覇王の家

著者: 司馬 遼太郎
タイトル: 覇王の家〈上〉
幼少時から人質として育ち、当主になってからも武田信玄の脅威や織田信長の苛烈な要求の中で苦汁をなめつつ生きてきた徳川家康。しかし、厳しい環境は過酷であればあるほど人間を成長させます。家康はまさにその典型のような人物でした。人質として送る生活は彼の忍耐力を培い、武田軍が滅んでからは多くの武田武士を召抱え兵法を模倣し、秀吉亡き後は彼の人蕩術を真似て人心を集めました。「泣かぬなら 泣くまで待とう ほととぎす」とは有名な歌ですが、まさに家康の人となりを明確に表しています。
焦らず、地道に機が熟するのを待つ。英雄と言えば、非凡な才能で他者の追随を許さず駆け上がってゆくというイメージを持ちますが、ひたすらに隠忍自重して最後には勝利者になるというのも、一つの英雄の型ではないでしょうか。そんな気にさせられる物語です。