだろう。逆に、別れた恋人たちもいるのではないだろうか。この人と一緒に死ぬのはまっぴらとばかり、別離を選んだ人も。

これは一面、愛の真実を迫った出来事ともいえるのかもしれない。薄っぺらい愛など消えてしまえと言わんばかりに。

被害者の統計が取られているわけではないからもちろんだが、発火点がどこにあるのかはわかっていない。愛が最高潮に高まったときか、結婚を決めたときか、迂闊に推測を口にできないほどに曖昧模糊としている。

報道によれば、付き合い初めて間もない恋人同士が犠牲になった例もあるから、無差別と呼んでもいいのかもしれない。そしてそれが、一番怖い。

「人類を造ったって本当なのかしら」独り言のようにつぶやく詩織の声とヒールの音が、静かな街に溶け込んでゆく。
「うーん、まあ……」見上げた日差しが眩しい。
「それはありえないことじゃないだろうな」
「じゃあさ、地上の動植物すべてを造ったことも?」
「それはないだろうな」

父母の間をちょこちょこと歩く幼い女の子。何も恐れていないその姿。子供を心はいつの世も、新しいものへの興味と父母への信頼で満ちている。

「なんで? だって人類を造ったかもしれないんでしょ」こちらを見上げるショートボブが揺れる。
「DNAを操作したって言ってたじゃないか。それならありえるよ。でも、無から有を作り出すことはできっこない。いくら文明が進んだって、なにもないところから有機体を作り出すなんて不可能だ。それが出来るのは本物の神だけだよ。だからといって、神様が粘土をこねこねしたわけじゃないだろうけどね」

「人類を創造したとしてさ、なんのために造ったんだろうね」あ、ありがとう。詩織がポケットティッシュを受け取った。ちょうど鼻をかみたかったんだ。ボクシングクラブだって。なんだろいきなり。
「ダイエットとかも書いてない?」
「あるある」

「で、話どこまでいったっけ?」
「んーとね、なんで人類を造ったかってとこ」
「ああ、必要だったからじゃないかな。一番わかりやすいのは労働力としてかな」
「労働力?」いったい何を言い出すの? 曲がった眉根がそう問いかける。
「うん。奴隷。それが行われたかどうかは記録にないからわからないけどね。行われたかもしれないし、必要がなくなったのかもしれない」

「だったらさ、ネアンデルタール人でもよかったんじゃないの?」
「もう少し理解力の高い奴隷を求めたのかもしれないしね」

その時だった。背後で凄まじい音がした。
煮えたぎる油の中に水の飛沫でも浴びせたような破裂音。

ビクリと震えて振り向いた。
盛大な火花が上がっている。
スパークだ。
「やだあ!」詩織が息で叫んだ。


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