quest05 終了のお知らせ。
思うところあって、ブログをやめます。
ennuiennui!の頃から、
下手したらKAYOTAの頃から(知っている人は激レアです)、
私の赤裸々な日記を読んでくださっていた皆様への礼儀として、
放置ではなく、きちんと終了を知らせようと思います。
書くという行為は、排泄に似ていると、田口ランディは言いました。
私にとっても、まさにまさに、その通りだった。
赤裸々な日記を、誰かに読んでもらいたかったというよりは、
「誰が読んでいるかわからない」という状況に晒したかった。
生きている証を置きながら歩くみたいに。
きっとこの排泄行為は続くのだと思う。
私はそれによって、日々を受け入れ、
だましだましの人生を、歩んでいくのだから。
そのうち、またホームページを作ります。
きっともう、赤裸々な日常は語らないけれど。
本当のことと、沢山の嘘をごちゃ混ぜにして、書く。
そのうちね。
「アメリカの男」もその時に♪(失礼、内輪ネタです。)。
quest05がなくなることを残念だと思ってくださる方が、
もし居たとしたら。是非メールください。
何が好きだったか、教えてください。
共感したフレーズとか、単純に好きなエントリーとか、もしあったとしたら。
kayo-quest@hotmail.co.jp
ではでは。
またいつか。
上等なもの。
会社の同僚のアートイベントがあったので、彼と、おとちゃんと行った。
自主制作のミニフィルムとか、平面作品とか、ライブとか。
仲間と集まって毎年やっているらしく。
そういう、インディーズのイベントに行くのは好き。
「レベルはどうあれ、エネルギーを感じに行くんだよ。」と、
ふたりで電車を待ちながら、私は恋人に言った。
彼は、静かに笑っていた。
::
暗くなる前に会場を出て、
おとちゃんと3人でお茶をして、梅田で別れた。
「ね、おとちゃん可愛いでしょう。」
「ぞっこんだな。」
これは、彼女と、彼女の恋の話。
恋する乙女は輝いている。
::
彼のコートを探しに、梅田のハービスに行った。
ハービスに向かう地下道は、とてもきれいで。
広くてゆっくり歩ける道とか、
一枚の布みたいに流れる噴水とか、
行き交う人たちの穏やかさとか。
「歩くだけで気持ちがいい。」と私は言って、
腕を組んだ恋人はまた、笑っていた。
「懐かしいね。」と言った。
「ここ、こうやって歩いたことあるよね?」
::
恋人がまだ、大阪に引っ越す前。
リッツカールトンホテルの、少しいいお部屋をとった。
夜は、真っ白でやけに広いお風呂に、
たっぷりのお湯をはって、ふたりで入った。
ビールを飲みながら、バスタブの枠に両手をかけた彼に、
私がぴったりと体を寄せると、
「王様気分。」と、馬鹿なことを言っていた。
ホテルでの夜も、白くてきれいな地下街も、
何だか現実離れしていた。
周囲の空気が、いつもよりも少し、
重いような、軽いような。
ともかくそれは、私が経験したことのない、幸福だった。
::
今日も、同じように、彼と歩く。
空気の重みは、あの時と変わらない。
あるいは、もっともっと深い。
彼は、少しいいコートを買った。
「いい買い物だったと思うよ。」と、私は言う。
言いながら、少しだけ憂鬱になる。
彼は、上質なものを好む。
私は、彼の横に見合う女になりたい。
それは歳の差かもしれないし、
これまでの生活水準の差かもしれない。
私は時々、彼の隣で。
きちんと背筋を伸ばしていられなくなる。
そういう時は、言い聞かせる。
「先は長いから。」
8つの歳の差なんて、いずれ埋まる。
23歳と31歳と、40歳と48歳は違うもの。
彼との、差を感じるたびに。
積んできた経験とか、甲斐性とか。
その度に、そうやって自分を励ます。
幸福さに、足元をすくわれないように、きちんと生きよう。
と、決意する。
::
夜、シェルフの本やCDを、ダンボールにつめた。
もうすぐ引越し。新しいマンション。
結局、彼に生かされている私。
だけど、彼を生かしているのも、きっと私なのだと。
こっそり、思っている私。
衣バトン。
2:ヘビロテな服/アクセサリーは?
3:勝負服は?
4:参考にしてるもの?
5:秋冬に狙ってるものは?
6:これは失敗したなあと思うのは?
特に赤なんて。
7:バトンをまわす5人
なめた女。
「人生なめてるやろ。」
と、言われた。
会社の先輩の男の人に。
「そんな感じしますか?」と訊くと、
「する。俺と同じにおいがする。」と笑っていたので、
私も、何も言わずに笑った。
::
光栄だ。
私は、そんな風がいい。
「なめた女だな。」と、
口の端を上げて笑われるような、
そういう女として、いたい。
::
愛する人たちの前だけでいい。
気が小さくて、臆病者な私は。
home sweet home
帰る場所がない。
いつからか、そう思っていた。
::
生まれ育った家は、なくなった。
中学卒業と同時に、私は家を出たから。
だから、愛着はないと思っていた。
「家を売る」と聞いた時も、別に何とも思わなかった。
高校の、夏の帰省の時。
壊されかけた家に、
「工事中」の看板を抜けて、一人で忍び込んだことがある。
ほとんど、興味半分だった。
驚くべきことに、
私の家は、コンクリートとか、木とかでできていた。
当たり前だけど。
当たり前だけど、そうじゃなかった。
私の中で、あの家は、
積み重なった記憶でできていたんだもの。
思い出とか、雰囲気とか、
空気に、意味っていう色がついて、
そこにあるようなものだったのに。
そんな生々しく、傷口を見せないでよ。
涙が止まらなかった。
積まれた瓦礫。むき出しになった壁の中。
私は危険なことも忘れて、
壁に手を触れながら、階段を上った。
薄い、灰色と紫の間のような色をした、カーペットの敷かれた階段。
足音が、手すりに響いてかすかな金属音が混ざる。
「これは確かに、私達の生活の中の音だったのに。」
あの時の、自分でも驚くほどの、喪失感。
本当は、思い出すと今も泣けてくる。
家の前に停まっていた、建設会社の機械達はまるで、
ウルトラマンとか、仮面ライダーとか、
そういった類のものたちに立ち向かう、醜悪な敵に見えた。
::
実家と呼べる家がない。
気がつけば、そういう、
物質的な喪失を埋めるだけの、
気持ちの拠りどころも、なかった。
お姉ちゃんとの二人暮しは、
喧嘩ばかりで、2年が限界だった。
それでも2年もったのは、私が、
面倒な気遣いから逃れるために、
そのときどきの、男の人の家に寄生し続けたからだろう。
お母さんの再婚は、祝福した。
甲斐性のないお父さんを引っ張って、よく頑張ったねと。
幸せになって欲しいと思った。
だけど、それはお母さんの新しい家庭だから。
彼女がなんと言おうと、そこに私の居場所はなかった。
::
「帰る場所がない。」なんて。
言葉だけなら、ひどく甘美だ。
だけど、私は悲劇を演じられるほど強くない。
愛してくれた人はいた。
置いてきたのは自分かもしれない。
だって眠れなかったから。
与えられるだけの愛は、居場所とは違う。
安らかに、眠りにつけること。
同じ先を、見つめること。
いつだって私は、帰ることのできる場所を望んでいた。
::
「ふたりでひとつの人生だから。」と、彼は言った。
信じられないくらいの正確さで、
私が求めていたものを、差し出してくれた。
彼との日常の中には、奇跡がたくさんありすぎる。
私は、ぞっとして息を呑む。
目を凝らして、耳を澄ます。
秒速で流れていく奇跡たちを、ひとつだって逃さないように。
ひとりだった自分を、忘れないように。
::
帰る場所がある。
そう思えてから、やっと。
もう帰れないあの場所も、あの家族たちも。
やっぱり好き、って思えるよ。
ねぇ、幸せになろうね。
