クローバー(ノンフィクション小説) -88ページ目

死ぬはずだった夜‐60‐

2階にいたもう1人の友達が
門限21時の施錠を証言してくれた。

そしてそれに関しては
寮長が最終チェックをしているので確実だ。

そもそも寮にいる時は自分の部屋に篭る事が多いから誰が残っているかは把握できていない……


刑事に何を聞かれても
友達の事は話さなかった。

確かに襲われた後、
寮の鍵は開いていた……

だけどだからと言って
男がそこから侵入したとは断言できない。


侵入経路は
男にしか分からない



「鍵は締まっていました」



これが
わたしが出した答え。



これでいいんだ。

死ぬはずだった夜‐59‐


あらゆる所で指紋を採取したが決定的な証拠になるようなものは見つからなかった。

それもそうだ。

部屋の中は襲われた後に
血を拭き取っていたから。

みんなが心配するといけない……
それにまさかこんな大袈裟な事になるとは思ってもみなかった。


わたしは普通ではない。

普通なら泣き叫び喚き恐怖におののき震え
喋る事さえままならないだろう。

生に執着しないからこそ
冷静でいられた。

そして次の捜査の焦点は
男の侵入経路……



嘘の代償は
必ず自分に返ってくる。

死ぬはずだった夜‐58‐


そして休む間もなく
今度は寮での現場検証。

2階にいる学生は1階へと移動させられ
廊下では鑑識班がへばり付き捜査をしていた。


刑事と共に事件があった経緯を再現しながら
1枚1枚それを写真に撮られる。

寮の入口でドアを指差す自分……
部屋の前で自分の部屋を指差す自分……
ベッドの上で横たわる自分……
殴られた顔のアップ写真……

前から横から後ろから首に残る手形……


何枚いや、
何十枚写真を撮られただろう。

撮られる度に
心がえぐられた。


被害者なのに
加害者になった気分。


昨日大声で叫び、笑い、楽しかった時間が
余計に身に染みて……

ただただ切なかった。


わたしは幸せには
なれない運命なんだ。