先日、中国の直近のマクロ経済指標が相次いで発表されたので、頭の整理も兼ねて纏めてみました。

昨年来の景気刺激策によって内需は何とか成長軌道が保たれている様相ですが、外需は引き続き厳しく、金融緩和政策(特に銀行への融資拡大圧力)により溢れたマネーが資産(不動産及び株式)に向かっている状況は引き続き継続しているように思えます。

実際、不動産価格も北京、上海等の都市部ではかなり急激に上昇している話をよく聞きます。

実需の回復傾向がある程度見えてくると、これまでの金融緩和策が引き締めモードに転換することは容易に予想されますので、近いタイミングで一度資産価格に大きな調整が入る可能性が高まってきたように感じます。


鉱工業生産(7月):前年同期比 +10.8%

小売業売上高(7月):前年同期比 +15.2%

電力生産量(7月):前年同期比 +4.8%

消費者物価指数(CPI、7月):前年同期比 -1.6%

生産者物価指数(PPI、7月):前年同期比 -8.2%

輸入量(7月):前年同期比 -14.9%

輸出量(7月):前年同期比 -23.0%

マネーサプライ(M2、7月末):前年同期比 +28.4%

新規銀行融資残高(1月~7月):7.7兆元(2009年通年計画:5兆元)

都市部固定資産投資(1月~7月):前年同期比 +32.9%

昨今ブームのTwitter、正直ユーザ感覚として便利や楽しいと思うシーンがこれまであまり無かったのですが、その威力を感じる出来事が先週末にありました。

内容が内容だけに現地でもあまり大きく報道されていないのですが、先週末にかけて、中国中部の湖北省石首という都市で、数万人規模の暴動事件がありました。

実際の事件の内容は以下の通りみたいです。(これは本日の記事)

Cook's death sparks protests in Hubei

市民と警察・軍隊の衝突が起きたのは、土曜日から日曜日の朝にかけてだそうですが、内容がセンシティブだったためか、リアルタイムでは大手メディアで殆ど報道がなされていませんでした。

(一部の政府系メディアでは、同地で警察と消防の訓練が行われている、といった報道がなされていたようです)

たまたま日曜日に掲示板の記事でちょこっと見つけて、ニュースでは全く詳細が出てこなかった上に、検索エンジンでは同地名の検索が一時ブロックされているくらいだったので、一体どうなってしまっているのだろうとふとTwitterで検索してみたら、おびただしい数の事件に関する投稿がリアルタイムになされていて本当に驚きました。

(今でも、地名の読みである「Shishou」で検索すると、かなりの投稿があります)

ちょうどイランでもTwitterの威力が話題になっていますが、このサービスのリアルタイムでの情報伝播力は凄いな、と自ら実感した出来事でした。



TIMES誌の、

「世界で最も影響力のある100人」

The World's Most Influential People

が発表されたのを機に、同誌が選んだ2008年のトップ10ニュースを改めて見てみました。

The Top 10 Everything of 2008

気づいたのは、意外と状況をよく判っていない出来事がトップ10に含まれていること、特にパキスタンなどの南アジア情勢やロシアでの民族紛争などは、殆どその実情は理解していませんでした。

なかなか関心が向きにくい分野ではありますが、世界で働く以上、少なくともトップ10に選出されるくらいの出来事はしっかり把握しておきたいものだと思いました。

ちなみに、内容は、

1. リーマンショックに端を発する金融危機
2. オバマ大統領選出
3. ムンバイでの大規模テロ
4. イスラマバードでの大規模テロ
5. ソマリア沖海賊事件
6. コーカサス民族紛争
7. 中国のメラニン混入事件
8. キューバカストロ議長の引退
9. コロンビア革命軍からの人質救出劇
10. ミャンマーのサイクロン及び中国四川大地震

でした。



中国のEC市場を独占しているといっても過言ではないAlibabaグループ。

香港市場に上場しているAlibaba.comが展開しているBtoB事業や傘下の淘宝网が展開するCtoC/BtoC事業、決済サービスの支付宝など、周辺事業も含めて圧倒的な存在感があります。

そんなAlibabaに関する以下のような記事が最近ありました。

Alibaba eyes acquisitions

中国のインターネット市場においては、米国と同様M&Aが活発に行われているので、ベンチャー投資事業の出口戦略として、M&Aの買い手候補先の動きをウオッチしながら案件発掘を行うのは非常に重要だと考えています。

Alibabaは昨年から専門のベンチャー投資部門を立ち上げていますし、我々もAlibabaと共同で、ECプラットフォーム事業者への投資を最近決定しています。

EC市場は今後も有望分野であることは間違いないですが、同社の市場への影響力は大きいので、動きはより注視していく必要があると思っています。











米国ベースのリサーチ会社が、2009年のオンラインゲーム市場の成長予測を発表しています。

China’s online game sales expected to grow 38%

2008年の$2.75billionから、今年は$3.8billionまで成長する見込とのこと。

絶対額でも相当の規模に到達している上、まだまだ成長余力が高くやはり非常に有望な市場です。

記事にあるように都市以外での市場拡大ももちろん期待できますが、もともと男性層の多かったオンラインゲームのユーザ属性が、最近のカジュアルゲームの人気上昇に伴い裾野が都心部でも広がってきたことが市場拡大の新しいドライバーになりうると感じています。

また、モバイルでのオンラインゲームも昨年後半から市場が立ち上がったばかりですが、ユーザ及び市場規模とも着実に伸びそうな勢いです。

我々の中国出資先でもゲーム関連の会社が最も多いですし、昨年上場を果たしたポートフォリオ企業の1社も台湾ベースのゲーム企業です。

株価も、昨年後半の金融危機で一時下がりましたが、その後は堅調に推移しています。



中国北京ではたらくインターネットベンチャーキャピタリストのアメブロ-3546


同社以外の企業も、市場拡大の波を逃さず、成長路線に着実に乗せていきたいと思っています。




我々の投資分野はインターネットに特化していますが、現在中国でベンチャー投資の資金が集中している分野の一つが、クリーンテック(環境技術)です。

環境技術というと日本企業が先行しているイメージが強いですが、中国の追い上げも激しくなっているようです。

・2009年末には、中国が世界最大の風力発電タービンの生産国へ

中国北京ではたらくインターネットベンチャーキャピタリストのアメブロ-wind turbine


・今回の経済刺激策のなかで、環境技術関連に占める財政支出額のGDP比は米国の0.5%に対し、中国は3%

・太陽電池の生産量も、欧州、日本に次ぐ規模

・上記の中国の追い上げに警笛を鳴らす米国の政治団体の論調



We Must Seize the Energy Opportunity


個人的に、石油に代わる代替エネルギー資源の技術開発はとても社会的意義が高いと思っているので注目しています。

この分野でも中国の存在感が高まっていることは間違いないようです。









4月23日、24日と北京で開催されたモバイルインターネットのカンファレンスにゲストとして招待されたので参加してきました。

中国、日本、韓国のモバイル関係の大手企業、ベンチャー企業が参加したイベントでした。

エッセンスとしては、やはり3Gライセンスが今年に入り発給されたことで、モバイルインターネットサービスの飛躍の年になるという論調が多かったですが、中国ならではのポイントが幾つかあると感じました。

ポジティブな点としては、中国のキャリアがモバイルデータサービスの発展に(そろそろ)本腰を入れる時期に来たということです。

これまでは中国は加入者数がうなぎ登りに増えてきた為、携帯キャリアの視点では、別にARPUを上げなくても加入者数が増えればそれで良し、という発想が強かったと思います。これは、仮にライセンスが発給されたというだけでは、周波数が入札制ではない中国では、変わらないと感じていました。

ただし、昨年末の経済危機に対する中国の経済刺激策の一環という位置づけもあり、政府の圧力もあったのではと推測していますが、各キャリアが年間1兆円を超える設備投資を行う計画を発表しています。

これだけの設備投資を新インフラに行えば、回収のためには数の拡大だけではなく、質(=ARPU)の拡大も図らなくては、というモチベーションが必ずキャリアに生じるはずだと考えています。

一方、ネガティブな点としては、中国の端末業界の構造です。詳細は下記記事が詳しいですが、直近では中国で販売されている端末のおよそ50%がMTK端末とのことでした。

海賊端末が生んだ中国ケータイ業界の憂鬱

安価なチップが出回っている為、詳細の仕様が統一されていない多種多様な端末が存在し、かつそのような機種のシェアが高まってくると、データサービスの機能や動作保証を行うのが極めて困難になってきます。

結果ユーザビリティが均一化されず、ユーザの失望感が広がってしまう可能性は否めません。

今後中国モバイル市場は、引き続き有望分野だとは思いますが、現地独自の事情をしっかり認識しておかないと見誤る可能性があると改めて感じました。



長年期待されてきた中国の新興証券市場(創業板)が今年の5月1日に開設されることが正式に決まりました。

China to launch Nasdaq-style second board

開設時は最低でも8社の企業が取引可能となるようです。

間接金融の発達していない中国では、中堅企業への資金調達手段が限られていることが大きな課題となっており、その解決策として位置づけられているのがこの市場だと思います。

具体的にどのような企業が取引されるのかはまだ公表されていませんが、未公開市場での投資(VCやPE)を受ける機会が少なかった企業が当初の上場企業になるのではないかと推測しています。

ただ、規模が必ずしも大きくなくとも、資金調達が可能となる市場自体が出来たことは経済にとってはプラスだと思いますし、市場が盛り上がったときに投資家の立場からするとEXITのオプションが広がったと捉えたいと思っています。





しばらくアメブロへのアクセスが中国から出来なかったですが、最近無事復活しました。

こちらでアメブロを読まれている駐在員の方からよくご質問を受けたりしていたので、良かったです。


昨月末のトピックで少し古いですが、中国の広告市場が2009年も5~8%は成長する見込みです。


Ad spending forecast to grow 5-8% this year


日米を始めとする先進国の広告市場は軒並みマイナス成長(米国はマイナス3~6%)が見込まれる中、前年比で鈍化するとはいえ、この金融危機下での成長はやはり魅力的です。

GDPとの連動でパイ自体もまだ大きくなる余地があり、かつ市場の中でのネットへのシフトも当然着実に進んでいくはずですので、広告モデルに依拠しているベンチャー企業は中国であっても正直今厳しいのが現状ですが、この時期を耐えれば花開く可能性も十分にあると思っています。




本日の日経新聞に、08年7月-9月期の中国企業の国内外市場への新規上場が28社と前年同期の74社から大幅に減少したとの記事がありましたが、中国国内への新規上場は9月以降は当面凍結状態になりそうです。


For a While, no more IPOs in China


現在の株価低迷を踏まえ、需給の悪化を懸念して新規上場申請の審査を当面の間証券当局が停止するとのこと。


停止は今年9月にさかのぼって適用されるとのことですので、9-12月期の上場件数は更に減少が予想されます。


直近のEXIT環境は厳しいですが、弊社の投資ポートフォリオはアーリー~ミドルステージへの投資が中心ですので、現在の調整は決してマイナスではなく、逆にプラスだと捉えています。


中期的な視点で市場のサイクルをしっかりと認識して、そのトレンドを見誤らないことを常に意識していきたいと思っています。