魔王のお見合い! 第七十八話『一年前!』
「フュー・・・様ですか。」
「うむ。」
「しかしそれは・・・」
「守桜さんをあきらめたなら、の話だ。」
「そう・・・ですか・・・」
ヤンが俯く。
「ん?」
「いえ、もしフュー様を選ばれたとして・・・。大丈夫でしょうか。」
「何がだ?」
「一年前のことですよ。」
「・・・」
今度は魔王が俯いた。
「あれは・・・フューの言う通り、“過失”だ。」
「それでも・・・」
「そうだな。危険かもしれない・・・」
魔王は目を閉じて、一年前のことを思い出す。
フューに殺されかけた、“あの事件”—。
・・・一年前。
「魔王様!」
魔王よりずいぶん年下の少女が、魔王の部屋に押し掛けて来た。
「おお!フュー!私の美しい婚約者よ!」
亡き父が選んでおいた婚約者第一候補の来訪に、魔王は胸を躍らせていた。
↑↑書籍化目指してます!クリックおねがいします!!
魔王のお見合い! 第七十七話『マジメなナヤミ!』
「はああ。」
魔王の大きな溜め息。
「どうしたんですか?」(このパターン・・・)(多いな・・・)
ヤンが雑誌から目を離し、魔王に尋ねる。
結婚情報雑誌『ゼクシル』。
ヤンは今、式場探しに躍起になっている。
魔王の周りでは“何が起こるかわからない”ため、一応魔王室で読んでいたのだが。
「聞いてくれるか、ヤン。」
案の定、中断させられたのだった。
「はい。」
「私は・・・守桜さんと付き合っていて良いのだろうか。」
「・・・と言いますと?」
「ミクやフューは、父上がお決めになった婚約者・・・。もし私が守桜さんと結婚すれば・・・」
『結婚』と言ったところで、魔王がヤンの『ゼクシル』に、ちらっと目をやる。
「すれば・・・?」
「父上を慕う武闘派が反乱を起こすのではないか・・・とな。」
「・・・」
想像以上に込み入った話に、ヤンは戸惑ってしまった。
「しかし、魔王様。魔王様が人間界にくることに反対するものはいませんでした。」
「うむ。私を排するためだろうな・・・。人間の嫁をもらうということは、立派な理由になりうる・・・“罷免”するためのな。」
「・・・」
黙るヤンを前に、魔王はさらに続ける。
「魔族から嫁を選ぶなら・・・」
(魔王様・・・)
「武闘派にも影響力のある、フューだろうな。」
・・・
魔王室の窓のところで聞き耳を立てていたミクの目から、大粒の涙が零れ落ちた。
(アタシは・・・選択の対象ですら・・・ないのね。)
↑↑書籍化目指してます!クリックおねがいします!!
魔王のお見合い! 第七十六話『女子たちの日常!』
「10.13!せ、世界記録!?」
お茶の湯大学附属高校の。
体育の授業にて。
青髪の女生徒が、100M走で世界記録を叩きだした。
「あら。手加減しましたのに・・・」(まずかったかしら。)
「フューさん!」
ゴール地点で首を傾げるフューに駆け寄るのはクララ。
当人より焦っている。
「め、目立つようなことしたら・・・問題になっちゃうよ!?魔族の学校入学は認められていないんだから!」
「そ、それもそうね・・・」
フューの額に冷や汗が見えた瞬間であった。
「じゅっ・・・10.03!」
グラウンドに、新たな世界記録がこだました。
計測係の生徒は、腰を抜かしている。
「み、ミクさん・・・!」
「ふふふ・・・。氷神なんかに遅れはとらないわ。」(どうだ!)
たった今、歴史を塗り替えたミクが勝ち誇った笑みを浮かべる。
幸い教師がいない自習の授業だったため、クララが全員に口止めをして難を逃れた。
・・・帰り道。
フュー、ミク、クララは三人で帰るのが日課になっていた。
「もう!大変だったじゃない!」
文句を言うクララなど気に留めず、氷神と吸血鬼はにらみ合っている。
「アタシ、魔王府に寄るから。」
突然ミクが飛び立とうとした。
「なっ!行かせるものですか!」
フューが構えるより早く、ミクは空へ躍り出た。
「べーっだ!」
「きいい!何ですの?!あの吸血鬼!ジョン!追うわよ!」
フューが呼ぶと、近くの生け垣からジョンが這い出してきた。
「あ!ちょっと!」
もちろんクララの呼びかけに応じることも無く、二人は去っていった。
(・・・わたしも行こうかしら。)
↑↑書籍化目指してます!クリックおねがいします!!