■書評 グレッグ・イーガン『ゼンデキ』ハヤカワ文庫 2015/6/24 | 本中毒、映画中毒、仕事中毒、そして...恋愛中毒

■書評 グレッグ・イーガン『ゼンデキ』ハヤカワ文庫 2015/6/24

ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)/グレッグ イーガン
¥1,188
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人気SF作家グレッグ・イーガンの最新翻訳長編
事故により妻を失い、ガンによって幼い息子が成人するまで見守る時間を失った男が、人格をコンピューターに移植しようと試みる経緯を描く。

人格や記憶・知性をコンピュータに移植する話は、もう半世紀以上前からSFの世界には存在する。
それが個人の日常に入ってきたのは、日本では1980年代後半の『攻殻機動隊』や『銃夢』等のマンガからだった。
それは個人のアイデンティティの問題、精神の安定の問題を提起し、その哲学的な内容は一部の熱心な読者に支持され、現在に至っている。(一般受けはしなかったが…)

そうした人格をコンピューターの中に移植するというちょっと手垢がついてしまった題材を、イーガンは現在から10年以内のごく近未来を舞台に脳科学・哲学・精神医学・倫理・宗教・文化etcの問題をさりげなく絡めながら日常の物語として描く。
その考察の深さ・緻密さは、手垢のついた題材でも、「あぁ、やっぱりイーガンは凄いな。上手いな。」と思わせる。
もう、これはSFではなく、社会派小説の様だ…
そう思えるほど、この物語世界は僕らの日常と地続きだ。

そこら辺が逆に一方で残念な感じもする。
SF小説は、その設定の飛躍によりテーマを明確に炙り出す。
この小説は地続き故に、そこがわかりにくくなってしまっている…