WOWOWで、映画版の「白夜行」が放送されました。堀北真希と高良健吾の主演です。


「白夜行」は、東野圭吾の原作で、ドラマ版を見て衝撃を受け、そのあと原作を読みました。


綾瀬はるかと山田孝之の主演ですが、武田鉄矢、渡部篤郎、八千草薫、麻生祐未、柏原崇と、実に豪華な面子で、的場浩司や奥貫薫が、ゲストで登場したり、田中圭や小出恵介、まだ無名だった、向井理まで出ておりました。ちなみに、山田孝之扮する桐原亮司の子供時代を演じたのは、泉澤祐希です。


テレビドラマとして、実に良く出来ており、この作品で、私は、森下佳子という脚本家の名前を覚えました。その後の森下さんの活躍は、言うまでもありません。


びっくりしたのは、その面白さに惹かれて、原作を読んだ時のことです。東野圭吾の小説は初めてでしたが、ドラマのさらに上を行くクオリティだったのです。


そして、原作を読んでわかったのですが、森下佳子は、ドラマにおいて、極めて大胆な挑戦をしておりました。原作とは真逆の構成だったのです。


主人公のふたり、唐沢雪穂と桐原亮司の関係性は、小説では最後の最後まで明らかになりません。しかし、ドラマでは、初回で、いきなり描かれるのです。発端となる事件の、犯人まで明らかにしました。私は、原作でも、てっきりそうなっていると思っておりました。


原作は、まぎれもない傑作です。ならば、普通に描いては、オリジナルには勝てません。だから、あえて奇策に出た。そう思いました。


原作に勝てたとは思いません。しかし、すごいことをしたと感じました。


「白夜行」のその後的な作品と言われている、「幻夜」も名作です。こちらは、深田恭子と塚本高史の主演で、WOWOWでドラマ化されましたが、こちらは、目をおおわんばかりの酷い代物でした。


こんな小説を、あの東野圭吾が書くか?と訝しく思い、原作を買って読みましたが、小説はとんでもなく面白いのです。こちらは逆に、余計なことばかりをしていたのです。これが、脚本家の力量の差です。どんなに食材が良くても、料理人の腕が悪ければ、無残なことになります。これは、その典型です。


映画の「白夜行」は、雪穂の出自を、暗に被差別地域だと描いております。構成はむしろ、原作に忠実です。しかし、どちらが好みかと言えば、やはり私は、テレビドラマのほうに、軍配を上げます。武田鉄矢をシリアスで起用したのも画期的でした。


この作品以来、森下佳子の作品は、ほぼ見るようにしております。そして、ほぼ外れなしですから、大したものです。


※ただ、ドラマの最後の最後は、必要なかったと思います。それが何かは、ドラマをご覧ください。