Cooke Speed Panchro 18mm F1.7を手に入れた。
35mmフォーマット35mmムービースタンダードフォーマットにして17mmの超広角。しかもF1.7という明るさのモンスターレンズである。(35mmムービースタンダードフォーマット≒APS-C)
このモンスターをはじめとしてラインナップがほぼ銘玉という超エリート集団CookeSpeedpanchroについて書いてみたい。
Taylor&Hobson社といえば、イギリスを代表するレンズメーカーである。
中でもCooke Tripletはレンズ設計の歴史を変える画期的な発明であった。
そのTaylor&Hobsonが1927年に設計した35mmシネ用レンズがCooke Speed panchroである。
Panchroが誕生したきっかけはトーキー映画にある。
1927年までは映画はいわゆるサイレントと呼ばれる無声映画であった。音声が後付のサウンド版というものもあったが、台詞はしゃべらなかった。
しゃべる映画いわゆるトーキーが登場したのは1923年のことである。
トーキーによる最初の本格的な長編映画は1927年に公開された『ジャズ・シンガー』(ワーナーブラザーズ)である。で、このときに問題になったのが同時録音時の騒音である。
現代においても同時録音(以下同録)時の騒音は一つの問題でドラマのロケなどの際に救急車やヘリコプターなどの音が入ってしまったためリテイクになることは良くある。
当時映画に使われていた照明はアークランプで発光時に騒音を伴った。そのためトーキー映画の撮影には明るいアークランプが使用できなかった。
しかもトーキー映画ではフレームレートの増加によりさらに露出が暗くなった。
これらの問題により製作側は明るいレンズにより問題を解決しなければならなくなった。
そのときに選ばれたのが1920年に発明されていた『OPIC』レンズである。OPICはF2の明るさを持ち、製作側の要求を満たしていた。
Taylorホブソンは製作側の要請にすばやく対応しそのときに生まれたレンズが『Cooke Speed panchro』である。
確かな記録は見つけることが出来なかったが58mmF2のレンズはこの時代のいわゆるSeries0であると思われる。
つまり『OPIC』と『Panchro Serise 0』は同型の兄弟レンズということになる。
確かにCookeのHPでは初代『Panchro』のことを"Series0"と読んでいるが『OPIC』も"Series0"と呼ばれている。
この映画用『OPIC』はCookeSpeedpancroとして映画界で不動の地位を築いてゆく。
1930年にBell&Howellのeyemo用にCooke Speed Panchro SeriesⅠが登場する。
ラインナップは24mm/28mm/32mm/35mm/40mm/50mm/75mm/100mm/108mmである。
1935年にはスタンダードフォーマット(0.631X0.868inch/15.7mmX21.7mm)に対応したSeriesⅠが登場する。
Cooke Speed Panchro 50mm F2
ラインナップは24mm/28mm/32mm/35mm/40mm/50mm/75mm/108mmである。こちらはいろいろなマウントが存在する。
1945年にはGordonCookによりカラーに対応し高解像度化されたSeriesⅡが登場する。
SeriesⅡはコーティングされ新フォーマット(0.723X0.980inch/18mmx24.5mm)に対応している。
Cooke Speed Panchro 40mm F2
こちらのラインナップは18mm/25mm/32mm/40mm/50mm/75mmで1946年に100mmF2.5のDeepfieldも登場する。この時代にはHollywoodをはじめとする映画製作の現場の多くがPanchroを採用し映画製作に欠かせないレンズとなる。ちなみにSeriesⅡの18mmはレトロフォーカス発明前のレンズということでその設計が気になる。
1950年にピエールアンジェニューによりレトロフォーカスが発明されると、Speedpanchroもレトロフォーカスを採用する。
それが1954年に登場したSeriesⅢである。
SeriesⅢは18mmと24mmをレトロフォーカスとして再設計したモデルで設計者はⅡ型と同じくGordon Cookである。
このときに誕生したのが今回のレンズ18mmF1.7のようだ。
資料には画角80度の18mmF1.7とある。今回購入したレンズも明らかにレトロフォーカスの設計なのでこの資料に出てきたレンズである可能性が高い。
ただ、Serという表記はどこにもないため正確なシリーズは分からない。eBayなどではSerⅡという表記を見かけるが、この資料のレンズがこのレンズであれば、SerⅢということになる。ただレンズの外観からはSerⅠにも見える。
SeriesⅢにはこのほかに18mmF2が存在していて、こちらにははっきりとSerⅢと刻まれている。
この辺は今後も引き続き調べて行きたい。
で肝心の写りであるが
絞り開放で寄ったときのソフトさと引いて絞ったときの描写は別人である。
こんなに豹変するレンズは少ないのではないだろうか?
シャープで階調も豊かである。そのため逆光時でもシャドウ部もハイライト部も描写する。
諧調が豊かなのに写りがねむくならないのも特徴である。
今回はアートフィルターなどは使っていないが十分にこってりとした発色なのが興味深い。
日本橋の風景が一瞬海外に見えるのは街のせいか?レンズのせいか?