「敗北から崩壊へ われわれを脅かすもの」(後半)ゲスト一樹さん
2025年11月14日(金)のAM7時30分~8時のインターネットラジオゆめのたね放送局ブルーチャンネル「あたりまえの世界」のアーカイブスです。ゲストは、一樹さんです。今週来週の話題は、先週に引き続き、エマニュエル・トッド (1951年5月16日〜 フランスの人口統計学者、歴史学者、人類学者)の最新記事「敗北から崩壊へ われわれを脅かすもの」からの後半です。一樹さんは、驚くことに世界のリーダー(エリート)が現実に起きていることを把握できなくなっているといいます。エマニュエル・トッドは、その根本的な原因、何をもたらしてきたか?この状況が続くとどうなるかを、恐るべき洞察力で明確に現しています。記事の締めくくりの言葉。「だからわれわれは自分自身でありつづけ、アメリカの外に留まろう。内と外への認識を、節度を、現実との接点を、正しく美しいものへの観念を保とう。ヨーロッパのわれわれの指導者ら──歴史に埋もれた特権階級であり、敗北に絶望し、いつか自国民に裁かれることを恐れる者ら──によって、戦争へと突進する流れの中に真っ逆さまに引きずり込まれることのないようにしよう。そして何よりも、何よりも、物事の意味について考え続けよう。」エマニュエル・トッド「敗北から崩壊へわれわれ を脅かすもの」後半 - あたりまえの世界 | stand.fm2025年11月14日(金)のAM7時30分~8時のインターネットラジオゆめのたね放送局ブルーチャンネル「あたりまえの世界」のアーカイブスです。 ゲストは、一樹さんです。 今週来週の話題は、先週に引き続き、エマニュエル・トッド (1951年5月16日〜 フランスの人口統計学者、歴史学者、人類学者) の最新記事「敗北から崩壊へ われわれ…stand.fm* 一樹さん翻訳の記事を↓に載せています。合わせてお聴きください。敗北から崩壊へ──われわれを脅かすもの(後半)エマニュエル・トッド戦争はヨーロッパの緊張を一段と高めた。ヨーロッパ大陸を貧困化させている。しかし何よりも、重大な戦略的失敗として、自国を勝利へ導く能力のない指導者たちの正当性を失わせた。保守的な大衆運動(これをジャーナリズムのエリート層は通常「ポピュリスト」あるいは「極右」「ナショナリスト」と呼ぶ)の発展が加速している。イギリスの改革党、ドイツのAfD、フランスの国民連合… 皮肉なことに、NATOがロシアの「政権交代」をもたらすと期待した経済制裁は西ヨーロッパに「政権交代」の連鎖をもたらそうとしている。ロシアの権威主義的民主主義が勝利によって正当性を回復する瞬間に、プーチン政権はロシアの安定を回復させたことによって、その揺るぎない正当性は保証されていたのだから、むしろ過剰な正当性を獲得しようとするまさにその瞬間に西洋の支配階級は敗北によって正当性を失いつつある。これが2026年に近づくわたしたちの世界だ。西洋の崩壊は「階級的分断」という形態を取る。合衆国はロシアに対する支配を放棄しつつあり、それは中国に対しても同様だとわたしはますます確信している。軍事航空機製造に不可欠な希土類元素[レア・アース]であるサマリウムの輸入を中国に遮断された合衆国はもはや軍事的に中国と対峙する夢すら抱けなくなった。インド・ブラジル・アラブ世界・アフリカといった西洋以外の世界はこの好機を利用し、離反しつつある。しかし合衆国は、過剰搾取の最後の試みとして、そして認めざるを得ないが、純粋な意地悪から、ヨーロッパや東アジアの「同盟国」に対して激しく牙をむいている。屈辱から逃れ、世界と自らに弱さを隠すため、彼らはヨーロッパを罰する。帝国は自らを食い尽くしている。トランプがヨーロッパ人に課した関税と強制投資の意味がこれだ。ヨーロッパ人は縮小する帝国のパートナーではなく、植民地民となった。リベラル民主主義国家が連帯する時代は終わった。トランプ主義は「白人ポピュリスト保守主義」である。欧米で起こっているのは、ポピュリスト保守主義者間の連帯ではなく、内部連帯の崩壊だ。敗北による怒りが、各国を、その憤りを晴らすために、自国より弱い国々に対して敵対させる方向に導いている。合衆国はヨーロッパや日本に敵意を抱き始めている。フランスは旧植民地であるアルジェリアとの紛争を再燃させている。ショルツからメルツに至るまで、合衆国に従うことに合意したドイツが、その屈辱をヨーロッパの弱小パートナー国に向けて発散することは間違いないだろう。私の母国であるフランスが脅威に最もさらされているようにわたしには思える。西洋の敗北における根本概念の一つはニヒリズム[虚無主義]である。プロテスタント宗教の「ゼロ状態」、すなわち世俗化の究極形態がアメリカ教育と産業の崩壊を招いたことをわたしは解説する。それだけでなく、さらに形而上学的虚無を開くことを論じる。私は個人的に信仰者ではなく、宗教への回帰を提唱するつもりもない(それが可能だとは思えない)。しかし歴史家として指摘せねばならないのは、宗教に由来する社会的価値の消失が道徳的危機を招き、物や人間を破壊する衝動(つまり戦争)へとつながり、最終的には現実そのものを否定しようとする試み(例えば、アメリカ民主党におけるトランスジェンダー現象や共和党における地球温暖化否定論など)に至るということだ。この危機は完全に世俗化された全ての国に存在するが、カトリック教のように世界の美や地上の生活に開かれた宗教よりも、超越性を求める絶対主義的宗教であるプロテスタント主義やユダヤ主義が支配的だった国々でより深刻である。実際、伝統的宗教のパロディ的形態の発展が見られるのはアメリカとイスラエルであり、私の見解では、それらのパロディは本質的にニヒリズムに帰着する。この非合理的な特質こそが敗北の核心である。したがってこの敗北は、単なる「技術的」な権力喪失ではなく、道徳的消耗、すなわち積極的な実存的目的の欠如であり、それはニヒリズムへと至る。このニヒリズムこそが、特にバルト海沿岸のプロテスタント諸国に顕著に見られるように、ヨーロッパ指導者らが絶え間ない挑発を通じてロシアに対する戦争を拡大しようとする欲望の背景にある。ニヒリズムはアメリカが中東を不安定化させる背景でもあり、それはロシアに敗北したアメリカが生み出した怒りの究極的な表れである。何よりも、イスラエルのネタニヤフ政権が、ガザにおけるジェノサイドやイラン攻撃において、独立して行動しているという過度に単純化された結論に陥ってはならない。ゼロ・プロテスタント主義とゼロ・ユダヤ主義は、暴力の爆発において、そのニヒリズム的な影響を確実に悲劇的に結びつけている。しかし中東全域において、武器を供給し、時には直接攻撃を加えることで、この混乱の究極的な責任を負っているのは合衆国である。合衆国はイスラエルを行動へと駆り立てる。ウクライナ人を駆り立てたのと同じように。合衆国大使館がエルサレムに設置されたのは第一次トランプ政権のときだった。ガザを海辺のリゾート地へと変貌させる構想を最初に描いたのもトランプだった。この命題を証明するには一冊の本が必要だと承知している。その本は諸国の相互作用を一つ一つ解体することになる。しかし、半世紀にわたりジオポリティックス[地政学]に携わってきた専門の歴史家として、イスラエルもNATOヨーロッパと同様に独立国家としての存在を終えたと感じている。西洋の問題はまさに国民国家の予定された死である。帝国は広大であり、騒音と怒号の中で崩壊しつつある。この帝国はすでに多中心的で、目標において分断され、分裂症的である。しかし、そのどの部分も真に独立してはいない。トランプは現在その「中心」であり、同時にその最良のイデオロギー的・実践的表現でもある。彼は直属の支配圏(ヨーロッパとイスラエル)への撤退という合理的な欲求と、戦争を好むニヒリズム的な衝動とを併せ持つ。この二つの傾向——撤退と暴力——は帝国の中心であるアメリカ本国においても顕在化しており、内部では階層的分断の原理が作用する。イギリスとアメリカの作家たちの間で、内戦の到来を予見する声が高まっている。アメリカの金権政治は多元的である。金融界による金権政治、石油業界による金権政治、そしてシリコンバレーによる金権政治が存在する。トランプ派の金権政治家、テキサスの石油王、そして最近シリコンバレーに転向した者たちは東海岸の教養ある民主党エリート層を軽蔑している。その民主党エリート層は中西部出身の白人トランプ支持者を軽蔑し、白人トランプ支持者は黒人民主党員を軽蔑している。このように軽蔑が連鎖してゆく。今日のアメリカにおける興味深い特徴の一つは、南からの移民を壁で阻止しようとするMAGA(アメリカを再び偉大に)の試みにもかかわらず、指導者らが内政と外交の区別をますます困難に感じていることだ。軍はベネズエラから脱出する船団に発砲し、イランを爆撃し、国内の民主党支持都市の中心部に進出し、巨大な米軍基地が存在するカタールへの攻撃のためにイスラエル空軍を支援している。SF読者なら誰でもこの不穏なリストの中にディストピアへの転落の始まりを見出すだろう。つまり、権力・分断・階層・暴力・貧困・倒錯が入り混じった負の世界への転落である。だからわれわれは自分自身でありつづけ、アメリカの外に留まろう。内と外への認識を、節度を、現実との接点を、正しく美しいものへの観念を保とう。ヨーロッパのわれわれの指導者ら──歴史に埋もれた特権階級であり、敗北に絶望し、いつか自国民に裁かれることを恐れる者ら──によって、戦争へと突進する流れの中に真っ逆さまに引きずり込まれることのないようにしよう。そして何よりも、何よりも、物事の意味について考え続けよう。2025年9月28日。パリにて。訳/一樹──────The dislocation of the West: what threatens usEmmanuel Todd, Oct 06, 2025https://substack.com/home/post/p-175377338