就業規則のネタ -47ページ目

第○○条  労働時間・休憩時間及び休日の適用除外

今回の条文については、就業規則中に載せる必要があるかどうかという点について、私個人としていろいろ考えることがあるのですが、労務管理上、問題になりやすい部分なので、あえて書こうと思います。


労働時間・休憩時間及び休日の適用除外 というのは、一般的に、

 課長になると残業代が出なくなる(会社によっては課長ではないかもしれないが)

といわれるものであります。

労働時間・休憩時間及び休日の適用除外であるから、1日8時間、1週40時間(業種等によっては44時間)を超えて、また、法定休日に働いても労働基準法違反にならず、時間外・休日労働の割増賃金を支払う必要もない、ということでいくら働いても残業代が出ないということになります。


少し早いのですが、一般的な条文を例示します。



(労働時間・休憩時間及び休日の適用除外)

第○○条

次のいずれかに該当する従業員には、第○○条から第○○条に定める労働時間・休憩時間及び休日についての規定は適用しない。

(1)監督もしくは管理の地位にある従業員又は機密の事務を取り扱う従業員

(2)監視又は断続的業務で、会社が行政官庁の許可を受けた従業員



(1)について、具体的には以下のようになります。

 監督もしくは管理の地位にある従業員(以下、管理監督者という) … 実体を伴った管理職

 機密の事務を取り扱う従業員 … 秘書など


ここで、特に労務管理上問題になり、会社と従業員とのトラブルの種になりがちなのは、管理監督者についてです。

 課長になると残業代が出なくなる

ということは、世間では割と普通に行われていますが、会社と従業員とのトラブルが発生したり、労働基準監督署の調査の際には、管理職という肩書だけでは管理監督者であるというようには認められません。あくまでも管理監督者であるという実体が伴っていることが必要となります。


その判断の基準としては、

①経営者と一体の立場で、労務管理を行っていること(労務管理方針の決定に関与したり、一般の従業員の指揮監督をしている)

②現実の勤務態様が、労働時間等の規制になじまない立場であること(労働時間等に規制を超えて働くことを要請されている)

③自己の勤務について、自由裁量の権限を持ち、出退勤の時間について厳格な制限を加えられていないこと

④管理監督の地位に対する特別の手当等が支払われていること

等を総合的に考慮する、ということになっています。

つまり、①から④のうち、1つでも実態と異なっている場合、管理監督者と認められることは難しいと考えられます。


そのため、同じ会社の同じ課長でも、勤務の実態によって管理監督者と認められたり認められなかったりということも起こりえますし、肩書がなくても管理監督者と認められるということもないとはいえません(これはまずないでしょうが)。

いずれにしても、むやみに肩書をつけて管理監督者ということにし、残業代を支払っていない会社については、それが発覚した場合には、必ず未払いの残業代の支払を命じられることになりますので、そのような会社では、早くそのような状況を改善する必要があるでしょう。


また、このように安易に管理監督者としている影響からか、本当に管理監督者にあたる人でもその自覚が足りないように見えることも意外と多いので、あらゆる会社において、管理監督者には、その地位と職務に対する自覚を持たせるということを徹底して行ったほうが良いと考えています。


(2)の、監視又は断続的業務については、寮母、宿直などが挙げられるが、実態に即して労働基準監督署が許可するかどうかを決めることになります。

第○○条  休日の振替 ・ 代休

休日の振替 とか、 代休 というのは、市販の就業規則本にもたいてい載っていますし、会社でもわりと広く行われています。

ただ、休日の振替と代休を正しく理解し、そして正しく使い分けられているかというと、そうでない会社が多いようです。

まず、休日の振替とは何なのか、代休というのは何なのか、ということについて書いていこうと思います。

尚、この記事の中で 休日 とは、労働基準法第35条の休日、つまり、毎週1日、又は4週で4日のいわゆる法定休日で、もし労働者に労働を命じる場合には3割5分以上の割増賃金を支払うべき休日のことを指しますので念のため。


休日の振替 というのは、文字通り休日を振り替えるということです。

具体的には、

 休日を振り替えることがあるという旨を就業規則に定め、
 振り替える日を事前に特定した上で、

 もともと休日としていた日に労働させることができる。

そして、

 もともと休日としていた日は、別の日と振り替えられたので、

 休日に労働したということにはならず、

 したがって休日の割増賃金を支払う必要がない、

  (ただし、1週の法定労働時間を超えた場合は、割増賃金の支払義務が発生する)

というのが、休日の振替であります。


代休 は、
 時間外・休日労働に関する協定(いわゆる36協定)を締結していることを前提に、

 休日に労働させて、

 後日、その代わりに休みの日を与えるというもの。

ただし、

 休日に労働をさせたという事実は変わらないため、

 休日の割増賃金を支払う必要がある。

というものであります。


休日の振替と代休の違いのポイントは、非常におおざっぱにいうと

 代わりの休日を事前に特定しているかいないか

によって

 割増賃金を支払う必要があるかないかが決まる

というところです。


なかなか難しい理屈なのですが、いずれにしても、休日の振替と代休については、会社と従業員とのトラブルになりやすい部分です。

それは、休日の振替と代休を

 正しく運用しているかという問題

 正しく運用していたとしても、従業員が理解しているかどうかという問題

 正しく運用し、従業員が理解していたとしても、休日の振替と代休をどのように使い分けるかという問題

があるためだと考えています。

トラブルになる原因としても、会社と従業員の認識の違いによるものとなることが多く、そういう意味で本当につまらないトラブルであるといえます。


つまらないトラブルを避けるためには、

 従業員に、休日の振替と代休の違いを十分に周知させ、

 休日の振替と代休をむやみに併用せず、原則としてどちらか一本に絞ること。

もしくは

 休日の振替も代休もせず、割増賃金の支払で解決すること。

のどちらかが有効である思います。


以下、一般的な条文を例示します。



(休日の振替)

第○○条

会社は、業務上必要がある場合は、あらかじめ振替による休日を指定した上で、第○○条の休日に勤務を命じることがある。

2. 前項の指示にもかかわらず、正当な理由なくその日に勤務しないときは欠勤として扱う。

3. 第1項の勤務を行った場合、休日勤務ではないため、休日の割増賃金は支給しない。


(代休)

第○○条

会社は、業務上の必要により第○○条の休日に勤務したときは、代休を与えることがある。

2. 前項の代休は、休日勤務した日から※※日以内に取得しなければならない。



私自身、休日の振替と代休の違いについては、なぜこのふたつを明確に分けなければいけないのか、ということについてずっと疑問に思っていました。

しかし最近、休日の振替が、女性や年少者が休日労働を禁止されていた頃に、例外的に休日労働をさせることができる仕組みであり、そのために、就業規則に定めたり、事前に振り替える日を特定したりという手続が必要であったということを知り、多少疑問は解けたといったところです。

第○○条  時間外・休日及び深夜労働

時間外労働、休日労働、深夜労働(以下、 時間外労働等 という)は、割増賃金を支払うか支払わないかということにからむため、会社と従業員とのトラブルに非常になりやすい部分です。

特に、時間外労働については、

 従業員が、本当に時間外労働をしているのに割増賃金が支払われない(いわゆるサービス残業)

 従業員が本当に働いているのかいないのか定かでない状態で割増賃金の支払を求められる

 長時間の時間外労働等で従業員が死亡したり、健康を害したりする

という三つのパターンによる問題が深刻になっています。

そして、裁判等で争われた場合に、労働者に有利な結果が多数あり、会社側が勝つののは非常に難しいのが現実です。そのため、時間外労働等の管理というのは、非常に重要な経営課題といえるでしょう。しかし、実際にトラブルが発生するまで、そのことに気づいていない、又は、たいした問題ではないと高をくくっている経営者の方もたくさんいらっしゃいます。


時間外労働等の管理を重要な経営課題だととらえると、時間外労働等を行うかどうかを従業員が決めるのではなく、会社側が決める、という方向になります。

その理由は、裁判等の争いの場で、

 労働者が主張する時間外労働時間の長さについて、 会社側が反証できない

ことにより、労働者の主張に沿った判断がなされるからです。

そのため、時間外労働等を行うかどうかは会社側が決めることを明確にし、その管理を会社が行う、というようにならざるを得ません。(ただし、これで100%問題が解決するわけではありませんが) 


具体的には、現在多くの会社で行われている、“時間外労働等の黙認”をやめ、

 “時間外労働等は会社の命令又は承認のもとで行う”

ことを就業規則に明記し、従業員に周知徹底する、ということになるでしょう。


そのためには、

就業規則に、時間外労働等は会社の命令か従業員の申請を上司が承認することによってのみ行うこと、勝手な残業を禁止することを定め、

時間外労働等の命令や、申請から承認の手続きを整備し、

従業員に周知し、

場合によっては勝手な残業をするものに対し懲戒処分を行う、

などということが必要になってきます。

さらに、

残業の命令が承認が、経営上妥当なものであるかどうかの定期的なチェック

賞与、昇給の決定、教育訓練の必要性の検討

など、総合的な人事労務管理についても考慮する必要があります。


このようなことをを実際に実行するには、

 経営者の強い意志

 管理職の、部下の管理能力の向上

 各従業員の、仕事に対する意識の向上

ということが欠かせません。

そのため、ちゃんと実行することはそう簡単なことではありません。しかし、ちゃんと実行できれば、かなり強い組織になって、会社の発展の原動力になるのではないかと思います。


以下、一般的な条文を例示します。



(時間外・休日及び深夜労働)

第○○条

会社は従業員に対し、業務上必要がある場合は第○○条に定めた所定労働時間を超え、又は第○○条に定めた休日、あるいは深夜(午後10時から午前5時)に就業を命じることがある。

2. 前項の時間外及び休日労働は、従業員代表との書面による協定の範囲内とし、第○○条に規定する割増賃金を支払うものとする。

3. 時間外、休日及び深夜勤務を行う従業員は、事前に会社所定の申請書で上司に申請を行い上司の承認を得なければならない。ただし、業務上の都合により事前申請が困難であったと会社が認めた場合のみ事後申請を認めるものとする。

4. 小学校就学前の子の養育又は要介護状態の対象家族の介護を行う従業員の時間外・休日及び深夜労働については、育児・介護休業規程に定めるものとする。

5. 会社は、満18歳に満たない従業員については、労働基準法第35条に定める休日及び深夜には就業させない。

6. 会社は、妊産婦(妊娠中又は産後1年を経過しない女性)である従業員が請求した場合には、第○○条に定める休日及び深夜には就業させない。


第2項の従業員代表との書面による協定とは、時間外・休日労働に関する労使協定(いわゆる36協定)のことです。時間外労働や休日労働を行わせる前提として、この協定をを締結し、労働基準監督署に届け出ておかなくてはなりません。

第4項から第6項については、労働基準法及び育児・介護休業法において、就業を制限しなくてはならない場合があり、そのことについて明記しています。


時間外労働等の管理をどのようにするのかは、基本的に各会社に委ねられており、各会社の事情等を考慮して決めるべきことです。しかし、

 (確信的に)サービス残業をさせている

 個々の従業員の残業時間と会社が正確に把握していない

ことが、経営上の大きなリスクとして存在していることは知っておくべきでしょう。

 フレックスタイム制

会社は、従業員を、1日8時間、1週40時間(業種等によっては44時間)を超えて労働させてはならないということ、そして、その例外として、1ヶ月単位、1年単位、1週間単位の変形労働時間制を前回まで紹介してきましたが、もうひとつ、フレックスタイム制という制度があります。

今回は、フレックスタイム制について紹介したいと思います。


フレックスタイム制というのは、


本来、労働時間は

      1日8時間

      1週40時間(業種等によっては44時間)

を超えてはならないのですが、

 

フレックスタイム制を行うということを

    労働協約または労使協定を締結する

ことで定めることにより、


1ヶ月以内の清算期間と、清算期間の総労働時間の範囲内で、

   始業・就業の両方の時刻を労働者が自主的に決定するという条件で

   1日8時間

   1週40時間(業種等によっては44時間)

を超えて労働することを可能とする、という制度です。


フレックスタイムを行ううえで締結する労使協定では、以下のことを定めることになっています。

(1)対象となる労働者の範囲

(2)清算期間(1ヶ月以内の期間)とその起算日

(3)清算期間における総労働時間

   (清算期間を平均して1週40時間(業種等によっては44時間)の範囲内で)

(4)標準となる1日の労働時間

(5)コアタイム(必ず労働しなければいけない時間帯)を定める場合は、その開始と終了の時刻

(6)フレキシブルタイムに制限を設ける場合は、その開始と終了の時刻

   (フレキシブルタイム…労働者が選択的に労働することができる時間帯)



フレックスタイム制と、1ヶ月単位、1年単位、1週間単位の変形労働時間制との決定的な違いは、日々の労働時間を誰が決めるのかということです。つまり、

 1ヶ月単位、1年単位、1週間単位の変形労働時間制では、会社側が労働時間を決定するが、

 フレックスタイム制は、従業員自身が自分の労働時間を決定する、

ということであります。


以下、フレックスタイム制を導入する場合の、就業規則の条文を例示します。



(フレックスタイム制)

第○○条

第○○条の規定にかかわらず、フレックスタイム制に関し従業員代表との書面による協定(以下、労使協定という)を締結したときは、その対象従業員は、始業及び就業の時刻はそれぞれの従業員が自主的に決定したところによるものとする。

2. 前項の規定にかかわらず、※※時から※※時までをコアタイムとし、その時間は必ず出勤していなくてはならない。

3 フレックスタイム制に関するその他の事項は、第1項の労使協定に定めるところによるものとする。


(休日)

第○○条

従業員の所定休日は以下の通りとする。

(1)日曜日

(2)土曜日

(3)国民の祝日及び休日

(4)その他会社が特に定めた日

2. 会社は、毎年※※月に、翌年※※月から※※月までの勤務カレンダーを作成し、従業員に通知する。



フレックスタイム制は、始業・就業の時刻を労働者が自主的に決定するものですが、休日については、労働者が決めるものではなく、会社が決定する事項です。


ところで、フレックスタイムを導入して成功するかどうかは、会社と従業員の両方が、 労働時間を従業員が自主的に決める ということを本当に理解しているかということにかかっています。

実際、一度はフレックスタイム制を導入したものの、効果が出なかった(弊害が出た)ということで取りやめた会社もあります。


実際にフレックスタイム制を導入すると、

従業員が自由に始業・終業時刻を決めて働いた結果、実際の労働時間が清算期間の総労働時間を超えた場合は、残業時間ということになり、会社は残業代を支払わなくてはなりません。

残業代が、従業員の実際の仕事に見合っているのかということは、会社として非常に大きな問題です。

また、その残業時間が非常に長い場合に、従業員の健康の維持について会社としてどのように対応するかということも、あらかじめ考えておく必要があります。


フレックスタイム制では、会社側として、通常の会議については、コアタイムに行うようにせざるを得ないという制約も発生します。さらに、業務上重要な案件であっても、コアタイムでない時間(フレキシブルタイム)に仕事をするよう会社が命じることは難しいという問題もあります。

また、従業員個々が始業・終業時刻を決めるという状況から、社内の連絡、連携に問題が生じるということも可能性として考えられます。

このように、会社側はもとより、従業員にも、自分を律するという姿勢が強く求められるのが、フレックスタイム制というものであると私は考えています。

そのため、フレックスタイム制は、うまくいく場合とうまくいかない場合がはっきり分かれやすい制度です。

フレックスタイム制を適切に行うには、会社と従業員の両方が、制度の趣旨をしっかり理解し、その目的を一致させておく必要があります。そのうえで、法令等に従いながら運用していくことが重要です。


やや否定的な部分についても書きましたが、フレックスタイム制は、通常の従業員だけでなく、育児、親族等の介護をしている従業員などに適用し、効果を挙げていくことも十分に可能ですので、様々な状況で導入を検討することができる制度であるともいえるでしょう。

 1週間単位の非定型労働時間制

これまで、1年単位の変形労働時間制、1ヶ月単位の変形労働時間制を紹介してきましたが、今回は表題のとおり、1週間単位の非定型労働時間制を紹介したいと思います。


まず、1週間単位の非定型労働時間制を利用できる事業には条件があります。

  業種は、小売業、旅館、料理店、飲食店 に限る

  常時使用する労働者数が30人未満

この両方の条件を満たした事業のみが対象となります。

1週間単位の非定型労働時間制は、


本来、労働時間は

      1日8時間

      1週40時間(業種等によっては44時間)

を超えてはならないのですが、


1週間単位の非定型労働時間制の対象事業で、 

1週間単位の非定型労働時間制を行うということを

    労働協約または労使協定を締結する

ことで定めることにより、


1週間を平均して、

  1週40時間(44時間の業種等でも、40時間になる)

の労働時間を超えないという条件で、

  特定の日に

   1日8時間(1日の限度は10時間)

を超えて労働させることができる、という制度です。


毎週の労働日及び労働時間は、前週の末日までに決定し、各労働者に書面で通知しなければなりません。

また、労働日と労働時間の決定にあたっては、労働者の意見を尊重するよう努めるものとされています。そのため、事前に従業員から勤務希望日等を確認したうえで、労働日と労働時間を決定するようにすることが求められます。


1週間単位の非定型労働時間制を導入する場合の就業規則の条文を、以下の通り例示します。


(労働時間及び休憩時間)

第○○条

従業員の所定労働時間は、従業員代表との書面による協定(以下、労使協定という)により、1週間単位の非定型労働時間制によるものとする。

2. 各従業員の勤務日ならびに各日の所定労働時間・始業・終業時刻及び休憩時間は、前週の※曜日までに勤務票を交付し通知する。

3 業務の都合その他やむをえない事情がある場合は、前日までに書面にて通知の上、前項の所定労働時間・始業・終業時刻及び休憩時間を変更することがある。


(休日)

第○○条

1週間単位の非定型労働時間制の適用を受ける従業員の休日は、前週の※曜日までに勤務票を交付し通知するものとする。

2. 業務の都合その他やむをえない事情がある場合は、前日までに書面にて通知の上、前項の休日を他の日に振り替えることがある。



1週間単位の非定型労働時間の対象となる事業所では、割と広くこの制度を利用しています。

すでに利用している場合は、労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出ているか、労働時間は1日10時間、1週40時間に収まっているか、休日は確保しているか、残業時間の算定方法は適正かなど、一度チェックすることをお勧めします。

これから利用しようという事業所では、これらの事項を理解し、必要な人員を確保した上で行うことが重要でしょう。