#スカンディックホテルの記憶 | ruitek times

#スカンディックホテルの記憶

コペンハーゲン経由でスウェーデンに到着したのは午後4時過ぎだったが、辺りはすでに夜の帳が降りていた。

空は夜なのに、街や人々は『午後4時』の温度で躍動している様に少し奇妙な感覚を覚えた。

到着して間もなく北欧の夜の長さの洗礼を受ける格好となる。


初日のミーティングを終えるとウェルカムディナーが宿泊しているホテルのレストランで開催された。

40名程の関係者が席に着き、その日お披露目されたコレクションについてそれぞれの意見が交わされる。

フランスの大男はイタリアの男にフランス料理とファッションの類似点を熱弁している。
繊細さと独創性が似ているという持論をワイン片手に展開していた。

ロシアの男は独特のアクセントで、取引可能な店舗が黒海からカムチャツカまで4000店舗はあると壮大なスケールでお国柄の違いを見せつける。

私はロシアが日本から一番近い国なのを知っているかい?と彼に尋ねると目を丸くしていた。

やはり北方領土の問題は一部の人にしか関心がないのか、問題が赤の広場に届くまでその広大な国土で希釈されてしまうのだろう。


そんな時、水を注いでたウェイトレスが手を滑らせ、グラスの水が僕のデニムにかかった。

周りが大声で囃し立てる中、洗濯してなかったからちょうどよかったよと声をかけると、彼女は小声でウェイクアップコールよと返すとウィンクし、テーブルを拭いて去っていった。


どうやら連日の疲れから眠たそうにしていたのを見られていたようだ。

なにより問題の論点を素早くひっくり返す彼女の機転の早さに脱帽する。
ここで多くの酔っぱらい達を相手にしてきたのだろうなと思った。


するとバーのカウンターの方でドッと歓声が上がる。
どうやらカナディアン達がいつも通りショットをやり始めたようだ。

喧騒に紛れラウンジのDJがCharmelsのAs long as l've got youに針を落としたのが分かった。

時計を見るとまだ23:00を回ったばかりだった。


私はデニムが乾くまで付き合う事にした。