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の続編で、
にて述べた史実との対比で話を進めます
なお、関連記事には以下の記事もあります。
藤原師通は神罰で死んだのか?藤原師通Wikiの内容から検証してみた
史実を基に検証する藤原摂関家の家庭の事情 忠実-忠通・頼長親子編
※使用した画像はNHKの公式HPや、録画したドラマの
データから抽出して利用しております。
全て批評目的の引用であり、他意はありません。
あらすじ
鳥羽院御所では清盛たちの詮議が行われていた。
再び鳥羽法皇の御所では、忠盛清盛父子の処遇について
話し合われています。
「調べを進めるうちに次々と明らかになるは、
清盛の道に外れた行状。騒ぎを起こした
清盛の郎党兎丸とやらは、西海にて捕らえた
海賊の頭領であったとのこと。」
「なんと」
頼長
「院の命にて捕らえた海賊を従えているとは、
これいかなることにございましょうや?」
清盛の無法さを主張する頼長さんです。
知恵も力もある者達、それらを家来になし、
法皇様をお守りするに役立てるとは、
これぞ清盛殿ならでの才覚にございます」
と清盛を擁護しますが、
ドラマの展開では今回の騒ぎはその兎丸が八坂神社の神人に
ヘッドバッドを食らわしたのが泥沼化した原因であり、そのために
延暦寺から突き上げを食らった法皇様はピンチなのです。
清盛が兎丸を配下にしていることは、全然法皇様をお守りする
ことには繋がってません。信西の意見は全く的外れとしか
私には思えませんが...。
それに兎丸に力はあるかもしれませんが、こんな軽率な振る舞いを
するようでは、「知恵がある」とは到底言えませぬ。
話を院の御所での評議に戻します。
頼長
「詭弁じゃ。いずれ海賊のごとく暴れ、
法皇様に仇しよう。」
信西
「それはお疑いが過ぎるというもの」
頼長
「さて、それはどうであろう。比叡山延暦寺より
参った鬼若(弁慶)と申す者。
あの強訴の場にてそちが見たことを申せ」
ここで神輿の先頭に立っていながらも、清盛が神輿を射抜いた
ことにビビって腰を抜かしていた鬼若(弁慶)が登場です
「はい。ワシは神輿の先頭におりました。
その時に見たのです。平清盛が、
まっすぐに神輿を狙って矢と射たのを」
マツケン清盛はまっすぐ神輿に狙いを定め、
矢を放ちます。一直線に飛んでいった矢は...
(見返してみると、無駄なまでににカッコイイ描写だったりする)
見事神輿に突き刺さりました。
頼長
「ワザと神の宿りたる神輿に
矢を射たてまつるとは、
もはや我らの考えの及ばぬ無法者。
見逃せば、世はかき乱されます。
比叡山から求められるまでもなく、
早々に都から放逐すべき男にございます」
信西
「確かにかき乱されております。
たった一本の矢に、
国中がかき乱されております。
それは清盛が世に欠かせぬ男ということ」
頼長
「おってはならぬ男ということじゃ」
頼長の意見は、完全に感情論になっています。関連記事
「祇園闘乱事件」について、ドラマの描写と史実の違いを検証してみた
でも見たとおり、史実の頼長は春秋左氏伝に書かれている
晋の趙盾の事例を引き合いに出し、清盛とその父である
忠盛の監督責任を問題視して、両者の流罪を主張したのですから、
ドラマでの清盛を危険視するあまりに感情的になって
清盛の流罪を主張した様は、どうも私には受け入れられません。
頼長という人物の博識さ、真面目な正確からくる
世を正そうとする姿勢が、全く表現出来てないと考えるからです。
ただ、頼長役の山本耕史の演技は良いと思うので、
私が不満に思うのはあくまで脚本の内容に対してであります。
頼長の意見に反論する信西も、清盛の行動のあまりの
反響の大きさから「世に必要な男」というのですが、
何だかミキプルーン忠盛の言い分をそのまま言ってるだけの
ような気がして、正直納得いきません。
場面は、詮議の結果がまとまらずに悩める鳥羽法皇と、
その愚痴を聞く得子との会話のシーンに移ります。
あらすじ
詮議の後、迷う鳥羽院は得子に本音を語る。
まだ自分は白河法皇の亡霊に悩まされ続けている、と。
こうした寺社や武士の争いは元をただせば、
「平氏がなければ法皇様の世も続きますまい」
鳥羽法皇
「得子、そなたに言ってよいものか」
得子
「なんなりと。待賢門院様がお隠れに
なってからこちら、
張り合いがなくて退屈しております」
「朕も璋子を亡くしてから思うことがあるのだ。
亡き白河院は、死してなお朕を振り回し続けた。
璋子亡き今も、あのお方の亡霊から
未だ逃れることが出来ん!」
おとなしく鳥羽法皇の愚痴聞き役に徹している得子さん
朕を追い詰める。
今も世を治めているのは、
白河院のような心地さえする。
今迷いなく忠盛親子を救うことは、
この身に流れる白河院の血に
操られておるような気がするのじゃ!」
「帝よ、ここはワシの世じゃ!」
得子が「平氏なくば法皇様の世も続かない」と言ったのは、
白河法皇が敷いた院政という時代の特徴であります。
白河法皇も最初から独裁者ではなく、このドラマに出てくる
忠通・頼長兄弟の祖父である藤原師通(もろみち)の
存命時には、摂関家とも協調して政治を行なっていたようです。
ですが関連記事
藤原師通は神罰で死んだのか?藤原師通Wikiの内容から検証してみた
史実を基に検証する藤原摂関家の家庭の事情 忠実-忠通・頼長親子編
や参考資料 白河天皇Wiki 等の記載内容で分かるとおり、
優秀だった師通の死後跡を継いだ忠実は
経験不足&政治的力量不足によって
度々白河法皇の怒りを買っており、その結果として
藤原摂関家の勢力は徐々に弱っていきます。
(なんだか源氏のダメ義為義さんと忠実さんって、
見事に立場が被りますねぇ...。)
その上自身の皇子であった堀河天皇の崩御によって、
孫にあたる鳥羽天皇という幼帝が即位したことで、
自然と白河法皇に権力が集中しました。
要するに摂関家の弱体化と幼帝の即位というダブルパンチで、
タナボタ式に白河法皇の力は強化されたのです。
そして白河法皇は武士階級の者達を登用して院近臣とし、
更には北面の武士という自前の武装集団まで
結成して権力を強化。かくして院政という日本史上でも
かつて無い時代が到来したのです。
鳥羽法皇はその白河法皇の敷いたレールに乗っかって
権力を振るっていましたので、その力の裏付けは武士階級
との蜜月関係にありました。当時の代表的な武家勢力といえば
平氏と源氏ですが、源氏は藤原摂関家寄りの立場でしたので、
院政を敷いた白河法皇や鳥羽法皇が頼りとしたのは、
もう一方の平氏であったわけですね。
先の頼長と信西の問答のシーンで頼長が白河法皇の政治路線を
批判したのは、白河法皇が敷いた院政によって武士が重用され、
反対に藤原摂関家の力が後退したから。
信西が「新しき政を目指す」と言いながらも、白河法皇路線の
廃止を訴える頼長の意見に反対したのは、頼長の目指すのが
院政を否定することでの摂関家の権力回復であるからと
理解して、ようやくあのシーンの問答に納得がいった次第です。
このあたりは私もこの記事を書くにわたって色々と調べたり、
調べた内容を考察した結果として明確に理解出来てきたので、
とても興味深かったです。
結果としてこの回の記事がダラダラと長くなってしまったのですが...。
ですから、鳥羽法皇にとって白河法皇の政治路線を否定
することは、院政という自身が権力を握っている制度そのものを
否定することになりますから、出来るわけがありません。
先の詮議の時に頼長が白河法皇の政治路線を否定していた
のは、すなわち院政という体制の否定であり、
信西がその頼長の意見に反発したのは、院政の擁護とも
とれる展開ですね。
政治では祖父白河法皇の路線を継承せざるを得なかった
鳥羽法皇ですが、白河法皇には大きな恨みがあります。
白河法皇が、自分が手を出した女である璋子を
自分に入内させたことであります。
鳥羽法皇の独白のシーンには、このタフマン白河法皇と
金麦璋子の回想不倫シーンが挿入されていました。
史実では、表向きこの二人は養女と養父の関係でありました。
ただ単なるエロ英雄色を好むといっても、どうみても行き過ぎていた
白河法皇が、璋子に手を出していたということは、
真実はともかく当時では大いなる信憑性をもった噂になっていました。
ですから関連記事
史実を基に検証する藤原摂関家の家庭の事情 忠実-忠通・頼長親子編
でも触れたとおり、藤原摂関家の忠実は白河法皇から打診のあった
息子忠通との璋子との縁談を断ったのです。
その結果、白河法皇は自分の孫である鳥羽天皇に璋子を
入内させたんですねぇ。
なので真偽はともかく、「崇徳院は白河法皇の落し胤」
という説が蔓延し、鳥羽法皇は崇徳院を「叔父子」と呼んで
忌み嫌ったのであります。
更に事態を複雑にしたのは、そんな経緯で自分のところに
入内してきた璋子を、鳥羽法皇が溺愛してしまったことですね。
鳥羽法皇が璋子を溺愛したというのは、璋子が鳥羽との間に五男二女
を産んだという事実から、恐らくは事実であったと思われます。
ただ、璋子は白河法皇の死後は急速に力を失いますから、
鳥羽法皇が璋子との間に多くの子をなしたという事実は、
白河法皇に気兼ねしてのことであった可能性も否定出来ません。
ドラマでは、このあたりの人間関係をドロドロの昼ドラとして
描いていました。このあたりの描写は、不謹慎と思いつつ、
私も楽しんでましたねぇ...。
このドラマでは、更に白河法皇を「もののけ」として化け物
「この記事が院政期と鳥羽法皇の苦悩の理解に役立った
」
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