死ぬはずだった夜‐57‐
生きてる意味が
分からないだけなんだ……
他の誰かじゃなくて
自分で良かったって思うのは
自分が存在する価値なんてないって
思ってるから。
私が思う自分の命の価値は……
一片の紙切れより軽かった。
そして
誰よりも弱い人間。
この試練は
生きる意味を諭すチャンスなのか
それとも希望の光などないという警告なのか……
自分が変われるチャンスを
履き違えたわたしは……
長い長い迂回路を進んでいく。
死ぬはずだった夜‐56‐
一通り聴取が終わると
高本さんは切なそうな顔で
「あなたは凄く強い子ね」
そう言った。
「私は色んな被害者を見てきたけど……あなたみたいに強い子は初めて見たわ……」
わたしは……
わたしは強くなどない。
死ぬはずだった夜‐55‐
「ほんとに? こういう犯罪は加害者に脅されて口止めされてる事が多いの」
実際強姦などされていなかった。
高校の時に変質者に襲われた時も
暴行だけで済んでいる……
「いや、ほんとにされてないんです」
「……分かった。 じゃあ犯人に見覚えは?」
「ないです。顔は覆面していたので分かりません」
男は痩せ型で小柄の筋肉質
歳は自分より年上な気がした……
上下ジャージ姿で
ジャージのロゴまでちゃんと覚えていた。
「そっか。あなた抵抗はしなかったの?」
「してません」
「声もださなかったの?」
「はい」
「何故?」
「抵抗しても無駄だから」
抵抗した時などによくできる
かすり傷などは一切なかった。
ずれのない首の手形からも
抵抗していない事が分かったようだ。