#午前4時32分の記憶
タバコをトントンと二回叩くと、けん兄ぃは「デムテックとケンタ。この二人はどこに出しても恥ずかしくないね」と言うとビールを一口飲み、タバコに火を着けた。
これが後の世に語られる"午前4時32分のオフィシャルアナウンスメント"と呼ばれる事になるとは当時誰が想像できたであろうか。
著:ルイテック
これが後の世に語られる"午前4時32分のオフィシャルアナウンスメント"と呼ばれる事になるとは当時誰が想像できたであろうか。
著:ルイテック
#午前5時25分の記憶
コレクションを構築する段階から日本の意見を聞きたいという事で、著者は急遽バンクーバーへ飛んだ。
バンクーバーのダウンタウンから少し離れたエリアに昨年10月に新設されたデザインオフィスにプロダクトデザイナーやセールスを左右するマーケットの担当者達が集った。
2017モデルの最終決定が行われたのだが、どの位の『最終』かと言うと、ミーティングの翌日には各部門のデザイナー達が、今回のフィードバックを中国や台湾にある工場に直接持ち込み、現地のプロダクション担当者とスリ合わせをすると言う、時間的にもなかなかドラマチックかつ重要なステップだったのだ。
世界規模で展開するブランドや、ファッション業界、販売に携わった経験がある方ならお分かりになると思うが『一番COOLな物が一番売れるワケではない』と言うジレンマがここで発生する。
自分の視点だけでカッコイイ物ばかりを揃える事は以外と簡単であるが、コレクションのバランスや価格の分布を考慮し、さらにバイヤーの視点、顧客の視点、生産側の視点を加味し、それ等をブランドのカラーを損なわない範囲でディレクションする事は業界のヴェテラン達にとっても至難の技だ。
簡単に説明すると赤が人気だとしても販売戦略上、各モデルに赤入れる事はできない。じゃどのモデルに絞るか?となるワケだ。
高価格帯の物に採用すれば、高いモデルが今までよりも売れるかも知れないが、予算が合わなければ顧客が他ブランドに移ってしまうかもしれない。 中価格帯の人気モデルに採用すれば数量は売れるかもしれないが、他モデルが売れなくなるかもしれない。 低価格帯に採用すれば中、上級者達にそっぽを向かれてしまうかもしれない。
ある時は俯瞰的にバランスを整え、次の瞬間には特定モデルのステッチの色にまで一気にクローズアップしてみたりと、時差ボケした頭には英語、日本語、ドイツ語が飛び交う中少々展開が追いつかない場面もあった。
正に帯に短し襷に長しの中、他ブランドの動向も踏まえ、最適なバランスを数日の中で決定するのだ。
それを除けば、春のバンクーバーは温暖で、モダンな街並みと遠くに見える雄大な自然が美しいコントラストを見せてくれた。
最近はガスタウン周辺の家賃が上がってきているようで、エッジーなショップ達はチャイナタウンに進出してきているようだ。 数年後にはホットスポットとなるだろう。
ヘロインアーレーと呼ばれているヘイスティングス地区は相変わらずで、ホームレスが片方だけのスリッパを売ったり、薬物中毒者が昼間からゾンビのように徘徊していた。
道に落ちた針が付いたままの注射器がスラム度をグッと増してくれる。
ほんの2ブロック程のエリアだが、ロスアンゼルスの悪名高き犯罪多発地区、スキッドロウより濃縮された世紀末感が漂っていると個人的には感じる。
このエリアに加え、ウォール・ストリート的な金融街も全て徒歩10~15分圏内に隣接しているので、光と影を一気に見る事ができる。
インド系移民の紳士が運転するTESLA MOTORS社製の最新電気自動車が信号待ちで止まっている横ではホームレスが片方だけのスリッパを売り、白人のスケート少年とコーヒーを片手に持ったモデルのような女性が横断歩道ですれ違う。
そんな光景をボンヤリと眺めていると、横の理髪店のアジア人店主がドアを勢いよく開け、ペッ!とタンを吐いてまたドアを閉めた。
チャイナタウンがホットスポットになるにはまだしばらくかかりそうだ。
何気なく世界時計に目をやると、TOKYOは午前5:25を指していた。
#午前5時25分の記憶
#コペンハーゲンの記憶
それはコペンハーゲンでのトランジットでの出来事であった。
ジュネーブからのフライトが早く到着し、次のスウェーデンへのフライトが遅れた為、少し時間に余裕ができた。
ヨーロッパのハブ空港の一つであるコペンハーゲンは巨大なショッピングモールのようで、ずっとバタバタ続きだったので少しゆっくりできるのは内心嬉しかった。
広大な空港内を何となく次の搭乗ゲートの方に向かいつつ、人々を観察しながら歩いててみた。
時間を持て余しカフェで窓の外をじっと眺める老人や、次のゲートに向け小走りで急ぐビジネスマン、ヘッドフォンをしてパソコンをいじるアフリカ系の若者、制服姿でピッと歩くフライトアテンダント達、肩を組みキスをしながら歩くカップル等様々だ。
僕もその景色の一部となっていたに違いないが、さすがハブ空港だけありクリスマスシーズンのショッピングモール並に混み合っていた。
数十メートル置きに無数にあるコーヒーショップの中から比較的空いてる店に立ち寄り、ラージサイズのホットチョコレートを頼んだ。
若い女性の店員が、支払いはユーロでもできるがお釣りはデンマーク・クローネになると忘れたように付け加える。
財布を見ると、ここまでのトリップでユーロとスイスフランでごちゃごちゃになっていた。
財布から目を上げると、その様子を見ていた彼女と目が会った。
ニコリとしながら『Oh,oh,カードの方が良さそうね』と言った。
僕はおとなしくカードで支払いを済ませると、しばらく空港の喧騒に身を委ねた。
するとNicki Minaj feat. Drake, Lil Wayne, Chris Brownの楽曲"Only"のアノ特徴的なビートが耳に飛び込んできた。
はっきり言って教育によろしくない内容のリリックスが、国際空港で流れている事に驚きつつも、なんだか懐の深さを感じた。
僕はカウンターでカップにたっぷりと入ったホットチョコレートを受け取りありがとうと言うと彼女は何やら口走った。
恐らく現地の言葉で似たような事を言ったのだろう。
聞き直そうと一瞬立ち止まり振り返ったが、彼女はもう次のエスプレッソに取り掛かっていた。
ごちゃごちゃの財布が重く感じたのでCRANKのバックパックに放り込みホットチョコレートを一口
飲むと、僕はまたゲートに向けて歩き始めた。
#コペンハーゲンの記憶
著:ルイテック
ストーリー
物を買うというメカニズが専門家の手によって解明されようとしている。
本項ではファッション/アパレル業界に特化しているが、この『買う』という行為には複数のエレメントが重要とされている。
その中で著者が最も注目したのは、買い手はその特定のプロダクトの『ストーリー』に対価を払っている部分が多いという点だ。
そのストーリーが、提示された価格以上だと判断された時に初めて消費者は財布を開くのである。
Tシャツのボディなら数百円で手に入る事は自明の事実である。
その一方、デザインがプリントされた1枚6000円~のTシャツが売れている事も事実だ。
同じ色、形の物に作り手の思い描いたデザインがプリントされただけで、実に10倍近い金額を払って買ってくれるのだ。
では、その動機とは何か?
かっこいいデザインだけど、知らないブランドだから買うのを止めたという経験が一度はあると思う。
それはその謎のブランドがそのデザインのTシャツをリリースするに至った経緯、すなわち『ストーリー』を知らないからではなかろうか?
逆に納得するストーリーを打ち出せた物なら人々は買ってくれる。
そのストーリーと価格のバランスがうまく取れればLVの2万のTシャツでも売れるし、ユニクロの数百円のTシャツでもビジネスが成り立つのだ。
大量生産大量消費のファストファッションに陰りが見え始めた昨今、完成されたゴールだけ作るのではなく、ゴールまでの過程である『ストーリー』を再び見直す時が来ているのかも知れない。
著:ルイテック
氷山
自分のパフォーマンスや作った物で人を感動させたり勇気を与える事のできるアスリート、ミュージシャン、デザイナー、モデル、アーティスト達は本当に素晴らしいと思うし、例えどんなろくでもないヤツでも個々のフィールドでの一瞬の輝きで全てをチャラにできる程の魅力を持っている。
その代わり我々一般人には想像も付かないようなプレッシャーと向き合い、日々苦悩している事もこれまで重ねてきた取材から知っている。
しかし、多くの人々はそのスポットライトに照らされた華やかな一面しか見えないので、勘違いされ易いのも事実だ。
表に決して出る事のない厳しいトレーニングや挫折、かいてきた恥や涙、乗り越えてきた壁が経験となり、目に見えない貫禄や、オーラとなって彼らを前に進ませるのだ。
自分のシュートで5万の観衆から称賛されるのはどんな気分だろうか?
自分の音楽で人々を熱狂させるのはどんな気分だろうか?
自分の描いた絵に感動されたら? 自分の作った物を多くの人が喜んで欲しがってくれたら?
一度はその光景を見てみたいものだが、著者にはそんな器量は到底ないので、彼らが道を誤りそうになった時に、 それを正しい方向にそっと直せるような人間でありたいと思う。
著:ルイテック
その代わり我々一般人には想像も付かないようなプレッシャーと向き合い、日々苦悩している事もこれまで重ねてきた取材から知っている。
しかし、多くの人々はそのスポットライトに照らされた華やかな一面しか見えないので、勘違いされ易いのも事実だ。
表に決して出る事のない厳しいトレーニングや挫折、かいてきた恥や涙、乗り越えてきた壁が経験となり、目に見えない貫禄や、オーラとなって彼らを前に進ませるのだ。
自分のシュートで5万の観衆から称賛されるのはどんな気分だろうか?
自分の音楽で人々を熱狂させるのはどんな気分だろうか?
自分の描いた絵に感動されたら? 自分の作った物を多くの人が喜んで欲しがってくれたら?
一度はその光景を見てみたいものだが、著者にはそんな器量は到底ないので、彼らが道を誤りそうになった時に、 それを正しい方向にそっと直せるような人間でありたいと思う。
著:ルイテック