以下実話。
宵闇迫る街、男がひとりテーブル席に座っている。
その男は、来店の際にふたりだと告げた。だから僕は渋谷の街が眼下に見える窓際の席に案内した。
やがて女がひとりやってきた。
「お待ち合わせですか?」女は頷いた。
男と女、お互いを認め手を振り合う。
女の弾けるような笑顔は僕の前を通り過ぎ、男のテーブルへと向かった。
グランドメニューを脇に抱え女の後に続こうとした僕は一人の男に気がついた。
コートのポケットに両手を入れて、背中を丸め俯き加減に歩いてくる男だ。
グランドピアノにジャズボーカル。そんな店に来る客の気配では絶対ない。
その瞬間、僕はやばい! と眉をしかめた。明らかに、女が後をつけられていたに違いない。
その予想は当たっていた。
詰め寄る男に椅子から半分腰を上げた男、おろおろとする女。
後をつけてきた男がストーカーとは思えなかった。
女が浮気をしていた可能性が高いのだろう。
男と女、黒と白。
入り乱れてグレー。
スガ シカオ / あまい果実
ストーカーまがいの言葉がちりばめられているこの曲。
自叙伝エッセイ集『愛と幻想のレスポール』によれば、この歌詞は小説家・大江健三郎の影響のもとで書かれたらしい。
読書家といわれるスガシカオの詞には驚くほどのセンスの良さが現れているのは、そのせいだろう。
受話器のむこうで 音がしているけど
その部屋に誰か 他にいるんじゃないのかい
テレビの音って 君はいっているけど
何かが動いた音に聞こえたんだ
どうしていつもそんなに大事なことを ぼくに隠そうとする
あまい果実みたいに ぼくの中で
熟しているんだ
したたり落ちそうなくらいに
君への想いはあふれているのに
なぜ君はそんなことば僕に言うんだろう
”束縛”なんて幼稚なこと
君のこと僕は全部知ってるんだ
引き出しに隠した過去もみんな知ってる
こころを開いてくれないと もう全部ダメになってしまう
あまい果実みたいに ぼくの中で
腐ってしまうよ
君へのこんなにも深い
この想いはかわってしまうんだ
君のことを全て今すぐにでも ぼくは手に入れないと
あまい果実みたいに 時がたつと
黒ずんでいくんだ
もうそばにいられないくらいに
そのニオイは鼻をつくんだ
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