やはり、呼吸が十分にできないし、指先がしびれる。

しかし、試合は待ってくれない。迎える6番に対し、開いたからだから投げ込まれた直球は相手の脇腹をえぐった。ここで死球を与えてしまった。何とも悔しい。

続く7番にはフルカウントまで追い込んだものの根気負けし、四球を与えてしまい、結局2点与え、得点は7-3となってしまった。さらに1死満塁のピンチはつづく。

くそったれ!ここまで来て、やっぱりダメ投手で終わるのかよ!

気持ちは焦るが、体はうまく反応してくれないのであった。気がつくと3者連続四死球の大失態を演じていた。

もう、どうしようもなかった。ベンチから監督がゆっくり歩いてくる。審判に向かって「ピッチャー交代。」と、そう告げた。

投手交代の知らせと同時に、私の投手も終わりを告げた・・・・・。

1年間、一生懸命がんばってきた。でも結局は去年のままの投手だった。必死で変わろうとしたけど、やっぱり無理だった。

何とも言えないむなしさと悔しさがこみ上げてきた。

ベンチに帰ると監督とツジ課長から熱中症の疑いがあるから、氷を首に当てて、日陰で休んでいろとの指示があった。しかしそれだけは断じてしたくなかった。さんざんチームに迷惑かけて、俺だけ日陰で休めるか!?絶対嫌だ!そう心に決め、私はベンチにのこり、咳き込みながら、かすれた届かない声を絞り出し、仲間達に声をかけ続けた。ただ、正直フラフラだった。

しかし、そんな私に対し、マネージャーが優しく冷たい水をついでくれた。最高に冷たく、最高に温かかった。

私の心は悔しさと、うれしさと、みんなの優しさに包まれていた。同時にたまらなく涙が出てきた。

おいおい、泣いている場合じゃないだろう、私の作ったピンチをノリたちが必死に守りきろうとしてくれているのに・・・・・・・そう、自分に言い聞かせた。

その後、ノリは右翼フライを打たれ1点を取られたものの、続く9番を三塁ゴロに打ち取り、この回を終えた。

ベンチに帰ってくるノリに対して「すまん。本当に申し訳ない。」と心から謝った。これに対し、ノリは満面の笑顔で「ドンマイです。一緒に勝ちましょう!」と、そう答えてくれた。

そもそも、私は東京に「投げ」に来たんじゃない。「勝ち」に来たんだ。そう考えると、まだまだやるべきことがある。

しんどいのは俺だけじゃない、ここに立っている全員、私以上にしんどいはずだ。でも、だれ1人弱音を吐かず、自分のことより他の選手のことを励まし、必死で戦っているではないか。

4回表の我々の攻撃。先頭5番のニシモが思い切りの良いバッティングで左翼の頭を越える本塁打を放ち8-4にした。

この男ほど、成長した男はいない。そして、この本塁打が大きな意味を持つことになろうとは、この時点ではだれ1人として、想像しなかったであろう。

1回表の我々の攻撃。相手投手は全くと言っていいほどストライクが入らない。

なんと打者8人に対し、5人に四死球を与え、3点いただいて3-0でこの回終了した。さい先良い。

その裏のC大学の攻撃。久しぶりの先発マウンドである。

マウンドに上がり、深呼吸をする。「ついに来てしまった・・・・・。」そんなことを思いながら、キャッチャーをじっくりと見定めた。ゴリがほほえんでいる。

ゆっくり振りかぶり、第1球を投げた、低めのボール。でも死球でははい。(笑)

第2球、ストライクが入った。まわりから大きな声で「ナイスボール!」との声が上がった。続いてもストライクが入り、追い込んだ。その後の4球目。高めに入ったところを思い切り振り抜かれ、打球は左中間へ。

いきなりの2塁打である。すかさず盗塁を決められ、無死3塁。気がつけばピンチである。

2番にフルカウントからの7球目を中堅に大きなフライを打たれ、これが犠打となり1点とられ、3-1となってしまった。

しかし、その後は何とかふんばり、この回1点で終了できた。

2回表の我々の攻撃。先頭は9番の私からである。いきなり死球をいただいた。

その後も相手投手の乱調は続き、ストライクが入らない。私としては、一刻も早くベンチで休みたいのだが、その後も四死球を連発し、結局この回も打者9人に対し、6四死球で3点いただいた。

すごい長い時間、ダイアモンドの上にいたような気がする。

ただ、6-1となり、さらに優勢状態となったことは非常にうれしい。

その裏のC大学の攻撃。先頭6番を三振に取り、その後フルカウントからこらえきれず死球を出したものの、その後、後続を打ち取り0点で抑えた。何とか踏ん張れている。。。。しかし、なんか指先のしびれが増しているように感じた。

3回表の我々の攻撃。またまた、先頭は私からである・・・・・。休ませてくれ。

そう思いながら、2S1Bの4球目をフルスイング。打球は3塁前に転がった。しかし、処理を焦った三塁手が暴投を投げ、2塁へ進塁した。出塁はうれしいが、本心はベンチで休みたかった。

1番に返り、ヒデキがファールで粘った6球目を2塁フライ。2番のナベさんが2S2Bからの5球目を投手フライに打ち取られ、2死となった。それにしても休む暇なく、このクソ暑い中、2塁ベース上で1球1球に反応しながら動き回るというのは何ともきつい。

1回の表終了後から、ほとんどベンチで休めていない状態である。マジできつい。

3番のリョウタが、ここ1番で中堅越えの3塁打を放った、私は一気に2塁から本塁へ生還した。1点追加である。

やっとベンチに帰れた。しかし、4番のノリは2球目を投手フライに打ち取られてしまった。

体力的にかなりやばい。頭がボーッとしてきた、なんか雲の上を歩いている感じがする。

ただ、そんなことは言ってられない。容赦なく、投手という仕事が迫ってきた。急いで準備をし、マウンドに走る。

やはり、この年で無理はしてはいけないが、ただ、せめて5回は投げたいと思っていた。

3回裏のC大学の攻撃。先頭2番打者を右翼フライに打ち取った。しかし続く3番に四球を与えてしまう。ダメだ、ダメだ。もっと丁寧に行こう。

4番打者には2S0Bから中堅前に安打を打たれ、1死1・3塁のピンチを招いてしまった。

暑い、つらい・・・でも、あと2人・・・・ノリはもっとしんどかったはずだ。そう考えながら必死で投げていた。と、いうより気合いで投げていた。

しかし、体が開いてきている。自分でもわかっていたが、どうしようもできなかった。

結局5番に死球を与えてしまい、1死満塁。大ピンチを招いてしまった。自分でベンチを遠くしている。

「踏ん張れ、踏ん張れ。」自分に言い聞かす。

しかし球は全然思いどおりにミットにおさまってくれない。さらに息を吸い込むと、なぜかむせ込んでしまう。

息を深く吸い込めない状態になっていた。

これって、ひょっとして、熱中症?それとも寝不足?それとも単なる疲労?

以前、大学の保健センターで、「熱中症は死ぬことがあるから気をつけてね。」と、言われたのを思い出した。

「俺は死んでも良いけど。負けるのは嫌だよ。」マジでそんなことを考えた.

しかし、時すでに遅く、自分の力ではどうすることもできなかった。

1死満塁。去年の自分を払拭したい。。。。。そう思いながら汗をぬぐうのだった。

N大学に破れ、決勝へ駒を進めることはできなかったが、まだまだ3位決定戦がある。

くよくよ負けたことを悔やんでいる場合ではない。

しかし、この暑さの中、みんな全力で戦ってきたため、体はボロボロである。

今はとにかく体を休めることが重要である。

それぞれ日陰に体を置き、水分を補給し、ゆっくりすることにした。

試合開始まで、1時間半近く休憩できる。

私が日陰で休んでいたところ、ツジ課長が私に向かって「おい、次の試合先発いくぞ!」とおっしゃった。

私は耳を疑った?えっ?先発?マジで?

正直、うれしかった。もう、東京では投げられないと思っていたからだ。

しかし、体力的に自信がなかった。すでに指先がしびれていた。本当に大失態だ。寝不足とは恐ろしい。。。。

でも、せっかくもらったチャンスだ。気合いを入れて、思いっきりやってやろう!そう、割り切った。

試合は13時30分の開始予定である。まだ、1時間ほどある。じっくりペースをあげていこう。

40分前になったのでゆっくりキャッチボールを始めた。ゴリとのバッテリーである。

しかし、キャッチボールを始めた直後、なぜか前方から審判団がこっちに向かってきた。

「けっこう早くくるんだ。」そう思っていた。

しかし審判団がこっちにきて、私たちにこういった。「試合時間が30分早くなったとの連絡は届いていますよね?」

えっ、聞いてないよぉ~。

監督もツジ課長も聞いていないとアピールした。しかし、相手チームもその気のようで、30分繰り上げて試合を開始することになった。すなわち練習は10分しかなかった。

午後1時。いよいよ3位決定戦の試合が始まる。我々は先攻であり、スタメンは下記の通り。

-------------------

1.ヒデキ(6)

2.ナベさん(4)

3.リョウタ(9)

4.ノリ(3)

5.ニシモ(7)

6.チンパン(8)

7.ハマ(5)

8.ゴリ(2)

9.キャップ(1)

--------------------

いよいよ、1年間の成果を確かめる時がきた。

あまり緊張していない。

いくしかないっ!

2-6。得点は4点差となってしまった。

しかしまだ負けた訳じゃない。

6回表の我々の攻撃。先頭は5番のハマからである。

相手投手もかなり疲れている。ハマはじっくり見ていき四球を選び出塁した。6番ニシモは死球で出塁。7番チンパンが外角の速球に見事にあわせ中堅前に安打を放ち、無死満塁となった。

勝利の女神はまだまだ見捨てちゃいない。一気にたたみかけるんだ!

8番はツバキ。フルカウントまで粘るが惜しくも三振で倒れた。次は私の番である。

ここは初球から打ちに行こうと決めていた。

その初球、真ん中低めに入ってきた、思い切り打ちに行くが、打球は後ろに飛びファール。

相手も疲れているが、必死の投球である。2球目もファール。そして渾身の3球目、ボールは外角いっぱいに入ってくる。

追い込まれてからのくさい球だ、必死にバットに当てに行く・・・・・・しかし惜しくもバットは届かず、三振となってしまった。

無死満塁から2者連続三振とは、、、、、何とも情けない。

1番に返り、ヒデキが四球を選んで1点返した。

点差は3点。まだまだいける!最後まであきらめることなく、みんな必死に立ち向かった。

しかしその裏3者連続安打を打たれ、1点取られてしまい得点は3-7の4点差。

泣いても笑っても、次の回が最後である。

最終回の我々の攻撃。相手チームも投手を代えてきた。これが凶と出るか、吉と出るか。

先頭3番のリョウタ。球筋をじっくり見極め、フルカウントから好選球で四球を選び出塁。4番のノリが四球でさらに出塁。

無死1・2塁である。5番ハマが3塁ゴロを打ち、その間にそれぞれ進塁する。6番はニシモ、第2打席で安打を放っている。2S1Bと追い込まれた4球目、思いっきり振り抜いたが、打球は1塁フライとなってしまった。

次は7番のチンパン。最後の打者となってしまうのか。しかし、チンパンも踏ん張った。

1S1Bからファールで粘りに粘って8球目。渾身のストレートにチンパンもフルスイングで応えた。

しかし打球は無残にも三塁頭上に高く舞い上がった。


三塁手がしっかりと確保する。

「アウトっ!ゲームセット!」


決勝の舞台は遠かった。悔し涙がこぼれそうになった。しかしここで泣くわけにはいかない。まだ終わった訳じゃないのだ、このまま負けて帰るわけにはいかないのだ。

こうなれば3位入賞だ!ぐっと涙をこらえ、次の試合に備えること、主将としてみんなを引っ張っていかなければいけない。

試合もさることながら、まだまだ主将としての仕事は終わっちゃいない。

しかし、私も、そしてみんなもこの暑さと疲労で心身ともにボロボロになっていた。

総力戦、消耗戦・・・・・そして気力戦。気持ちが切れた方が負けだ。

いつまでも悔やんではいられない。いよいよ正真正銘の最後の試合に挑む。

先制を許したまま、試合は進んでいった。

それにしても暑い、その上、緊張で肉体的にも精神的にもかなりの疲労感を感じていた。

それに加え、私には寝不足という大失態がある。さらに声も出ず、全く役に立てない状態である。

試合は4回表の攻撃まで進んだ。我々の攻撃である。

先頭は3番のリョウタ、2球目を打ち1塁ゴロに倒れる。4番のノリが四球を選び出塁。5番ハマは平凡なゴロとなったが、相手野手が悪送球を投げ、一気に1死2・3塁となった。

ここで6番のニシモ。0S2Bからの3球目をフルスイング。打球は左翼線に安打となり1点返した。ベンチは一気に盛り上がる。

しかし、7番チンパン、8番ツバキが倒れ、この回1点で終了した。

その裏のN大学の攻撃は、ノリがしっかりと抑え0点で終わった。

5回表の我々の攻撃。

先頭は9番の私からである。何とか出塁しようと必死に食い下がるが、1塁フライに倒れてしまった。

1番に返り、ヒデキが四球を選び出塁。2番のナベさんが左中間に安打を放った。左翼手がもたつく間にヒデキが一気に3塁をおとしいれ、1死1・3塁のチャンスとなった。

ここで3番リョウタが、思い切りたたきつけ、1塁ゴロとなった。その間にヒデキが一気に生還。

やった!ついに同点だ!この私たちが、強豪N大学に食らいついている。

昨日の関東G大学戦がよみがえる。追いついて追い越すんだ!

みんなの気持ちが一つになった。集中力だ!気持ちが切れた時点で負けだ!

声を大にして叫びたいが、声にならない。悔しい思いは募るばかりだった。

それにしても暑い。なんかフワフワして、頭がぼーっとしてきた。

でも、私以上にノリは疲れている。こんなところで弱音を吐くわけにはいかない。気持ちで必死に食らいついていった。

同点にした5回裏のN大学の攻撃。

先頭1番に四球を与えてしまう。ノリもかなり疲れている。

2番を1塁フライに打ち取ったものの、その後3番、4番に連続8つのボールを与えてしまい、無死満塁の大ピンチとなってしまった。

「ピッチャーがんばれ!」声が出ないながら、必死で声援を送る。

続く5番打者は左打者である。第1打席でも安打を放っている。

その初球、打者はノリの速球を思い切りすくい上げた。打球は私の方に向かってグングン迫ってくる。

「ま、まさか・・・・」ビヨンドマックスの真芯でとらえられたようである。

打球は予想以上の伸びを見せ、無残にも私の遙か頭の上を越えていった。

満塁ホームランである・・・・・。

N大学のベンチは大きな歓声で包まれ、走者一掃の一打に悔やんだ。

2-6・・・・ここに来て大きな4点がのしかかる。

しかし、まだ負けたわけではない。これからだ!

主将としてできること・・・・・、それは、みんなを後ろ向きに考えさせないこと、あきらめさせないこと。

これしかできない。残された回で、できることを精一杯やるしかない。

グラウンドに着いた。昨日にまして暑い。まだ午前9時過ぎだというのに何ともいえない暑さである。

いよいよ試合が始まる。我々は先攻であった。スタメンは下記の通りで昨日とほとんど変わっていない。

-------------------

1.ヒデキ(6)

2.ナベさん(4)

3.リョウタ(2)

4.ノリ(1)

5.ハマ(5)

6.ニシモ(7)

7.チンパン(8)

8.ツバキ(3)

9.キャップ(9)

-------------------

いよいよ未知の体験が始まる。相手投手は、やはりかなりの速球派である。

1回表の我々の攻撃。先頭ヒデキが遊撃フライ。2番ナベさんが投手ゴロ。3番リョウタが右翼フライに倒れ3者凡退で終了する。

その裏のN大学の攻撃。ノリらしくなく、先頭に死球を与えてしまう。しかし、その後はしっかりと打ち取り、0点で抑える。

確かに今までの雰囲気とは異なる。どちらも総力戦であり、気持ちが負けた方が崩れてきそうな雰囲気がビシビシと伝わってくる。そんな何ともいえない緊張感の中で、みんな精神力で戦っている。

2回表。先頭4番のノリが右翼フライ。5番ハマが投手ゴロ。6番ニシモが失策を誘い出塁するものの、7番チンパンが三振でこの回もいいところなく終了した。

その裏のN大学の攻撃。先頭5番、続く6番打者に安打を打たれ出塁された。7番を三振。8番を1塁フライに打ち取るが、その間にダブルスチールを決められ2死2・3塁のピンチを迎えた。

「ノリ、がんばれ。」連投に続く連投で、疲れはピークに達しているだろう、でも、あと少し。気合いでがんばってくれ。声にしたいが、声にならない。かすれ声にもほど遠い今の声量では全くノリには届かない。

そんな悔しい思いの中、9番打者に対するフルカウントからの7球目。ジャストミートで1・2塁間を破る安打を打たれてしまい、均衡が破られた。

しかし、まだまだ、始まったばかりだ。今までの力を信じ、再度一つになって戦おう。

勝利を信じて、私たちの逆襲が始まる。

ぐわぁおぅ~、ぐわぁおぅ~・・・・・・


「ん?・・・・なに?」ふっと目が覚めた。地震?ジュラシックパーク?そう思いながら目を覚ますと、それはナベさんのイビキであった。

それにしてもすごい。2晩同部屋で過ごしたが、何度聞いてもすごい。

時計を見ると午前3時38分だった。明日(今日?)は試合だ。早く寝なきゃ。そう思い、お茶を一口のみ、再度布団に入る。


ぐわぁおぅ~、ぐわぁおぅ~・・・・・・


やはり気になる。そして早く寝ようと思えば思うほど寝られない。その上、準決勝のことを考えるとさらに目が覚めてくる。悪循環だ。

「やばいよ、ここに来て寝不足なんて。明日(今日)は勝っても負けても2試合あるのに。。。。」

イビキより音楽の方が寝られるのではないかと考えた私は、i-podを耳につけて寝ることにした。バラード系がかかるとトロトロ眠りに入ろうとするが、曲の合間に「ぐぁおぅ~」との声(?)が入ってくる。

あぁ、気になる。。。。時計を見ると午前4時30分。布団と枕で両耳を押さえ、必死で寝ようとする。

ダメだ。。。。。寝られない。。。。。

ふっと外を見ると空が白くなってきた。夜が明けたのだ。

時計を見ると午前5時30分。今から寝ても、、、、、うぅ。そう思い、もう寝ることをあきらめ、布団の中でゴロゴロしていた。

6時になったので、そそくさと起き上がり、顔を洗いに行った。監督が顔を洗っておられた。

「おはようございます。」そう声をかけようとすると、声が全く出ない。昨日、試合中、大声で声援や激を飛ばしていた上に懇親会で酒を飲み、喉を焼いてしまったようだ。まともに声が出てこない。

監督は笑いながら「すごい声やなぁ。寝られたか?」と声をかけてくださった。

「(しわがれ声で)ナベさんの、、、、イビキで、、、、4時頃目が覚めたっ、、、、きり、今です。。。。。」

「はっはっはっは。お気の毒様。」と監督は大声で笑いながら、私を見ていた。

部屋に帰るとナベさんが目を覚ましていた。私を見て「おはよう・・・ごめん・・・寝られた?」とお詫び混じりに聞いてこられた。

ナベさんも、自分のイビキで迷惑かけていることわかったはるんや。でも、これはどうしようもできひんもんなぁ。ナベさんも犠牲者なんかもしれへん・・・・・。そう思うと誰も攻められない。

その場は「ははは・・・・」と笑い、ごまかした。

しかし、普通に歩いていても、なんか雲の上を歩いているようだった。疲労と寝不足から来ているとわかった。よりによって、こんな日に寝不足とは。

今日は10時から試合が始まる。よって8時に集合であるから、早めに朝食を取り、準備をしてロビーに向かった。

チンパンがいたので、寝不足の旨を伝えた。チンパンは初日は同部屋だったが、2日目から部屋を変わっていた。なかなか賢い奴だ。

チンパンは、「えっ!寝られなかった。そんなぁ・・・。ゴリに避難所を設けているって伝えといたのにぃ・・・。」避難所とは、イビキで寝られない人が、掛け布団を持ってくればいつでも寝られるスペースが確保されている部屋のことである。

そ、そんなのあったの・・・・・。

ま、今更悔やんでも遅い。こうなったら、死ぬ気でやってやる!そう、心に誓った。

しかし、これが本当に死にかけることになろうとは、この時点では誰も想像できなかった。

整列を終え、みんながみんなをたたえ合う。

監督とマネージャーは涙を流しながら大喜びだった。

監督から「ゴリとヒデキに「帰ってこいっ!」て連絡してやれ。」との指示があった。

すぐさま携帯で連絡を取ろうとするが、まだ研修をやっている時間だったので、メールで知らせた方がよいと思い。その旨を伝えると、「かせっ!」と言って監督は携帯を奪い、なんと人事課に直接電話をした。

こんなのええんかいな・・・・と、私は複雑な心境で状況を見つめていた。

そんな中、我々の興奮は冷めやらない。

私はノリのところに行き「ありがとう。」と声をかけた。するとノリも「ありがとうございました。」と言ってくれた。

少しは力になれたとうれしい気持ちになった。

いろんなしんどい思いや辛いことがあったけど、この瞬間を経験するためにあったんだと思うとほんとに今までの苦労が洗い流される思いだった。

興奮したまま、宿に帰る。大半のマネージャーが仕事の都合で今晩帰らなければならないと言うことから、大急ぎでお風呂に入り、懇親会場へと向かった。

懇親会場で乾杯をし、それぞれ今日の試合を振り返った。

ニシモが私に言ってくれた「キャップの活躍がなければ、今日は勝てませんでしたよ。あのプレーと2塁打が火をつけました。」そんなことを言ってくれた。

力になれたんだ・・・・・正直うれしかった。

その後、監督からも「今日のおまえはようやった。ナイスプレーやった。」とほめてもらった。

滅多にほめられることのない私は、どう対応していいものかわからず戸惑ったが、正直、心の底からうれしかった。

そのあともそれぞれの活躍についてみんなからコメントがあった。しかし、必ずといっていいほど、ほめあげた後は必ずけなされる。なんともかわいくない奴らばかりである。(笑)

しかし、ともに笑い、語り、泣き、本当に気持ちが一つになっているすばらしいチームである。

と、その時、入り口からゴリとヒデキが「ひゃっほー!」と大声をあげて入ってきた。

もう会場は割れんばかりの歓声で大盛り上がりである。改めて乾杯をした。

ヒデキは「正直、また帰ってこられるとは思ってもみませんでした。うれしいっす!」と声を上げた。

また、ツジ課長が「明日は未知の世界やぞ。今まで経験したことのない雰囲気があるぞ。」と言われた。

この後、その意味を理解することとなる。

時間もすすみ、監督の言葉を最後に明日に向けて気持ちを改め、宴は終焉となった。

その後、汚れた洗濯物を持って銭湯とコインランドリーに行った。洗濯物を洗っている間、銭湯の待合で時間をつぶす。

ナベさんとノリ、リョウタが来ていた。他愛もない話をしながら、最後には「明日もがんばろうな。」と気持ちを確認した。

この興奮を沈めるまもなく、私は明日に備えて寝ることとした。

いよいよ準決勝だ。よくここまで来たなぁ。。。そんなことを考えながら、私は深い眠りへと落ちていくのであった。

しかし、、、、、

初球はストライク。2球目は積極的に打ちに行ったが、打球は後ろへ飛んでいき、ファールとなる。

その後2球続けてボールがきた2S2Bからの5球目。

外角に入ってきた球を食らいつくように振り抜いた。打球は右翼線のライン際に飛んでいく。

「入れっ!」その願いが通じたのか、ラインギリギリに入る2塁打となった。

2塁上から「ノリ!やったぞ!」と、私はベンチに向かってガッツポーズをした。

1番に返り、ナベさんは四球を選んで1死満塁となった。チャンス拡大である。そして明らかに相手は動揺していた。

ここで迎える打者はツジ課長。2球目を思い切り振り抜き、打球は中堅前へと落ちた。それを見たツバキが生還する。

「やった!ついにやった!勝ち越しだ!シード校相手に勝ち越したぞ!」我々はヒートアップした。

こうなればとまらない、3番リョウタも続き右翼線に安打を放つ。私に続いて2塁走者のナベさんも一気に生還し、3点差をつけた。

その後、ノリとハマは続くことはできなかったが、7-4となり、ベスト4が一気に近づいた。

その裏の関東G大学の攻撃も、ノリがきっちり3者凡退で終了する。ここまで3連投にもかかわらず、しっかり投げ抜くノリというこいつの精神力は本当にすごい。まさに大エースである。

7回表の我々の攻撃。失策で出塁するもツバキが併殺に倒れ0点で終えた。

さっ、いよいよ最後の守備だ。あと3つのアウトで念願のベスト4が手に入る。

みんなそれぞれ守備につき、今までにない声で投手を盛り上げる。

「集中力を切らすな!一つ一つを確実にとっていこう!」できる限りの大声でノリに声援を送る。

喉がどうなろうとかまわない、みんなで、みんなの力で勝利をものにするんだ!

その声に応えるように、先頭1番を捕手フライに打ち取った。

「1アウト!」全員が一つとなり、勝利に向かって突き進んでいた。

2番打者を投手ゴロ。これで2死となった。つづく3番を2塁ゴロに打ち取ったが、飛んだところが悪く、失策を誘い走者を出してしまった。

「まだまだ!集中力や!切らすな!一つ一つや!」必死で声をかける。

4番打者を迎えた。その1S1Bからの3球目、ノリの渾身の1球が投じられた。打者も負けじと打ちに行く。

打球は遊撃前に転がった。ツジ課長が華麗にさばき、1塁へ送球する。


バシッ!「アウトっ!」


しっかりとツバキのファーストミットにボールは収められた。

やった、ついにやった。ベスト4だ!俺たちの手で、ついにつかみ取った。

ベンチでは、監督とマネージャー達が大はしゃぎしている。

これが、勝つってことか・・・・・。喜び勇んでいる選手達を見ていると、たまらなく涙があふれてきた。

努力は裏切らない。この言葉の意味が痛いほど染み渡ってきた。

4回表の我々の攻撃。まだまだ食い下がる。

まずは先頭は4番のノリ、2球目をフルスイングし、打球は左翼線のポールを巻く3塁打となった。

さらに5番のハマが中堅前に安打を放ち1点いただいた。これで2点差である。

6番ニシモは投手ゴロであったが、処理を焦った相手投手が暴投を投げ、無死1・2塁となり、チャンスを広げた。

7番チンパンは惜しくも三振で1死。ここで8番のツバキが打席に入る。0S2Bからの3球目を右翼線に安打を放った。それにより2塁走者のハマが一気に生還し4-3の1点差まで詰め寄った。

ここで9番の私が打席に入る。監督からはリラックスして、先ほどの振りを見せろとのアドバイスが飛んだ。

1死1・2塁のチャンス、絶対打つ!そう誓い投手をにらみつけた。

0S1Bからの2球目。私は思いきり振り抜いた。打球は二遊間に転がる。

「やばいっ!」

打球を捕った2塁手がそのままセカンドベースを踏み、すぐさま1塁に投げる。併殺を狙いに来た。

私は必死で走り抜けた。

「セーフ!」

なんとか併殺を逃れた、そしてその瞬間に2塁走者のニシモが本塁につっこみ生還した。ナイス走塁だ。

そして同点となり、試合は振り出しに戻った。

「いけるっ!いけるぞ!俺たちのチームは負けてない!」そんな気持ちがチーム全体に強く感じられた。

その裏は安打を1本打たれるが、4人で終え、5回の攻撃へと入っていった。

ベンチ前で円陣が組まれる。監督からは、一つ一つを大切に思い切りプレーをしろとの檄が飛んだ。

その後、私を中心に声をかけた。「いくぞっ!」「おぅっ!」

チームが一つになっている。今までにない勢いと、全員が寸分狂わず同じ方向を見つめている。そう感じた。

しかし5回は両チームとも譲ることなく0点のままで終わり、試合はいよいよ大詰めの6回を迎える。

攻撃の前、さらにベンチ前で円陣を組み、監督から「ここで行くぞ!絶対勝つぞっ!」との檄が飛び、引き続いて私が声をかけた。

「テクニック的なことは私は何一つわからない。でも、ここまで来たら気持ちの問題や。集中力を切らした方が負けや。集中や!絶対負けへんぞっ!いくぞっ!!!!」

「おうぅ!!!」

そのかけ声がグラウンドに響き渡り、その声が勝利の女神をこちらに向かせた。

6回表の攻撃は、7番のチンパンからである。そのチンパン、3塁ゴロに倒れ1死となった。

しかし7番のツバキが死球で出塁する。

次は俺の番だ!打席に向かう前、ノリに絶対打ってやる!と誓ったことを思い出した。

食い下がれ、どんなことをしてもバットに当てて、出塁するんだ。今までの努力をこのバットに託すんだ。

1死1塁。気合いに満ちたまなざしで投手をにらみつけた。