いかなるときも我々の理性を吹き飛ばしうっかり大金を払わせてしまう『ぼけ』という魔物。
普段はレンズの中に潜んでいて写真を撮ったときに現れて人の心を惑わす。そんな恐ろしい『ぼけ』について考えてみようと思います。
人類は大きく分けて2つのタイプに分けられます。『ぼけ』に惑わされるひとと、そうでないひとです。
そうでない人は人類の大多数を占めています。彼らにとっては『ぼけ』とは見えてないに等しい存在です。
一方『ぼけ』に惑わされる人は日常の大半を『ぼけ』に支配されてすごします。そして気に入った『ぼけ』に出会ってしまったが最後、どんな手段を用いてもその『ぼけ』を手に入れようとします。
そんな風に人を魅了し時には破産寸前まで追い詰めてしまう恐ろしい『ぼけ』の正体とはいったいなんでしょう?
普段『ぼけ』は写真の被写体の周りの部分に発生します。これは通常、余白にあたり気にすべきところではありません。しかし『ぼけ』に取り憑かれた人々にはここしか見えていません。
いったいどんなものが見えているのか、解説していきたいと思います。
ぐるぐる
放射
2線
きらきら(口径食)
崩壊
バブル
なだらか
フレア
ゴースト
虹
大まかに上記のとおりです。
まずは
『ぐるぐる』。
この『ぼけ』の特徴ですが、背景がぐるぐるして見えます。
目が回ってしまうほどの強烈な回転は被写体の存在感を打ち消してしまうほどです。
主にキノプラズマートやエルジート、クックのキニックやビオターなどに住んでいます。
とり憑く力が弱いためごく少数の人にしかとり憑きません。
次に『放射』。
これは画面を中心に漫画の集中線のようになってます。このぼけはイメージサークルの小さいレンズが大好き。Cマウントやシネ系のレンズ、初期のズームレン
ズに見られます。このぼけが潜んでいるレンズは周辺部が使い物にならなくなります。SWIITAR25mm F1.4 RXなどに見られます。
『二線』。
このぼけはシャープなレンズに潜んでいます。シャープでカリッと写るレンズに潜んでいて、近接で撮影するときに現れて悪さをします。このボケが出現すると
ざわざわと背景がうるさくなります。初期のXenon5cmF2やNikkor-H 5cm F2などに良く見られます。
『きらきら』
このぼけは古いレンズが大好き。しかも人を惑わせる力もとても強いです。
そのためこのぼけが潜んでいる古いシネレンズはとても高値になります。
しかし不思議なことにCanon EF 50mm F1.8など新しいレンズにも潜んでいます。不思議ですね。
『きらきら』が潜んでいるレンズには『ぐるぐる』も共存していることがあります。
Kinoptik Apochromart 、Kern Switar、Cooke Speeedpanchro、Angenieux、などに潜んでいます。
とてもとり憑く力が強いので要注意です。とり憑かれてる人には近づかないようにしましょう。
『崩壊』
この『ぼけ』は開放の近接時に被写体をグチャグチャにします。F1.2より明るいレンズのほとんどに生息しています。たまにそれより暗いレンズにも生息し
ていますがF2より暗いレンズには住み着くことが出来ません。F1.2より暗いレンズではPrimoplan 58mm
F1.9やAuto-Quinon 55mm F1.9に生息しています。
このレンズにとり憑かれると症状が重篤化しやすいので要注意です。有効な予防法、治療法が確立されておらずかなりの確立で破産します。唯一有効なのはカメラ店やネット環境からの隔離ですが家族の協力が必須です。
『バブル』
Meyer-Optikというレンズメーカーのレンズに多く生息するボケで最近分類された新種の『ぼけ』です。Trioplan 100mm
F2.8でその姿を確認されて以来続々といろんなレンズで確認されるようになりました。Trioplan 50mm
F2.9やPrakticar50mmF2.4などにも生息しています。ただ古いレンズを嫌うようでTriopalnでも1930年代のものからは確認さ
れていません。この『ぼけ』も開放を好むようで絞ると姿を消します。まだ生態が謎に包まれている『ぼけ』です。
『なだらか』
写真用レンズがこの世に誕生して1世紀近くたった1976年。人類はついに『ぼけ』を手なずけることに成功した。カールツァイスとヤシカが共同で開発した
Planar50mm
F1.4は住み着いた『ぼけ』を無害化することに成功しました。このレンズに住み着いた『ぼけ』は『なだらかなぼけ』に変化しどんな被写体にもマッチしま
す。しかもこの『なだらかなぼけ』は写真を美しく引き立てます。これ以降この『ぼけ』が無害化するレンズの開発競争が各社で起こります。中でも旧ミノルタ
(現ソニー)のSTF(SmoothTransferForcus)はどのピント位置でも前ボケ、後ボケともに『なだらか』になる最高峰の技術です。
ただこの技術の誕生によりレンズの写りの均一化がおこりこの反動として『ぼけ』にとり憑かれる人が現れ始めました。『ぼけ』を無害化した結果一部の人が『ぼけ』にとり憑かれるという皮肉な現象が生まれました。
『フレア』
この子は厳密にいうと『ぼけ』の仲間ではないのですが、人を惑わしたりするところは『ぼけ』そっくりです。
主に戦前の古いレンズやフランスレンズ、大口径レンズに潜んでいます。コーティングが苦手でコーティングされたレンズに潜むことが出来ません。よく『くも
り』と混同されますが『フレア』は新品の頃からレンズに潜んでいるので古いレンズを選んで住み着く『くもり』とは違います。
戦前レンズ全般、Angenieux、Som Berthiot、F1.2より明るいレンズなどに潜んでいることが多いです。
『ゴースト』
『フレア』と同じく『ぼけ』とは違う種族。
『フレア』より出たがりで画面上にしばしば登場します。被写体の上にかぶって出ることもあるので、カメラマンに嫌われたりしている。カメラメーカの根絶運
動により生息数が激減している。フィルムカメラ時代は手なずけることが極端に難しく忌み嫌われていたが、デジタル時代に突入して手なずけることが容易に
なった。
そのため最近ではこの『ゴースト』に魅入られる稀有な人も現れつつある。
EF28-80mm F2.8-4L、オールドレンズ全般
『ニジ』
『ニジ』はゴーストと同じ種族なので『ぼけ』とは違う種になる。
ある特定のレンズに好んで住み着く。強い光が大好きでレンズに強い光が当たると姿を現す。
放射状のものや円形のものがいる。きれいな虹状であるが出たがりで被写体の前に出てくる。少し困ったやつである。Super-Takumar 58mm F1.8やPENTACON 50mm F1.8などに住み着いている。
このように『ぼけ』にとり憑かれた人たちはこういったものが見えています。
ひどくなると写真も撮らずにカメラの背面液晶をながめて満足するようになります。こうなるとレンズ廃人へとまっしぐらに進むことになります。
こういった症状への対抗策は唯一、純正レンズ以外には決して手を出さないことです。
レンズアダプターという甘い誘惑は毒です。
その恐ろしさを理解して手を出さずにいれば快適な写真ライフが送れると思います。
※個人の見解です。『ぼけ』という魔物の存在は科学的に実証されていません。