ダーク・ハーフ

著者: スティーヴン キング, Stephen King, 村松 潔
タイトル: ダーク・ハーフ〈上〉
愛する妻と二人の子どもに囲まれ、幸せに暮らすサド・ボーモント。彼には作家として二つの顔がありました。一つは本名である純文学作家サド・ボーモント。そしてもう一つは、猟奇的な犯罪小説を生業とするジョージ・スターク。長年サドは表裏一体のペンネームを用いて創作活動をしていましたが、やがて彼はジョージ・スタークを捨て、全てを公表することを決意します。しかし、公表した直後スタークのために作った墓があるキャッスルロックの町で、一人の老人が惨殺される事件が発生します。事件現場に残されたのは、血にまみれた多数の指紋。それは、サドの指紋でした…
迫り来る自身の影の半身ダーク・ハーフとの戦い。超現実的ながらも圧倒的なリアリティを感得させる、キングらしい恐怖小説です。
キャリー

著者: スティーヴン・キング, 永井 淳
タイトル: キャリー
”モダンホラーの旗手”の異名をとる、スティーブンキングの処女作品です。アメリカはメイン州、チェンバレンの町に暮らすキャリー・ホワイト。生まれる直前に父を亡くした彼女は、根本的主義派キリスト教に人生の全てをかける母親の元で成長します。幼い頃から抑圧的な教育を受け、母親の意にそぐわないことは禁じられ育ったキャリーは、学校の中でもその醜い容貌から陰湿ないじめに遭います。少しずつエスカレートするいじめ行為、キャリーを憎むクラスメートは、ついに春の舞踏会において彼女に最低の罠を仕掛けます。かくて罠に掛かったキャリーは、その異能を最悪のときに最大の力を持って顕在化させるのでした…
悲嘆にくれる日々を送りながらも、懸命に生きようとしたキャリーの哀しみがひしひしと伝わってくる本作。人間の悪辣な側面を垣間見ることができる作品です。
天使と悪魔

著者: ダン ブラウン, 越前 敏弥
タイトル: 天使と悪魔(上)
図像象徴学者、ロバート・ラングドンの初登場作品。
ダヴィンチ・コードと同じく、作品中に出てくる美術品、墓所、地下道、建築物に関する記述は全て事実に基づいています。イルミナティや反物質についても例外ではありません。どちらも作品中で説明がなされていますが、特に反物質について知識を得れば、「天使と悪魔」に興味を持ってもらえると思うので少し解説します。
「反物質」
反物質は、通常とは逆の電荷を帯びた粒子からなるという点を除けば、正物質(地球上で実際に目にしている物質)と何ら変わりない。反物質は、正物質と接触することによって対消滅を起こし、膨大なエネルギーを発生させる。そのエネルギー効率は100%(核分裂のエネルギー効率は1.5%に過ぎない)公害も放射能も生み出さず、ほんの微量でニューヨーク市全体にまる一日分の動力を供給できる。
しかし、非常に不安定なため扱いが難しい。どんな正物質とでも、空気とでさえ接触すれば発火する。反物質1グラムが有するエネルギーは、20キロトンの核爆弾に相当する。これは広島に投下された核爆弾とほぼ等しい。
物語は、そんな危険極まりない反物質の生成に成功した研究所欧州原子核研究機構 (通称CERN)で起きた不可解な殺人事件で幕を開けます。殺害されたのは、反物質を研究していた科学者。左目がくり抜かれた陰惨な死体には、胸にある焼印が押されていました。それは、イルミナティの紋章。焼印の意味を探るラングドンでしたが、そんな中反物質が盗まれているという驚愕の事実が判明します。周囲5キロ四方を消滅させられるだけの反物質はどこへ持ち去られたのか?狼狽する所員でしたが、そこへ重要な一報が入ります。それは反物質らしき物の目撃情報。知らせてきたのは、イタリアはローマにあるヴァチカン市国の衛兵隊でした。ラングドンと被害者の娘ヴィットリアは、すぐさまヴァチカン市国へ急行します。折りしもヴァチカンでは、新たな教皇を互選する教皇選挙会が行われているのでした…
反物質はどこにあるのか、なぜ選挙会が狙われたのか、そしてイルミナティの存在とは?幾重にも張り巡らされた数々の謎。迫り来るタイムリミットの緊迫感、刻一刻と変化する物語の展開には、興奮を覚えずにはおれません。
覇王の家

著者: 司馬 遼太郎
タイトル: 覇王の家〈上〉
幼少時から人質として育ち、当主になってからも武田信玄の脅威や織田信長の苛烈な要求の中で苦汁をなめつつ生きてきた徳川家康。しかし、厳しい環境は過酷であればあるほど人間を成長させます。家康はまさにその典型のような人物でした。人質として送る生活は彼の忍耐力を培い、武田軍が滅んでからは多くの武田武士を召抱え兵法を模倣し、秀吉亡き後は彼の人蕩術を真似て人心を集めました。「泣かぬなら 泣くまで待とう ほととぎす」とは有名な歌ですが、まさに家康の人となりを明確に表しています。
焦らず、地道に機が熟するのを待つ。英雄と言えば、非凡な才能で他者の追随を許さず駆け上がってゆくというイメージを持ちますが、ひたすらに隠忍自重して最後には勝利者になるというのも、一つの英雄の型ではないでしょうか。そんな気にさせられる物語です。