ひとつ前のお話はこちら↓
奈良、神様と出会った旅~天河神社編⑤



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少し小さめの路線バスがやってきて、職員のおじさんがにこにこと声をかけてくれる。

待合所にいた10名くらいの全員が同じバスに乗る。
中庵住(なかいおすみ)行き。
さあ、ここから天川村まで約60分の旅の始まり。

わたしは電車やバスに長い時間乗るのが好きだ。
毎朝乗っている混雑した東京の通勤電車はごめんなさい…だけど、

ひとり旅。
窓際の座席に座れたならば、
移動時間は長ければ長い方が好き。

好きな音楽を聞いて、
移り変わり流れる風景を見て、
わたしは椅子に座っている。

それだけで、道が続く先、遠くへと運ばれる。

ときにはうとうとしたっていい。

窓に反射する自分の顔を見てたっていい。

音楽に合わせて頭を揺らしたり、
小さく口パクで口ずさんでみたっていい。

好きな曲だけプレイリストに入れて、2曲をずっとループ再生したっていい。


バスは出発地の下市口駅で座席が8割くらいは埋まった。
一番後ろの窓側の席に座る。

2組の若いカップル以外はみんな一人ずつで、
ささやくような話し声が少し、あとは静まっている。

静けさ。

これも、窓側の席に座るのと同じくらい、わたしにとっては大切だ。

ささやき声で話していたカップルもじきに一人二人と眠ってしまって、
車内はすっかり静かになった。

わたしにとって理想的な環境。

祝福が、続いている。


車窓は少しずつ山あいめいてきて、
濃い緑の木々が、午前中の太陽の強い日差しをところどころ遮って過ぎる。

ここの山は、これまで見てきた奈良のまあるい山とは少し感じが違う。
ほんの少しだけ感じる、ピリッとした緊張感。

途中、「長谷」というなんの変哲もない名前のバス停で、
わたしと同じように山登りではない服装をした若い女性が「止まります」ボタンを押した。

山の中の一本道。

こんなところで?

気になって前の方を見ていると、
すぐに目に飛び込んできた

「日本最古の水神」

の文字。

丹生川上神社という神社があるようだった。
立派な鳥居が窓からすぐ見える。
道にそってずらりと水色の幟が並ぶ。

丹(に)というのは天然の水銀。
鳥居の朱色のもとで、古くから防腐剤として使われていた。
薬という意味もある。

これも山蔭神道の表博耀さんがよくYouTubeで言っている。

~だから古典神道というのは生活様式なんです。
ぜんぶに意味があるんです。~

丹生川上神社の「に」の文字を見ただけで耳に表さんの声が聞こえてくる。

日本最古の水の神様と思いがけず道中で出会うとは。
水神様ということはやはり龍神様、女神様だろうか。

水的な属性になぜか親近感のあるわたし。
水神様にもなぜか親しみを感じる。

ここはまだ天川村ではないけれど、
この地域、やはりただ者ではない。

神社めぐりが好きな人はきっと、
この丹生川上神社と天河神社を巡るのだな。

なんたって、同じ路線バスでつながっている。


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~今日の旅程~
…下市口駅8:47🚌(中庵住行き)🚌長谷(まだ乗車中)…


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シリーズもの
あるひとつの前世(ビリー)シリーズ🌿

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