ウワサでは、B'zの松本孝弘との共演アルバムを制作中だとか・・・。どんな作品になるのやら。
現在62歳のラリーの、20歳の時のソロ・デビュー・アルバムが1968年リリースの「With A Little Help From My Friends」です。

私も詳しいことは知らないんですが、ラリーはこの年ビッグ・バンド・コンテストのベスト・ソロイスト賞を獲得したということです。どうも、その時にプロデューサーに目をつけられてバタバタとこの作品を録音したようです。
実はこの前年1967年に、ジャズ・ギターの伝説ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)が、イージー・リスニング・ジャズの代表的な作品「A Day In The Life」を大ヒットさせているんです。
このことがラリーのデビュー・アルバムに多大な影響を与えていることは、間違いありません。
ということで、この作品は簡単に言うと「イージー・リスニング・ジャズ」や「ソフト・ロック」に分類されるようなサウンドで作られています。
当時のヒット曲のカヴァーで構成するところも、プロデューサーのHarry Mitchellの意向のようで、Creed Taylorみたいな商業的成功を狙っていたことが見え見えですね。残念ながらHarryの名前は、この作品以降ほとんど見かけることがありません。
バックのメンバーも、オルガンを担当しているTerry Trotter(後年、ラリーの片腕として活躍しますね。)意外は、ほとんど無名の人ばかりです。
全曲のアレンジを担当しているFoster Wakefieldという人物も、この作品以外では全く名前を見かけることはありません。
全体の印象は、素人っぽいアレンジを素人に近いミュージシャンたちが懸命にプレイしている、といった感じです。要となるドラムスとベースには、もうちょっとセンスが必要だった気もしますが、元気一杯のホーン・セクションなどの頑張りもあって、とても好感の持てる演奏だと私は思います。
ビートルズ(Beatles)の前年のモンスター・アルバム「サージェント・ペパーズ」に収録されたヒット曲「With A Little Help From My Friends」で、アルバムは始まります。
アルバムのタイトルにもしていることから、プロデューサーの「商売っ気」が感じられます。
妙に明るいアップテンポのリズムにのせて、ラリーはWesっぽいオクターブ奏法を聴かせてくれます。
2曲目が、このアルバムのハイライト「MacArthur Park」です。
私は、リアルタイムではドナ・サマー(Donna Summer)のヒットでこの曲を知りました。

ソフト・ロック・ファンにはおなじみのジミー・ウェブ(Jimmy Webb)の作曲による名曲ですね。
最初に歌ったのは、映画ファンにはおなじみの俳優リチャード・ハリス(Richard Harris)なんです。「ジャガーノート」、「カサンドラ・クロス」、「オルカ」など、70年代には主演作も立て続けにヒットしていました。
近年でも「グラディエイター」、「許されざる者」などで渋い演技を見せてくれましたし、「ハリー・ポッター」の最初の2作ではダンブルドア校長を楽しそうに演じていました。そのおかげで、私の子供たちもリチャードのことを知っています。
残念ながら「ハリー・ポッターと秘密の部屋」の撮影後に亡くなってしまいました。
理由はよくわかりませんが、ジミー・ウェブはリチャードのヴォーカルを気に入っていたようで、68年と69年にジミーの曲だけでリチャードのソロ・アルバムを制作しています。

この2枚のアルバムは、ジミー・ウェブが作詞作曲編曲&プロデュースまで手がけています。しかも、Larry Knechtel、Hal Blaine、Joe Osborn、Mike Deasyといった、当時最高のメンバーでの演奏です。
リチャードの、お世辞にもウマいとは言えないヴォーカルに抵抗がなければ、ジミーの最高傑作の一枚でありますし、ソフト・ロックの「名盤」とも言えるのではないでしょうか?
ということで、このリチャードのアルバムがリリースされた同じ年に、ラリー・カールトンも録音をしているワケです。
スローで静かな部分とアップテンポでドラマティックな展開をする部分がある壮大な曲で、オリジナルも7分を越えます。ラリーのカヴァーも7分を越える熱演になっています。
ラリーはエレクトリックも使っていますが、この曲ではガット・ギターで重要なソロを弾いています。この後40年を越えるギタリストとしてのプレイでも、私はラリーのガット・ギターを使ったプレイを聴いたことがありません。ひょっとしたらどこかで使っているかもしれませんが、少なくとも私は記憶にありません。
ですから、これだけでかなり貴重な録音だと言えるかもしれません。ガット・ギターでの速弾きはありませんが、とにかくウマ過ぎる!!
また、特筆すべきはブラス・セクションの活躍です。
トランペット二人のアドリブでの掛け合いもあり、シカゴ(Chicago)を思い出してしまう印象的なトロンボーンのフレーズが出てきたりします。ライヴ感あふれる演奏で、思わずニヤリとしてしまいます。
この後も、ジミー・ウェブのもうひとつの名曲「恋はフェニックス(By The Time I Get To Phoenix)」や、ビートルズの「Eleanor Rigby」を演ったりしています。
また、「Honey」や「Monday Monday」といった当時の全米No.1ヒット曲を取り上げています。
また、この年のヒット映画「おかしな二人(The Odd Couple)」という、現在では忘れ去られた曲(「バットマン」を作曲したNeal Heftiの作品です!)を演奏しているのも貴重ですね。
ラストはカーティス・メイフィールド(Curtis Mayfield)の名曲「People Get Ready」です。
私などは、どうしてもジェフ・ベック(Jeff Beck)のエモーショナルな演奏が印象に残っているんですが、その期待に反してここでのラリーは、アップテンポのジャズとして演奏しています。これはこれで、気持ち良いですけどね。
で、アレンジやバックの演奏の古さが目立つアルバムではあるんですが、今聴いても素晴らしいのが4曲目のジャズ・スタンダード「When Sunny Gets Blue」です。
基本的にドラムス、ベースにラリーのギターという最少人数での演奏ですが、ラリーは後からリズム・ギターをダビングしているようで、ソロ・ギターに絡む絶妙のバッキングを聴かせてくれます。ハーモニクスも効果的に使っていて、ラリーの引き出しの豊富さを思い知らされます。
数年ぶりに、このアルバムを引っ張り出して聴いてみたんですが、今だから楽しんで聴ける部分が多い作品だと思いました。
購入した当時は、アレンジの古さにどうしても馴染めなかったんです。
ラックにずっと眠ったままになっているCDを、たまには聴いてみるべきですねー。
ギター・ファン、ラリーのファンの方々には是非おすすめしたい作品でした。