自宅の晩酌用に京都市左京区の松井酒造さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。
最後の4本目はこれです。
「神蔵(かぐら)純米大吟醸 責め 五百万石 無濾過生原酒」。
2009年に酒造りを復活させた松井酒造は、新たに「神蔵」という新銘柄を立ち上げ、無濾過生原酒を基本として販売してきました。
蔵は完全空調で一年中酒を造れるので、常に搾りたてを出荷できるからで、そのうえ、狭いビルの中なので、在庫を増やすわけにいかないという事情もあるようです。
このため、仕込みは週1本、総米は500㌔か1㌧。これで現在は300石強でフル生産に近い状態です。
近年は輸出も増えてきており、安定的な酒質を提供するために、火入れ用のパストライザーも導入しています。
空太郎が「第2の蔵を作ることも考えなければならないですね」と水を向けると、松井治右衛門さんは「考えてはいます」と慎重ながらも前向きなニュアンスでした。
さて、最後の4本目は、1~3本目のような中汲みばかりをやっていると、その後の工程の責め(攻め)の部分のお酒を別途、出荷しなければならなくなり(中汲みはごく一部だけにして、残りはすべて1つにまとめて出荷する手もあります)、このようなお酒になっています。
最近はあまり見かけませんが、そういう例外のお酒なので、神蔵の文字を反転させているというわけです。
口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、まっしぐらに駆け込んできます。
受け止めて保持すると、促されるままに素直に流れるように膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。
甘味は99.9%純度の高貴なタイプ、旨味はシンプル無垢で滑らかな印象で、両者は足並みを揃えて、紳士淑女の世界を描きます。
終盤まで甘旨味は可憐な含み香と共に、きらびやかな世界を描き切るのでした。
この責めは魅惑的でした。
松井酒造のお酒はもっと造ればもっと売れると思います。
お酒の情報(24年43銘柄目)
銘柄名「神蔵(かぐら)純米大吟醸 責め 五百万石 無濾過生原酒 2023BY」
酒蔵「松井酒造(京都市左京区)」
分類「純米大吟醸酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」「責め酒」
原料米「五百万石」
使用酵母「不明」
精米歩合「50%」
アルコール度数「15度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込)「2240円(720ml)」
評価「★★★★★(7.7点)」