シネレンズとオールドレンズで遊ぶ! -3ページ目

シネレンズとオールドレンズで遊ぶ!

カメラマンヨッピーのブログ。シネレンズやオールドレンズなどのマニュアルフォーカスレンズをミラーレスカメラに装着して遊び、試写を載せていきます。カメラ界でまことしやかに語られているうわさも再考察していきます。

『オールドレンズのためのポートレートライティングワークショップ』やたらと長い名前になってしまったこのワークショップ。初開催にもかかわらず定員の5名の方に参加していただきました。有難うございます!!


ライティングの基礎などの座学から


実際の撮影体験まで


濃密な5時間でした!!


撮ったその場でデータをチェックしてもらい、ライティングによる写りの差を体験していただきました!














どのライトが、どのセッティングかは受講者のみにわかります!!
好きなライティングを見つけるきっかけになればと思います。
徐々に複雑なライティングになってます!!




オールドレンズの醍醐味、ハレーションを活かしたフォトセッションです。


定常光とストロボのミックス光。この日の完成形のライティングです。

また近々開催予定です。興味のある方のご参加お待ちしています!!

http://raylow3310.wix.com/oldlensphotoschool







2016年5月15日(日)に『オールドレンズの為のポートレートライティングワークショップ』を開催します。
オールドレンズを使ったスタジオでのポートレート撮影をレクチャーするワークショップです。
定員5名で丁寧に基礎からライティングをレクチャーします。最後にモデルさんを使った撮影体験もできます。
ライティングは初挑戦のかたも大歓迎です。興味ある方は下記申し込みフォームよりお申し込みください。

まもなく定員になります。残りあとわずかです。



日時:2016年5月15日(日) 12:00~17:00
場所:STUDIO Godsam(スタジオゴッサム) 東京都目黒区鷹番3-16-8浜崎ビル2F
定員:5名
受講費:8.000円
講師:上野由日路
モデル:眞野里紗
申し込みフォーム:http://raylow3310.wix.com/oldlensphotoschool#!bl





KINO PRECISION KIRON 28mm F2 近接時の放射状のバブルボケがこのレンズの最大の特徴だ

木野精密工業(KinoPrecisionIndastories,Limited)といえば国内での知名度は低いが、アメリカではVivitarのOEMやKIRONの成功で有名なレンズメーカーである。1959年に創業したKinoPrecisionIndastories,Limitedは当初8mmカメラ用のレンズを生産をしていたが1965年頃から35mmスチールカメラ用のレンズ生産も手がけるようになる。1971年代には米国のカメラブランドVivitarの中でも最高級シリーズのVivitar Series 1のOEMも手がけ米国の評価を獲得していく。
木野精密工業は1980年に満を持して自社ブランド「KIRON」を立ち上げる。Vivitar Series1銘で好評を博したマクロレンズ105mmF2.8を筆頭に28mmF2、24mmF2などの短焦点やズームレンズなどを取り揃えていた。KIRONの商品ラインナップの多くは、スペックからもわかる通り、高性能路線であった。105mmでF2.8の明るさを持った等倍マクロレンズやF2クラスの広角レンズ群は現代においてもハイスペックレンズに位置付けられる。


米国内での広告戦略も功を奏し 「KIRON」ブランドは一気に米国内での知名度を上げる。これに伴い海外での販売を軌道にのせたキロンブランドであったが、世界的なレンズの低価格化とオートフォーカス化の波に呑まれ1989年にはカメラレンズの生産から撤退した。

わずか9年の販売期間であったがその性能は多くのレンズマニアに支持され、海外では今だに高価格で取引されている。しかし残念なのは国内での認知度は低く、その他多くのサードパーティメーカーと同じ扱いを受けていることである。

手にしてもらえるとわかるがこのレンズ非常に良く出来ている。鏡胴のしっかりとした金属感、スムースなヘリコイド、かっちりとした刻印、そして独特なレンズ設計。












実はこのレンズAi NIKKOR 28mmF2.8sとそっくりの構成をしているが、こちらのレンズのほうが設計は古い。その反面NIKKORのほうはフローティングで空気間隔が変化する設計になっている。フローティングなしでしかも開放値をFまで稼いだことが放射状のバブルボケという特徴的な描写につながったのではないかと予想される。この描写は同じVivitar28mmF1.9でも見られるがそれ以外のレンズであまり見かけることはない。


放射状のバブルが良くわかる!

中心はシャープで発色も良い











しかし遠景ではピシッとシャープに写る

遠景でのシャープでピシッとした写りはある意味国産レンズらしい。
国産レンズは外国産レンズに比べて個性が弱いという印象があるが、こんな個性的なレンズがあるのはうれしいかぎりである。
仕事で高崎を訪れた。以前訪れたときに見つけた「オリオン座」という廃墟の映画館を思い出し最近入手したTrioplan4cmF2.9をα7に着け「高崎中央銀座商店街」を訪れた。


商店街に続く道はすっかりオシャレになっています。

入り口のガラスの質感がたまりません。

懐かしい風景です。



屋根のないアーケード かっこよすぎです!

オリオン座

歴史の刻まれた存在感のある外観です。

最後に上映した映画でしょうか?

写真にとどめておきたい日本の風景です。

TrioplanはMeyer Gorlitz社のトリプレット。トリプレットとは3枚で構成されたレンズでCooke社のデニス・テイラーが1893年に発明した。写真用レンズとして実用的な性能を持つレンズとしては最小構成のトリプレットは当時大きな驚きをもって迎えられた。その後CarlZeissのパウル・ルドルフとヴァンダースレブが設計したテッサー(4枚レンズ)が市場を席巻すると世の中の写真用レンズは軒並みシンプルな構成になっていった。

トリオプランはこのCookeトリプレットの構成と同じ構成を採用している。トリプレットの特徴は中心部の高い解像力にある。その反面周辺部の描写能力は低い。周辺部も高い描写力を持つテッサーにシェアで敗れたのもこの辺りが原因であると思われる。

しかしトリプレットが時代遅れのだめなレンズかと言えばそうではない。中心部の解像力は最新のデジタルカメラで使っても何の不自由もないくらいに高い。しかしシンプルな構成の為非常に素直な写りをする。諧調が豊なので収差が強くなってくる周辺部も気にならない。かえって周辺部の写りの危うさがノスタルジックな雰囲気を醸し出すのだ。特にトリオプランの40mmはその周辺部の崩壊が顕著だ。40mmというやや広角目の画角でF2.9という明るさを実現するために無理をしたのであろう。しかしその無理がこのレンズの魅力になっている。

このレンズの写りはちょうど古い記憶のような風合いを持っている。少し懐かしい風景にぴったりのレンズである。




4月10日にお世話になっているオールドレンズ専門ショップのNOCTOと『古民家スタジオで撮るオールドレンズ+和モデル』というイベントを行う。
普段オールドレンズでポートレートを撮る機会があまりないので、あえてオールドレンズ縛りのポートレート撮影イベントをやってみようというのがきっかけで今回が第3弾になる。

α7 RE Auto-TOPCOR 58mm F1.4 M42改(NOCTO製)
初回開催のロケハンのときに撮った写真です。

オールドレンズの味を活かすために古民家というシチュエーションもこだわった。イベント会場の「スタジオ イシワタリ」は本当の古民家をスタジオとして提供してくださっている場所だ。やはりそこで人が生活していた気配が残っていて形だけ真似たスタジオとは仕上がってくる写真の重みが異なる。
当日は和装のモデルさん3人に登場していただく。
ゆなさん

NAOKOさん

のどかさん

の3名だ。三名とも和装が似合いそうなので楽しみである。
今回の撮影イベントは写真好きのためのスローな撮影イベントなのでポートレート撮影経験のない方やオールドレンズでのポートレート撮影経験がない方でも気軽に参加できる。
また主催である「ブリコラージュ工房NOCTO」さんがレンタル用レンズも提供してくれるので新しいレンズを試す場としてももってこいだ。まだ僅かながら空きがあるようなので興味がある方は是非下記リンクまでお問い合わせいただきたい。
ポートレートであなたのお気に入りのレンズの新しい一面を発見できるチャンスですよ!

古民家スタジオで撮る『オールドレンズ+和モデル』イベントページ
https://www.facebook.com/events/1796141677280114
Recoilの松尾さんよりハイグリップケースが出来上がったとの連絡があった。
ハイグリップケースを使うことでカメラのグリップ性が飛躍的に向上することをOLYMPUS PEN E-P3で実感していたので今回も無理を言ってSONY α7用のハイグリップケースの作成をお願いしていたのだ。
今回は特にケースに取り付けねじを組み込んでいただいた。これによりケースの脱着がスピーディーに行える。今回無理を言ってさらにねじ込みを浅くしてもらった。このことによりさらに少ない回転数でケースを取り外すことができる。バッテリーとSDカードを交換する際にその微妙な差が撮影を快適なものにするのだ。
その出来はすばらしいの一言。カメラの存在感が一気に上がります。

ケース上部は黒くそこからだんだん明るくすることでカメラとケースの一体感がある。
グリップ部分は少し手の型のように見えるエイジング仕上が施されている。


取り付けねじは内蔵式なのでコインがなくとも脱着が可能。ねじはぎりぎりまで少なくしてもらっている。これによりスピーディーな電池交換が可能になる。


使用されている革は通常のものより繊維の詰まった肉厚で強靭な一枚革『ヘビーウエイトレザー』。


独自技術の特殊加工で成型された革はカメラの曲線部にぴったりと寸分の隙もない作りになっている。やや細めの印象のあるα7のグリップだがヘビーウエイトレザーの厚みでハイエンド一眼レフ並みのグリップ厚になっている。これにより人差し指が無理なくシャッターボタンに当たる。同時に親指がAF/MFボタンに当たるのでここに拡大表示を割り当てた。オールドレンズを使う際に拡大表示はピントあわせの生命線になるのでこれは助かる。

今回わがままを言ってフロントのカットラインも曲線にしていただいた。

フロントの美しいラインはお気に入りだ。

現場でカメラを使う際にもっとも大事なことは、その機材にどれだけ愛着があるかということだ。
特にモデルと1対1で対峙するポートレート撮影では撮影側も精神力を試されることが多い。
愛着がある機材であればあるほどここぞという時の踏ん張りが利くのだ。


ハイグリップ部分の中には革靴の靴底に使われる革が使われている。

そのこだわりもこのケースの魅力の一つだ。

ハイグリップのおかげですべての指でがっちりホールドができる。このわずかな差により手振れが激減した。


すばらしい機能とハイセンスの外見を備えたRecoil のレザーケースは撮影に欠かせないマストアイテムである。

Recoil HP:http://www.recoil-ms.com/



Arriflex Cine Distagon 16mm F2 が我が家にやってきた。
久々のArriflexマウントレンズだ。


Arriflex35用のレンズなのでAPS-Cをカバーします。α7の全画素超解像では×1.4で使えます。少しだけケラレるがいい味でます。22mm相当の画角です!



ものすごい再現性です。

強烈なワイド感もあります。それなのに歪曲収差をほとんど感じません。どこまでも直線です。
 
このレンズの真骨頂は解像力。一見普通の写真ですが

拡大すると信号機の中にある鳥の巣までばっちり写ってます。

解像力と階調があるのでみっちり詰まった感じの写りです。

ハレーションにもきわめて強く

逆光も難なく写します。

夜景ももちろんバッチり。

白の中にもトーンがあります。
現代の広角レンズと比べても全く遜色のないどころかこのレンズを超えるレンズがあるか疑問です。
長いレンズの歴史の中でも最良の一本ではないかと思います。

その反面カールツアイスのシネレンズにありがちなのですがアソビが少なくぱっと分かる個性の少ないレンズです。どこまでも当たり前によく写るレンズです。


シリアルナンバーから1960年代後半から1970年代初頭ごろに生産されたレンズです。当時は100万円を越える超高価なレンズだったそうです。

このレンズ実はものすごい重量です。
ヤクルトジョア位のサイズにして500g弱。ヤクルトが500mmペットボトルくらいの重さと考えると違和感が分かると思います。鉄の塊のような重さです。ガラスにたっぷり重金属が溶け込んでいる証拠です。
現在では様々な規制に引っかかり作れないのではないかと思います。

1970年代といえばツアイスイコンが写真事業から撤退し、カールツアイスブランドのレンズが徐々に日本で生産されるようになる時代ですが、長年培われたカールツアイスのレンズ作りのノウハウはこういった少量生産のシネレンズなどに凝縮されているんだと思います。

カールツアイスの絶頂期のきらめきが体感できるすばらしいレンズです。




前編で紹介した工場の情報から一言にロシアレンズといっても広大な旧ソ連各地で作られていたことがわかる。同じ商品をいろいろな土地で同時平行的に長い年月作り続けているところがいかにも社会主義国らしい。ちなみにヘリオス44シリーズの基礎設計は50年以上変更されていない。


左から Helios-44-2(バルダイ光学機械工場)、Helios-44(
ミンスク機械工場)、MC Helios-44M-7(バルダイ光学機械工場


まずはHelios44
から。

Helios-44【ミンスク機械工場】

初期のヘリオス44でM39マウント。ロシアカメラには国内向けと海外向けが存在する。その差は分かりやすく海外向けは銘板がアルファベットで国内向けは キリル文字で書かれている。この個体は海外向けらしくアルファベット表記だ。このレンズのシリアルは50から始まる。ロシアレンズの定説で言えば先頭二桁 は生産年を示すが1950年にはヘリオスはおろかBTKやミンスク機械工場自体も存在していないためここの部分は謎である。

構成はビオターとほぼ同じ(M42 Mount Spiral に詳細が出ている。)でシングルコートが施されている。






M39マウントはM39-M42アダプターでM42化している。
コーティングが未熟な分、ハレーションも出やすい。写りの線が細い反面中心解像力は高く、絞り込むとさらに解像力は上がる。


Biotar譲りのグルグルが見て取れる。

背景はややざわつくがいい意味でオールドレンズらしい。

逆光時はハレーションが起こるが嫌味のない素直なハレーション。
順光時の発色は自然で階調も豊かだ。森の部分の日のあたり方が良く分かる。ややねむく見えるのこの豊かな階調のせいだ。


Helios-44-2【バルダイ光学機械工場】

ヘリオス44の後継モデル。M42化されていてボディーも黒塗りに変更。ロシアらしい紫のコーティング。外観としては刻印がカラフルになった。







鏡胴の刻印の印象がかなり変わっている。

青紫色のコーティングの色がロシアンレンズらしい。

ぐるぐるは初代ヘリオスとあまり変わらない。

発色もコントラストも高くなっている。ヌケがややいい感じ。

初代や最終型と違いややクールトーン。

写りに申し分はない。構成もビオターコピーなら硝材もビオターのコピーのようだ。いい硝材を使っている。



MC Helios-44M-7【VALDAY/バルダイ光学機械工場】

ヘリオスの最終型。マルチコートタイプになりレンズデザインも現在っぽくなった。透過率、解像力とももっともいい44M-7だ。

一気に近代的なデザインになりました。

刻印もシルク印刷。

やや控えめな色のマルチコート。

刻印の色は2代目を踏襲してる。



このカットは3枚とも驚くほどよく似ている。

3枚の中でもっとも鮮やか。MCが効いいるようだ。

少しアンバー寄りの写りです。

抜け感は3本中トップだ。


写りを比べてみると










色調はHelios-44-2のみクールトーン。

逆行条件でも比べてみた。

上がシングルコートのHelios44、下がマルチコートのMC Helios-44M-7。
上のほうが均一にハレーションのベールが覆っている。一方したの写真は画面の場所によりハレーションにムラがある。帯の部分のヌケは良いがその下ではかえってハレーションが悪化している。

上は全体にハレーションが覆っている。ややヌケが悪いが雰囲気はある。
下のMCの写真はヌケが改善して発色が良くなっている。
こういった写りは個人の好き嫌いになってくるが、個人的にはシングルコートのHelios-44が好みである。

同構成のレンズのため僅差であるが、ハレーションのベールを出したいならHelios-44。クールトーンがお好みならHelios-44-2,逆光時のヌケを求めるならHelios-44M-7をチョイスすると良いようだ。












ロシアレンズの2枚看板は「ジュピター」と「ヘリオス」。中でもジュピター9とヘリオス44の人気は根強い。
これらのレンズはどちらも周知の通りドイツのカール・ツアイス社のレンズのコピー品だ。しかしただのコピー品であればこれらのレンズがここまで人気を獲得することはなかったのではないかと思う。

ジュピターシリーズは主にカールツアイス社のルードビッヒ・ベルテレが発明したゾナーやビオゴンのコピーとして知られている。これらは1945年の第二次世界大戦におけるドイツ敗戦時に旧ソビエト軍に戦利品として接収されたものがベースになっている。これに関しては詳細な記録が残っていて同時に接収されたContaxⅡとContaxⅢもKiev(キエフ)として旧ソ連が生産を続けることとなる。一方西ドイツのカールツアイス社はContaxの工作機械を喪失してしまったことにより生産不能に陥り、ContaxⅡa,ContaxⅢaを再設計する必要に迫られた。

一方ヘリオス44はBiotar58mmF2のコピーレンズとして知られているがいつごろ誰によってコピーされたかは不明である。ヘリオス44はカール・ツァイス社のビオター5.8cm F2 (キネ・エキザクタ用)をモデルに設計されているというのが定説である。
旧ソ連では1950年ごろにクラスノゴルスク機械工業(KMZ)BTK(Biotar Krasnogorsk/ビオター・クラスノゴルスク)という試作品が作られている。ドイツの敗戦より1年前後は事実上の特許無効期間があり世界中の国々がドイツ製品を模倣した。この期間にヘリオスもコピーされたという説もあるが、実はロシアに存在するレンズカタログには古今東西のレンズと同構成のものが多数存在する。これらが本当に生産されたかどうかは不明であるが、そもそも当時のソビエトには特許という概念が希薄だったようだ。

その後BTKはHelios-44となりZenit用のレンズとして1950年代にリリースされる。当時のマウントはM39と呼ばれる特殊マウントで口径はライカLと同じ39mm径、フランジバックはM42とほぼ同じ45.3mmである。その後ZenitのマウントはM42に仕様変更になる。それに伴いヘリオス-44-2以降のマウントはM42になる。

ZenitのHPによるとヘリオス44には初代のHelios-44をはじめ以下のモデルが確認されている。

Helios-44          
Helios-44-2        

Helios-44M      
Helios-44M-4
Helios-44M-5
MC Helios-44-3
MC Helios-44-3M
MC HELIOS-44M-4   
MC HELIOS-44K-4
MC HELIOS-44M-5
MC HELIOS-44M-6
MC HELIOS-44M-7

これ以外も派生型があるようだ。各モデルによって鏡胴のデザインやコーティングの種類、透過率、解像力の違いがあるようだが基本的なレンズ構成は同じだ。

ロシアレンズの特徴に刻印がある。工場ごとにオリジナルの刻印が押されているのだ。ロシアの光学工場は時代によって役割が移り変わるので同じが色々な工場で作られている。主な工場の刻印を挙げてみた。


KMZ・・・クラスノゴルスク機械工業(S・A・ズヴェーレフ記念クラスノゴールスク工場)


キエフやゼニットといったロシアの代表的なカメラを開発、生産している。KMZで設計されて他の工場で生産というレンズも多く見られる。



LOZS・・・リトカリノ光学ガラス工場

光学レンズ専門の工場。Jupiterシリーズの多くがここで生産されている。





MMZ/BelOMO ・・・ミンスク機械工場/ベラルーシ光学機械合同

ミンスク機械工場は1957年に設立された。スメナ-2などの生産で知られる。またこの刻印はZENITボディーやHeliosレンズなどにも良く見られる。1971年にBelOMO社となった。今回のHelios-44もこの工場の製品。
現在もZENIT-BELOMOとして稼動しておりライフルのスコープなどを生産しているようだ。


ARSENAL・・・アーセナル・国営工場アーセナル

ウクライナの首都キエフ市内に位置している。アーセナルは兵器工場の意味で兵器工場として創設された。1917年ごろから光学製品の生産を開始しCONTAXⅡ、CONTAXⅢのソビエト版であるKIEVを生産していた。その後レンズ生産も開始する。ロシア版ハッセルのサリュートやロシア版ペンタックス6×7(ペンタコンシックス)のキエフ6なども生産している。キエフシリーズにはキエフ10シリーズなどオリジナリティーあふれるものも多くロシアンカメラの1時代を担った。


VALDAY・・・バルダイ光学機械工場(ジュピターオプティック/バルダイスカヤ)

モスクワの西北に位置する光学工場。工場の規模は小さく、カメラアクセサリーや一部のジュピターレンズを生産していた。長らく謎の工場とされた。そのマークから海外ではシシカバブファクトリーと呼ばれ日本ではおでんマークといわれてきた。



 

ZOMZ・・・産業合併ザゴルスク光学機械工場

モスクワの北方の地方都市ザゴルスクにある機械工場。Jupitar-3などの生産をKMZから引き継いでいる。右側のマークが旧マークで現在は左HPが存在していることから現在も稼動していると見られる。


KOMZ・・・カザン光学機械工場

タタールスタン共和国の首都「カザン」の機械工場。一部の望遠系のレンズの生産を担っている。生産数はあまり多くないと見られる。

これら工場マークからレンズの経歴を知ることができる。

後編に続く


Nippon Kogaku Zoom-NIKKOR Auto 43mm-86mm F3.5 1963年に発売された日本初の標準ズームレンズである。




ニコンはかなり早い時代からZoomレンズの開発に着手していた。世界初のスチールカメラ用ズームレンズ『Zoomer』がキルフィット社で設計されフォクトレンダー社より発売されたのが1959年。同じ年にNikonF用のレンズとして『NIKKOR Telephoto-Zoom 8.5-25cm F4-4.5』を発売している。こちらは新聞社など割と特殊な用途として使われていたようであるが現代の望遠ズームとさほど変わらないスペックのレンズを設計していたことは驚きである。しかしながらその鏡胴は巨大なものであった。

当時ズームレンズを設計するためには自動計算機が必須でニコンでは1953年から電動計算機を導入していた。1957年にはドイツの光学メーカーなどでも採用されていたドイツ製計算機『ツーゼⅡ』を導入ている。

実はこれは非常に早い導入であった。なぜなら『グラッツエル法』で有名なエルハルト・グラッツエルがカールツアイス社で写真レンズの研究をはじめたのは1954年、『グラッツエル法』を確立したのが1960年のことである。先述の『NIKKOR Telephoto-Zoom 8.5-25cm F4-4.5』は『グラッツエル法』確立よりも前に発売されたレンズなのである。
このレンズを設計したのは日本光学の樋口達氏。氏はその後『NIKKOR Telephoto-Zoom20-60cm F9.5-F10.5』や幻のレンズ『Auto-NIKKOR Wide-Zoom 3.5cm-8.5cm F2.8-F4』を設計した。特に『Auto-NIKKOR Wide-Zoom 3.5cm-8.5cm F2.8-F4』では2群ズームというジャンルを確立した。このレンズ自体は不運にも製品化されることはなかったが同じ考え方で1972年に設計されたキャノンの2群ズームFD35mm-70mm F2.8-F3.5は高性能広角ズームとして新しい時代を切り開いた。この設計概念は現代でも標準ズームを中心に使われている。

その後誕生したのが今回扱うこのレンズ『Nippon Kogaku Zoom-NIKKOR Auto 43mm-86mm F3.5』である。このレンズは1961年に特許出願されている。設計は樋口達氏である。
このレンズの登場した1963年といえば翌年に東京オリンピックを控えた年である。この年に発売された43-86(ヨンサンハチロク)はこの後現代まで続く一眼レフとズームレンズの時代を先取りしたものであった。

そもそもズームレンズは一眼レフと相性がいい。レンジファインダーでズームは実現できなくはないが大掛かりな変倍系をファインダーに仕込む必要があり現実的ではなかった。日本光学が先見の明があったのは業務用の特殊機材としてではなくリーズナブルなレンズとして発売した点であろう。この狙いが当たりこの商品はロングセラーとなる。このレンズにより人々はズームレンズの利便性を知り、一眼レフカメラのレンズのあり方も変わっていく。そして一眼レフカメラと共に日本のカメラシェアを一気に広げていく一因となった。

『Nippon Kogaku Zoom-NIKKOR Auto 43mm-86mm F3.5』は3群ズームといわれるジャンルにあたる。収差の微調整のために機械式の曲線のカムが必要となる。当時このカムの精度を保つことが難題とされた。このレンズにおいてはあえて収差と写りを犠牲にしながら第3群のみ曲線のカムを取り入れた。このことにより生産性を確保し安価に生産することが可能となった。


1群2群は直線的な動きだが3群目にのみ曲線カムが採用されている。

曲線カムが見える。当時はこのカムの加工精度が大問題となった。

とはいえこのレンズの魅力はきっちりと作りこまれた鏡胴にある。大衆向けのレンズとして作られていながらその重厚感や作りの美しさはさすがである。特に優美に伸びた被写界深度曲線はこのレンズの最大のチャームポイントである。




直進ズームの適度なトルク感も現代では非常に懐かしく斬新である。

ではこのレンズの写りはどうなのか検証していきたい。
このレンズは非常に長い間作られていたので色々なバージョンが存在する。バージョンが変わるごとに光学部分も少しずつ改良がされている。今回取り上げたのは最初期のモデルになる。レンズの前枠がシルバーのシングルコートのモデルになる。名盤には”Nippon Kogaku"の銘が刻まれている。





















見ていただけるとわかるとおりこのレンズ非常に良く写る。そしていい意味でオールドレンズ感がでる。優秀すぎるが故にオールドレンズ感が弱いニッコールレンズ群の中においては非常に稀有な存在である。中心のみの解像力、周辺の平面性やコントラストの低さ、収差の出具合、周辺光量低下、どれもかなりのものである。それゆえどの写真もクラシカルでノスタルジックな趣のある写真になっている。
そしてこのレンズを語る上で欠かせないのがゴーストの出やすさであろう。


しかもこのゴースト、ズーミングにより姿を自在に変えていく。






ズーミングでゴーストも写真のテイストもまったく別物になってしまう。
魅力的なレンズである!!まさにゴーストマスター!

倍率は2倍である。

ワイド側

テレ側

ただこのレンズにも弱点が存在する。それが歪曲収差である。

ワイドで樽型の収差は建物を撮ると顕著に現れる。


逆にテレ側では糸巻き型になるがこちらはあまり気にならない。












諧調もしっかりしていて実にいいレンズである。

実はこのレンズアメリカ空軍に制式採用されていたことがある。NIKON Fベースの『KS-80A』という戦闘機のパイロットが戦火判定用に使っていたカメラにこのレンズが付いていた。ヘリコイドガ無限遠でロックできるつくりになっているのが特徴だ。このことは以前自動車評論家の福野礼一郎氏に教えていただいた。

そんなレンズを片手に散歩を楽しむのもいいかもしれない。