富山「蜃気楼の見える街 秋酒 純米吟醸」乾きすぎた甘旨味がチクチクとした感触をばらまく | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

酔い人「空太郎」の日本酒探検

意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

蜃気楼の見える街 秋酒 純米吟醸」。

富山県魚津市の魚津酒造さんが醸しているお酒です。

 

魚津酒造は、旧本江酒造を日本酒蔵再建のスペシャリストの田中文悟氏が買い取り、社名を変更して2022BYから新しい体制で再スタートしたことは、2023年6月のブログで書きました

その後、蔵にお邪魔して、坂本克己杜氏のご案内で見学をさせていただきました。

 

 

いまどき、美味しい日本酒を造るための最大のポイントは、搾った後、なるべくすみやかに火入れ&急冷をして瓶詰をし、それぞ冷蔵庫に保管することですが、これは本江酒造を買い取った段階で作業を変えればできることでした。

そうなると次の課題は造り。

特に根幹となる原料処理から麹造りです。

原料処理は言わずもがなの10㌔単位で洗米。そして、麹室はまったく新しい室を新設しています。

 

 

全体に年季の入った機械や設備が多い中で(失礼)、ピッカピカの日東工業製の麹室は新しい扉が燦然と輝いていました。

室の中は引き込みと盛りが分かれた二部屋方式で理想的な麹に仕上がるまでじっくりと世話をできる体制になっています。

坂本杜氏は「真新しい室で一番心配だったのは木香でしたが、事前の対策をしっかりやったので、大きな問題はなく、スタートを切ることができました」と話していました。

 

魚津酒造になって、新しい看板銘柄として「帆波(ほなみ)」を立ち上げていますが、本江酒造時代の銘柄である問屋経由の「北洋」と、県内向けのみで季節限定の「蜃気楼の見える街」も引き続き造っています。

 

今夜いただくのは、地元限定で秋に出荷するコシヒカリ55%精米の純米吟醸、ひやおろしです。

 

 

上立ち香はやや刺激的なアルコールの香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、すべすべの感触を強調しながら、まっしぐらに駆け込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに淡々としたペースで膨らみ、拡散して、適度な大きさの硬めの石のような粒々を次々と射掛けてきます。

粒から現出してくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味は乾ききった上白糖系のタイプ、旨味は凹凸が激しくさらに棘も散見される印象で、両者はそこかしこで摩擦熱を興しながら駆け巡るのです。

流れてくる含み香も酒エキスの香りにアルコールの刺激の香りがミックスして。

後から酸味と渋味は僅少現れて、甘旨味の超ドライな世界を援護します。

終盤まで淡麗で砂漠のような世界が描かれ、終幕を迎えるのでした。

 

なかなかに個性的な仕上がりでした。

 

お酒の情報(24年44銘柄目)

銘柄名「蜃気楼の見える街 秋酒 純米吟醸 2022BY」

酒蔵「魚津酒造(富山県魚津市)」

分類「純米酒」「ひやおろし酒」

原料米「コシヒカリ」

使用酵母「不明」

精米歩合「55%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「3520円(1800ml)」

評価「★★★★(7.3点)」