本中毒、映画中毒、仕事中毒、そして...恋愛中毒 -72ページ目

■書評 エマニュアル・トッド『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』文春新書2015/5/20

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)/エマニュエル・トッド
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『帝国以後』、『文明の接近』等で有名な歴史学者の著者のインタビューを8本まとめた物。

ギリシャの債務問題で揺れる時期なので、かなりタイムリーな内容。
ヨーロッパの中でドイツ、ロシア、そしてフランスを捉えている視線が、なかなか新鮮だった。
ここら辺は島国で育った日本人にはなかなか発想しえない感覚なのだろうと思う。


この本を読むと、ギリシャの債務問題にも、マスコミで喧伝されがちな「怠け者の地中海 vs 働き者のドイツ」という構図とは、違った側面「安価な労働力を東側から収奪するドイツ』がある事が判ってくる…

台風と動物

大騒ぎの内に台風が通過していった。

世間敵には、安保法案の強行採決や、新国立競技場の白紙撤回、そしてプロ野球オールスターゲームとか、大事なニュース、話題が多々あった。
しかし何はともあれ台風の週末だった。
いや、逆に台風の話題の前に、その他の話題が矮小化されたと言った方がいいだろう。

実際、木曜の晩からの強風、土曜の朝まで続いた大雨は、如何にも台風らしかった。
小学生みたいに、金曜の朝には会社を休んでしまおうか…などと考えていたのだが、結局、普段通り仕事には出かけた。
その夜に仕事場の建物から外にでて、雨がザァザァに降っているのを観て、帰るのを止めて、もう2時間くらい仕事をして帰ろうか…とも考えた。
(普段から雨が降っている朝は会社を休んでしまおうか…と布団の中で考えてしまうくらい、僕は雨の日に外に出るのが嫌いなのだ。)
家人は、僕のその水が嫌いなところが、猫の様だともいう。
猫好きの人ならば、そういわれて嬉しいのかも知れないが、僕は犬派なので全然嬉しくない。

社会の事より、今の目の前の雨の事で頭がいっぱいというのは、どうも動物的だ。
この安保法案が遠因の一つとなり将来に中国と武力衝突が発生しても、たぶん僕は、あぁ、中国からの野菜が入らないから、野菜の値段が上がるなぁ…などと、まず食べ物の事を考えるのだろう。
それからおもむろに、株、外資、現金etcの自分の資産価値がどうなるかを考える。
戦闘に参加している日中の戦闘員の方の事、その家族の事、国際政治の事とかを考えるのはその後だ。
動物…というより浅ましいケダモノだ。
そして、もし自分なりに理や主張したい事があれば、一番後者の内容をブログに書いたりするかもしれない。
おそらく、最初に考えた野菜の事は、恥ずかしいからまず書かない。

ちょっとだけ知恵があるサルの様だ。

■書評 グレッグ・イーガン『ゼンデキ』ハヤカワ文庫 2015/6/24

ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)/グレッグ イーガン
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人気SF作家グレッグ・イーガンの最新翻訳長編
事故により妻を失い、ガンによって幼い息子が成人するまで見守る時間を失った男が、人格をコンピューターに移植しようと試みる経緯を描く。

人格や記憶・知性をコンピュータに移植する話は、もう半世紀以上前からSFの世界には存在する。
それが個人の日常に入ってきたのは、日本では1980年代後半の『攻殻機動隊』や『銃夢』等のマンガからだった。
それは個人のアイデンティティの問題、精神の安定の問題を提起し、その哲学的な内容は一部の熱心な読者に支持され、現在に至っている。(一般受けはしなかったが…)

そうした人格をコンピューターの中に移植するというちょっと手垢がついてしまった題材を、イーガンは現在から10年以内のごく近未来を舞台に脳科学・哲学・精神医学・倫理・宗教・文化etcの問題をさりげなく絡めながら日常の物語として描く。
その考察の深さ・緻密さは、手垢のついた題材でも、「あぁ、やっぱりイーガンは凄いな。上手いな。」と思わせる。
もう、これはSFではなく、社会派小説の様だ…
そう思えるほど、この物語世界は僕らの日常と地続きだ。

そこら辺が逆に一方で残念な感じもする。
SF小説は、その設定の飛躍によりテーマを明確に炙り出す。
この小説は地続き故に、そこがわかりにくくなってしまっている…