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#sushitownの記憶

時期外れの平日という事もあり、ホテルのパーキングは閑散としていた。

チェックインをしてると、長いフライトで疲れていた僕にお構い無く顔色の悪いフロントの男は、お勧めのレストランからワールドシリーズに至るまでペラペラとしゃべり続けていた。


最後に無料の朝食が7時から10時までダイニングエリアに用意してあると付け加えると僕はありがとうとだけ返し部屋に向かった。


水圧の弱いシャワーを浴び、仕事のメールを処理すると、疲れと空腹がいっぺんにドスンと舞い降りてきた。

さっきフロントの男が言っていた事をボンヤリと思いだし1ブロック程歩いた所にある男お勧めのメキシカンレストランに向かった。


しかし21:00を少し回った位だったがもうクローズしているようだった。

仕方なく辺りを見回すとSushi Townと書いたネオンが目に入ったので入ってみた。

周辺の飲食店がやっていないからなのか、店内は7割程埋まっていた。


アメリカの多くの寿司屋や、ジャパニーズレストランがそうであるように、ここも日本以外のアジア系アメリカンによって経営されているようだ。


マナーとしてウェイトレスが今日のオススメを説明し終わるまで待つと、適当にコンビネーションプレートをオーダーした。

特に期待もしていなかったが、10分程でその期待通りの物が運ばれてきた。

解凍の仕方や技術がしっかりしていないのだろう。サーモン以外の握りは若干生臭さの残る仕上がりだ。

サー、お味はいかがですか?と聞かれたのでユニークな味だねと答えた僕の皮肉は彼等には届いていないであろう。


会計を済まし表に出ると少しひんやりした風が海から吹いた。僕はタバコに火を点けるとホテルに向かって歩き始めた。

アメリカに来ている事を実感した。

‪#‎sushitownの記憶‬

#スカンディックホテルの記憶

コペンハーゲン経由でスウェーデンに到着したのは午後4時過ぎだったが、辺りはすでに夜の帳が降りていた。

空は夜なのに、街や人々は『午後4時』の温度で躍動している様に少し奇妙な感覚を覚えた。

到着して間もなく北欧の夜の長さの洗礼を受ける格好となる。


初日のミーティングを終えるとウェルカムディナーが宿泊しているホテルのレストランで開催された。

40名程の関係者が席に着き、その日お披露目されたコレクションについてそれぞれの意見が交わされる。

フランスの大男はイタリアの男にフランス料理とファッションの類似点を熱弁している。
繊細さと独創性が似ているという持論をワイン片手に展開していた。

ロシアの男は独特のアクセントで、取引可能な店舗が黒海からカムチャツカまで4000店舗はあると壮大なスケールでお国柄の違いを見せつける。

私はロシアが日本から一番近い国なのを知っているかい?と彼に尋ねると目を丸くしていた。

やはり北方領土の問題は一部の人にしか関心がないのか、問題が赤の広場に届くまでその広大な国土で希釈されてしまうのだろう。


そんな時、水を注いでたウェイトレスが手を滑らせ、グラスの水が僕のデニムにかかった。

周りが大声で囃し立てる中、洗濯してなかったからちょうどよかったよと声をかけると、彼女は小声でウェイクアップコールよと返すとウィンクし、テーブルを拭いて去っていった。


どうやら連日の疲れから眠たそうにしていたのを見られていたようだ。

なにより問題の論点を素早くひっくり返す彼女の機転の早さに脱帽する。
ここで多くの酔っぱらい達を相手にしてきたのだろうなと思った。


するとバーのカウンターの方でドッと歓声が上がる。
どうやらカナディアン達がいつも通りショットをやり始めたようだ。

喧騒に紛れラウンジのDJがCharmelsのAs long as l've got youに針を落としたのが分かった。

時計を見るとまだ23:00を回ったばかりだった。


私はデニムが乾くまで付き合う事にした。







#tignesの記憶


フライトやトランジット等、約30時間かけて第一の目的地であるフランスのティニュにたどり着いた。


ヨーロッパが初の著者にとって、美しい街並みや雄大な景観等、目に入る全ての物が新鮮に映った。

人々が生活する家屋も非常に趣のある古い物が多く見受けられた。さらに、そのほとんどが優に築100年を越えているそうだ。

稚拙な表現かもしれないが正に絵葉書のような景色がいたるところで見ることができた。


北米とは異なる文化を歩み、異なる価値観が形成されてきたのも当然ながら納得である。

今回の滞在先であるロッヂに着くと、前入りしていた各エリアの担当が出迎えてくれた。久々の顔、初めて見る顔様々だ。

久しぶりだねと話していると、長旅の疲れを癒す間もなくビールやワインがどこからともなく回ってきた。

やれやれと思ったがこの流れはもう慣れっ子だし、流れに身を任せるのが一番の得策である事も知っている。

ウェルカムドリンクなのか食前酒だったのかは分からないまま、世界各地から集まった個性豊かな二十余名の男達はそのまま夕食へとなだれ込んだ。


お腹も満たされ、無事たどり着いた安心感と長旅の疲れに少しのアルコールが効いてきたのか頭がボンヤリとしてきた。

標高2100mという高地のせいかもしれない。

お酒も入り声のヴォリュームが大きくなった皆から外れ、外の空気を吸いにテラスに出た。


シーズン前とは言え、空気はキリリと引き締まっていてあっと言う間に体温を奪って行く。

時より室内からドッと巻き起こる笑い声を聞きながらタバコに火を点けると目の前には雄大なアルプスの山々が広がっているのが夜でも分かった。


すると横長のテラスにもう一人先客がいた事に気付く。

寒いね、どこのエリアの担当?と話かける。

するとその青年は、今回のミーティングの為に、近くのヴィレッジからこのロッヂの手伝いに来ているんだと言った。


彼は暗闇を指差すと、その先に世界最大の氷河スキー場がある事を教えてくれた。

10年前は夏でもそこで滑る事ができたが、今はもうできないんだと残念そうに付け加える。


ニュースの中でしか見る事のない温暖化問題を突然目の前に叩き付けられた感じがした。

公害や環境破壊とは無縁と思われるこんな風光明媚な土地に、都市部で快適に暮らす我々のツケを払わせているような気がした。


吸い込んだタバコの煙はなんだかマズく、そのまま消すと部屋に戻り熱いシャワーを浴びた。



‪#‎tignesの記憶‬

モンスター企業

通常ブランドというのはシーズン毎にテーマやコンセプトを決めた上で、ブランドのフィルターを通した配色、デザインやテキスタイルをプロダクトに落としこみそのブランドを表現したコレクションとして発表するのが一般的である。


ブランドのアイデンティティを確立させる為に、多くは売れないと分かった上でリリースされるプロダクトも少なくない。

それがブランドのカラーとなり、他ブランドとの差別化を図る重要なファクターとなるのだ。


そして自然と他所の土俵は汚さない暗黙のルールがあったような気がする。
ルールと言うか得意じゃないから手を出さなかっただけなのかもしれない。

しかし二極化が進んだ昨今、どのカテゴリーにもモンスターブランドが形成されその概念が覆されつつある。

モンスターブランドにはコレクションという概念は無く、全て作ってしまうからだ。

ある関係者と話していたが『Oh, they just make everything』(ヤツラは全部作っちまう)と嘆く程だ。


潤沢な資金を基に、売れそうな色、デザイン、パターン、ありとあらゆる物を他社より少し安く作る。

結果、節操のない電話帳より分厚いカタログができ、セールス担当も、どれを薦めていいかわからない状態だ。

かっこいい物を地道に作っていたブランドはトレンドの流れだけ作ると、あとは用無しとばかりに、セールスは後出しジャンケンのビックカンパニーに持って行かれるのが現状だ。

そして次々とブランドを買収し、魂の抜かれた看板だけが虚しくモンスターブランドの一部とは知られる事なく残るのだ。

Mass vs Coreは永遠の課題ではあるが、Coreを装ったMassが一番やっかいである。

外交

メディアの戦略なのか壮大なスケールの陰謀なのかは著者には知る由もないが、日本人の誇りが地に落ちようとしているのを最近感じる。

低迷する経済や近隣諸国との摩擦等、様々な問題を抱えている事は事実だ。
ここで述べるの、はあくまでも著者個人の見解として受け取ってほしい。


著者は仕事柄、様々な国の人に接する機会がある。

北米、中南米、欧州、オセアニアほぼ世界中だ。

行く先々で各国の人達と話していると、驚く事に皆日本に対して好印象を持っている。
「日本人か?」とわざわざ話しかけてきて「俺は~だから好きなんだ」と、日本がいかに素晴らしい国か具体例を挙げて語ってくれる人が多いが、これがいかに『異常な事』か理解いただけるであろうか?

逆の立場になって考えてみて欲しい。

例えば喫煙所に居合わせた外国人に対して「お前は◯◯人か?」と話しかけて「俺は◯◯が大好きなんだ」と話しかける事まず無いであろう。

百歩譲ってそれがリップサービスだとしても好きでも嫌いでもなければ、元から話かけなければればいいのだから、それは考えにくい。


あるミーティングに参加した際、「我々は骨の髄からロシアが憎い」と言って憚らない、皆が扱いづらいと言っていたポーランドの巨漢も「日本は大好きだ」と笑顔で大きな手を差し出してくる。

プライドの高いイギリス人も、若干上から目線のブリティッシュアクセントで「世界中で日本を良く思ってないのは中国と韓国だけさ」とタバコをふかしながら言い切る。
その横で陽気なオーストリア人が「お前らは優等生だからな!」と付け加えた。


その日本を嫌いなはずの中国や韓国にも友人がいるが、彼らは冷静でスマートだし本当に普通の若者達である。
一部の騒動をメディアがセンセーショナルに煽ってるだけだよって申し訳なさそうに話してくれたのを覚えている。

子供の頃から日本に対するよくない印象を持たせる教育を受けてきた彼等でさえこうなのだ。
一定層はコントロールできているかも知れないが、実際のところ、大部分の人達は茶番と言う事を見透かしているのが現実のようだ。



話はずれたが、そんな各国の人々が口を揃えて言うのが「日本に行きたい」という事だ。
日本は様々な面で振り幅が狭い。 スタンダードが高いと言った方が分かりやすいだろうか?
例えば食べ物だ。 

海外には超一流のレストランもあれば、口にできないようなメニューを出すレストランまである。 
信じられないかもしれないが、本当に食べれないような物を出される事がある。
しかし日本ではいわゆる『まずい』とされている物のスタンダードも高いのだ。一流から最低のラインまでの幅が少ないのだ。

外国人の友人にいわゆるジャンクと呼ばれる某チェーンの丼物屋に連れて行ったら$5でこんなうまい物が食えるのか!と大喜びしていた。事実彼は翌日もそこに行きたいと言ってきた程だ。
世界中の最新の音楽、ファッションがほぼタイムラグ無く日本に届き、独自の進化を遂げたそれ等は、多くの注目を集めている。

危険と言われているエリアでもまず命を落とす事はない。

教育の水準も高く、識字率もほぼ100%だ。

街もゴミで溢れかえる事もなく、汚いとされている公衆トイレも諸外国に比べたら数段清潔だ。

水だって飲めるし、停電もおきない。

クラクションを鳴らす事もなく、整然とピカピカの車が街を行き交う。

探せば仕事もあり、給料もキチンと支払われる。


外から見れば憧れの対象なのだ。


私達日本で生活する者にとっていたって当然の事が実は非常に、しかも高いレベルで恵まれている事だとようやく気が付く事ができた。

これからも私は胸を張って日本人であると言っていける様に、異なる国の人々に接していければと考えている。

見たり聞いたりするより直接会って伝え、感じる事が最も効果的な国際交流となり、個々の外交手腕が問われる時代となったのだ。

我々一人一人がバッジのないdiplomat(外交官)なのである。




著:ルイテック