酔い人「空太郎」の日本酒探検

酔い人「空太郎」の日本酒探検

意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

新潟県上越市の千代の光酒造さんが醸しているお酒をまとめて購入し、自宅で飲み比べをしました。

2本目はこれです。

 

 

ちよのひかり KENICHIRO 純米吟醸 雄町 火入れ」。

 

友人と蔵にお邪魔して、マイ・アッサンブラージュの体験をさせてもらったわけですが、まずは第一セッションです。

 

 

ベースとなるお酒が2種類で、それに4種類のお酒を等量ブレンドして、評価するのが第一セッションでした。

ベースとなる1つ目(G)は54%精米の市販していない純米酒に吟醸酒を加えた蔵独自の酒です。

2つ目(K)は季節商品の「ちよのひかり KENICHIRO 生酛 50%精米の純米吟醸酒」でした。

 その2つのベース酒に等量でブレンドするのが、以下の4つのお酒。

1,千代の光 純米大吟醸 越淡麗35%

2,千代の光 特別本醸造 五百万石54%

3,真 特別本醸造 美山錦54%

4,天福 本醸造 越後山田錦54%

 

これで「G1」「G2」「G3」「G4」と「K1」「K2」「K3」「K4」

が出来上がりますので、この8つを利き酒して、ナンバーワンを選びます。

 

 

1から4のお酒は1だけが純米大吟醸で、残る3つが本醸造酒なので、純米大吟醸が加わったお酒だけ香りなどが異なるので違いは明確でしたが、残る3つは非常に類似している味わいで、その微妙な味わいをどう評価するかが難しいというか、個々人の好みとなるのだと思いました。

繰り返し利いて、20分かかって結論を出しました。

私は「K3」を、友人は「K1」を1位に選びました。

 

 

これをもとに次は第二セッションへと移ります。

8種類の中から選んだマイナンバーワンのお酒をブレンド比率5対5に加えて、ブレンド比率を3対7と7対3に変更した酒をその場で蔵元が調合します。

そして、その比率の違う3つを飲み比べて、マイナンバーワン「MyクラフトChiyo」を最終決定します。

15分ほどかけて、じっくりと吟味をし、空太郎は「K3」の5対5を、友人は「K1」の7対3を本日のナンバーワンに選びました。

 

続きは次回に。

 

 

2本目にいただくのは、蔵元後継者の池田剣一郎さんが監修する新しいシリーズです。

雄町50%精米の純米吟醸、一回火入れです。

 

上立ち香は可憐でチャーミングな甘い香り。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に微細な気泡を内包したとろみ層を薄らと乗せて、伸びやかな雰囲気で滑り込んできます。

受け止めて保持すると、気泡のわずかなプチプチ感をBGMにして、軽快に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味はシンプル無垢でスレンダーな印象で、両者は足並みを揃えて、馥郁とした世界を描きます。

流れてくる含み香もジューシーで爽やかな風のよう。

後から酸味と渋味が適量現れて、酸味は味わいに彩りを添え、渋味が全体を引き締めて、終盤まで疲れを見せずに甘旨味が踊るのを見届けるのでした。

 

 

好感の持てる仕上がりでした。

それでは、千代の光酒造のお酒、3本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(25年114銘柄目)

銘柄名「ちよのひかり KENICHIRO 純米吟醸 雄町 火入れ 2024BY」

酒蔵「千代の光酒造(新潟県上越市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「雄町」

酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=2000円」

評価「★★★★★(7.65点)」

新潟県上越市の千代の光酒造さんが醸しているお酒をまとめて購入し、自宅で飲み比べをしました。

1本目はこれです。

 

 

真(しん)特別本醸造」。

 

千代の光酒造は蔵の複数のお酒をいろいろな組み合わせでアッサンブラージュ(ブレンド)して、自分の一番好きなお酒を見つけるという体験企画サービスをこのほど始めました。

 

その趣旨について、蔵元の池田哲郎会長は次の様に話しています。

 

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富山の白岩(立山町)が2019年に売り出したIWAにインスパイアされました。

リシャール・ジョフロワ氏が自らの舌で蔵のいろいろな酒をアッサンブラージュして商品化されるIWAはお酒自身も奥深い味わいで、何回も蔵に足を運びました。

そして、こうしたアッサンブラージュを、蔵元や杜氏がやるのではなく、飲み手が実際にやってみて、自分にとってのベストの日本酒を探し出すという体験は喜ばれるに違いないと確信したのです。

そこで、2021年から取引先の酒販店などを対象に繰り返し、モニター試験を実施し、ある程度メドがたったことから、2024年秋から蔵の公式サイトで参加者の募集を始めました。

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そこで、空太郎も実際に蔵に足を運んで体験をして来ました。

その報告は明日以降に。

 

さて、1本目にいただくのは、54%精米の特別本醸造、火入れです。

 

 

上立ち香はごく普通の酒エキスの香りが少々。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面にとろみ層を乗せて、淡々とした態度で忍び入ってきます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさの軟らかめの粒々を連射してきます。

 

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系のやや緩めのタイプ、旨味は複数の形の異なるコクが重なりあった印象で、両者はお互い譲り合うようにして控え目に舞います。

 

流れてくる含み香は平凡な酒エキスの香り。

後から酸味は皆無、渋味が少量現れて、遠目に眺めるのみ。

甘旨味は没個性の舞いを終盤まで続け、最後は辛さが加わって、それをきっかけに一気に収縮して喉の奥へと吸い込まれて行きました。

 

 

それでは、千代の光酒造のお酒、2本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(25年113銘柄目)

銘柄名「真(しん)特別本醸造 2023BY」

酒蔵「千代の光酒造(新潟県上越市)」

分類「特別本醸造酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「54%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「1800ml=2850円」

評価「★★★★(7.45点)」

荒木町の居酒屋純ちゃんにお邪魔しました。

いつものように25種類のお酒を堪能しましたが、そのうちのもう1本をご紹介します。

これです。

 

 

花陽浴(はなあび)純米大吟醸 八反錦 無濾過生原酒」。

埼玉県羽生市の南陽醸造さんが醸しているお酒です。

 

花陽浴は人気沸騰して、特約店の酒棚から姿を消して久しいですが、蔵は相変わらず、頑張って、蔵での直販を続けています。

発売日は決まっておらず、蔵のインスタグラムで大抵は前日に「明日、発売です」と発信するだけなのですが、それでも、翌日は早朝から大行列ができ、9時ごろの開店には数十人の行列ができているようです。

 

 

空太郎はもちろん、並んだことがないので、並べば必ず買えるのか、行列の途中で打ち切られるのかは不明ですが、いずれにしろ、ご苦労様なことです。

日本酒に限りませんが、供給に限界がある物が人気沸騰となれば、入手困難になるのは必然です。

それが、人気が出る前から応援している酒であればコネができ、人気が出ても確実に入手できるというのも、どんな物にも共通していることと思います。

 

 

空太郎も偉そうに申上げれば、花陽浴を含めて入手困難酒のほとんどを定価で買えますが、それは昔から愛飲しているということです。

日本酒にこれから詳しくなろうという方も、まだ、無名の酒から是非、発掘していただきたいと思います。

 

さて、いただくのは、八反錦48%精米の純米大吟醸、無濾過生原酒です。

 

 

上立ち香は初々しく、鮮度に優れたジューシーな香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に油膜を張って、ちょうど良い加減のスベスベ感をアピールしながら、まっしぐらに転がり込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに軽快に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はザラメ糖系の幅のあるタイプ、旨味はシンプル無垢で、気持ち粗めな印象で、両者は足並みを揃えて、キレのよいダンスを踊ります。

 

流れてくる含み香は豊潤でジューシーな香りで華やかにデコレート。

後から酸味と渋味が少量現れて、的確なメリハリを付与。

甘旨味は伸びやかに、チャーミングで潤いたっぷりの世界を描き切るのでした。

 

 

今夜いただいた25種の中でもベスト3のお酒でした。

 

お酒の情報(25年112銘柄目)

銘柄名「花陽浴(はなあび)純米大吟醸 八反錦 無濾過生原酒 2024BY」

酒蔵「南陽醸造(埼玉県羽生市)」

分類「純米大吟醸酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」

原料米「八反錦」

酵母「不明」

精米歩合「48%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「×」

標準小売価格(税込み)「1800ml=4100円」

評価「★★★★★★(7.8点!)」

荒木町の居酒屋純ちゃんにお邪魔しました。

いつものように25種類のお酒を堪能しましたが、そのうちの1本をご紹介します。

これです。

 

 

百万年の一滴(ひゃくまんねんのいってき)生酛純米 雄町」。

岡山県真庭市の落酒造場さんが醸しているお酒です。

 

長年、「大正の鶴」で酒造りを続けてきた落酒造場ですが、ここに来て、別のブランドを立ち上げました。

大正の鶴は速醸酒母で酒を造ってきましたが、蔵元杜氏の落昇さんが生酛酒母の酒に挑戦するに当って、別の銘柄を立ち上げたくなったようです。

2022年6月に試験的に1本造って販売してみたところ、評判が良く、すぐに完売したことに力を得て、最近、本格デビューさせました。

 

 

驚くことには大正の鶴とは別のウエブサイトを立ち上げていることです。

うまくすれば、むしろ、将来的にはこちらをメインブランドに育てたいという思惑があるのかもしれません。

裏ラベルの説明書きをご紹介します。

 

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百万年の歳月で作られた鍾乳洞で磨き抜かれた力強い北房呰部(HOKUBO AZAE)の水。

発酵に必要な微生物の力を最大限に引き出す伝統的な技法、生酛造り。

水と生酛、2つのちからが生み出すドライでキレのあるその一滴をお楽しみ下さい。

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70%精米の生酛純米ですが、2022BYのタンク貯蔵、二回火入れです。

 

 

上立ち香は弾力性のある酒エキスの香りが。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊がよく踏み固められて平滑になった表面を砂消しゴムのような感触にして、弾むようにして駆け込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに膨らみ、拡散して、適度な大きさの硬めの粒々を連射してきます。

 

粒から滲出してくるのは甘味4割、旨味6割。

甘味は上白糖系の儚いタイプ、旨味は硬いゴムのようなテクスチャーで、甘味は次の瞬間に昇華し、ダークな旨味の独壇場が始まります。

 

流れてくる含み香も地味な酒エキスの香りで薄化粧を付与。

後から酸味が結構な量、渋味も適量現れて、酸味は旨味と歩調を合わせて、より乾いた世界を描き、渋味が明快なメリハリを施します。

味わいはワイルドでハードボイルドな世界が最後まで続くのでした。

 

 

2年熟成ながらも乾いた不思議な旨口酒でした。

この銘柄の行方に興味津々です。

 

お酒の情報(25年111銘柄目)

銘柄名「百万年の一滴(ひゃくまんねんのいってき)生酛純米 雄町 2022BY」

酒蔵「落酒造場(岡山県真庭市)」

分類「純米酒」「生酛酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「70%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「×」

標準小売価格(税込み)「1800ml=4070円」

評価「★★★★★(7.5点)」

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

酉与右衛門(よえもん)生酛純米 無濾過生原酒」。

岩手県花巻市の川村酒造店さんが醸しているお酒です。

 

岩手県中部地域は多くの南部杜氏が生まれ、各地の酒造りに貢献したことで有名ですが、それでは、その南部杜氏を輩出した中心地はどこかというと微妙なのです。

花巻市の石鳥谷町にある「道の駅石鳥谷」は愛称が「南部杜氏の里」ですし、その道の駅の敷地内に南部杜氏組合の事務所と南部杜氏伝承館があり、まさにメッカのような印象ですが、花巻市には酒蔵が川村酒造店一軒しかありません。

片や北隣の紫波町には4軒もの酒蔵が現在も頑張って酒造りをしていて、日本酒の聖地はこちらではないかという気もします。

 

 

地元の紫波町役場は町おこしに最近力を入れて、歴史的な検証をしたうえで、紫波町内に「南部杜氏発祥の地」を定めています。

その辺りのことについて詳しい人に聞くと、1993年に石鳥谷町(当時は花巻市とは合併していませんでした)が紫波町に対して、「南部杜氏の里」という愛称を使いたいと、事前の了解を求めに来たそうです。

その頃は、南部杜氏という名称のブランド価値への認識が薄かったようで、反対の声が上がらず、そのまま、石鳥谷町が南部杜氏の里と認定されてしまったのだそうです。

何事においても、時代の先読みは大事ということなのだと思います。

 

 

さて、そんな南部杜氏の里の唯一の蔵が造ったこのお酒は、亀の尾の60%精米で生酛酒母でかつ、酵母無添加の無濾過生原酒です。

しかも、2022BYの作品で、2年以上、蔵で低温貯蔵したお酒になります。

 

 

上立ち香はとろりとした熟成を感じさせる甘い香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に微細な砂を包含したとろみ層を厚めに乗せて、ゆったりとしたムードで忍び入ってきます。

受け止めて保持すると、促されるままにゆっくりと膨らみ、拡散して、適度な大きさのウエットな粒々を速射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はザラメ糖系のやや濃いタイプ、旨味は朴訥な複数のコクが織り上がった印象で、両者はベテランの域に入った大人びた舞いを披露します。

 

流れてくる含み香は適度な円熟味を感じる酒エキスの香りでデコレート。

後から酸味と渋味が少量現れて、熟しすぎを感じさせないようにメリハリを施します。

味わいは終盤まで太すぎず、細すぎずの適度な広がりのまま、終幕を迎えるのでした。

 

 

好感の持てる仕上がり具合でした。

 

お酒の情報(25年110銘柄目)

銘柄名「酉与右衛門(よえもん)生酛純米 無濾過生原酒 2022BY」

酒蔵「川村酒造店(岩手県花巻市)」

分類「純米酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」「生酛酒」「酵母無添加酒」

原料米「亀の尾」

酵母「無添加」

精米歩合「60%」

アルコール度数「16~17度」

日本酒度「+7.5」

酸度「2.1」

情報公開度(瓶表示)「◎」

標準小売価格(税込み)「720ml=2000円」

評価「★★★★★(7.5点)」

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

紫宙(しそら)ハートラベル 純米吟醸生酒」。

岩手県紫波町の紫波酒造店さんが醸しているお酒です。

 

このお酒は裏ラベルでいろいろ語っていますので、まずはご紹介します。

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いつも妻から「話す声が小さくて聞こえない」と言われる私。

それでも彼女を引き留めたいと、出会ってすぐに初めて行ったカラオケで、「愛を取り戻せ!」と某アニメ主題歌をシャウトして歌い、今があります。

ゆく年くる年。

家族や友達、知っている人も知らない人も!紫宙を囲んで素敵な時間を過ごせますように。

蔵人一同より愛を込めて。

紫宙ハートラベル、どうぞお楽しみ下さい。

管理部長 門ノ沢康也

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この語りの中での「彼女」とは現在も杜氏をしている小野裕美さんのことです。

小野さんは10年以上前から旧廣田酒造店の杜氏を担ってきましたが、おそらく、どこかで辞めたいことがあったのだと思います。

それを管理部門の責任者だった門ノ沢さんが、頑張って説得して、いまもなお、小野さんが杜氏で酒造りの先頭に立っていることを語っているのです。

 

ちょっぴりいい話だなと思い、新生・紫波酒造店を応援したくなる気にさせてくれます。

 

いただくお酒は、地元産吟ぎんが55%精米の純米吟醸生酒です。

 

 

上立ち香はコンデンスミルクを思わせる甘い香りが微かに。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、まっしぐらに転がり込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのウエットな粒々を連射してきます。

 

粒から滲出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はやや中濃に近いものの、流動性はしっかりあるタイプ、旨味もシンプル無垢ながら、とろりとしたテクスチャーで、両者は足並みを揃えて、艶を放ちながら、色っぽく踊ります。

 

流れてくる含み香は可憐でヴィヴィッドな甘い香りでデコレート。

後から酸味と渋味が適量現れて、味わいをより多彩でカラフルな世界へと導きます。

そのまま甘旨味のキュートな踊りが続き、最後は反転縮退して昇華して行きました。

 

 

美味なる生酒でした。

 

お酒の情報(25年109銘柄目)

銘柄名「紫宙(しそら)ハートラベル 純米吟醸生酒 2024BY」

酒蔵「紫波酒造店(岩手県紫波町)」

分類「純米吟醸酒」「生酒」

原料米「吟ぎんが」

酵母「不明」

精米歩合「55%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1870円」

評価「★★★★★(7.6点)」

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

九曜正宗(くようまさむね)純米」。

熊本市の熊本県酒造研究所さんが醸しているお酒です。

 

熊本県酒造研究所は協会9号発祥の蔵であり、醸している「香露(こうろ)」はずっと以前から日本酒好きの間では憧れの酒でした。

でも、それは1990年代までの話で、2000年以降、新しい酒が次々と登場し、鮮度重視で特約店限定流通品が当たり前になっていく一方で、熊本県酒造研究所は問屋流通の「香露」をただひたすら造っているだけでした。

「これでは大都市圏の居酒屋は絶対取り扱ってくれない。一刻も早く新しい銘柄を出すべきだ」

と空太郎は20年以上前から考えていました。

 

 

そして、蔵元がようやく重い腰を上げて(失礼)、2023年春にデビューさせたのがこの「九曜正宗」でした。

初年度は熊本県内の17点限定でそろりスタートしましたが、評判はよく、二年目以降は県外にも出荷されるようになりました。

このため、ようやく手に入れて飲めることになりました。

 

いただくお酒は65%精米の純米酒で、一升瓶で税込み3000円以内に抑えることに配慮したことが伺えます。

 

 

上立ち香から思ったよりも濃醇な太めの香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、まっしぐらに転がり込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系ながらもスレンダーなタイプ、旨味もシンプル無垢で、両者は足並みを揃えて、エッジの効いた都会的なダンスを踊るのです。

 

流れてくる含み香も磨き込まれた甘い香りで薄化粧を付与。

後から酸味がやや多め、渋味が少量現れて、爽快な印象の酸味は甘旨味に溶け込むのではなく、独立したまま存在を強く主張します。

渋味はメリハリ役を担い、終盤まで甘旨味と酸味がコンテンポラリーな世界を描くのでした。

 

 

怒られますが、さすが香露蔵、やればこんな美酒が造れるのです。

首都圏のマーケットにガンガン攻めてきてください。

 

お酒の情報(25年108銘柄目)

銘柄名「九曜正宗(くようまさむね)純米 2024BY」

酒蔵「熊本県酒造研究所(熊本市)」

分類「純米酒」

原料米「不明」

酵母「不明(多分、自社酵母)」

精米歩合「65%」

アルコール度数「14度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「1800ml=2860円」

評価「★★★★★(7.7点)」

1年ぶりに目隠し日本酒吞み比べ会を友人宅で催しました。

今回は6人が参加。

空太郎以外はお題に合ったお酒(四合瓶)1本を、空太郎は5本持ち込んで全部で10本の飲み比べの予定でしたが、一人が2本持ってきたので、結果として11本が対象になりました。

 

 

お題は精米歩合50~70%の純米生酒でした。

 

当然、参加者は終わるまでは銘柄がわからない状態でしたが、これをお読みになっている方向けに、先に、集まったお酒をご披露します。

あいうえお順です。

 

 

笑四季 センセーション黒 生酒(滋賀・笑四季酒造)

屋守 純米吟醸 無調整生酒(東京・豊島屋酒造)

おだやか 純米吟醸生酒 雄町(福島・仁井田本家)

賀茂金秀 純米吟醸生酒 雄町(広島・金光酒造)

寒菊 壽限無 HazyMoon 無濾過生原酒(千葉・寒菊銘醸)

而今 純米吟醸生酒 千本錦(三重・木屋正酒造)

春鴬囀 純米吟醸生酒(山梨・萬屋醸造店)

大信州 番外品 純米吟醸生酒(長野・大信州酒造)

萩の鶴 別誂 純米吟醸生酒(宮城・萩野酒造)

鳳凰美田 純米吟醸 無濾過本生(栃木・小林酒造)

やまいし 純米吟醸 無濾過生原酒(三重・石川酒造)

 

入手困難酒から、あまり知名度のない酒までいろいろと集まりました。

審査した6人は女子4人(20代1人、30代2人、50代1人)、それに40代男子と空太郎です。全員、中級者でした。

 

審査には40分以上かけてじっくりと味わい、10点満点で小数点第一位での配点をお願いして、集計した結果が以下の通りでした。

 

 

優勝  鳳凰美田 51.7点

準優勝 賀茂金秀 51.2点

3位   屋守   50.8点

4位   而今   50.3点

5位         大信州  50.1点

6位   おだやか 49.8点

7位   寒菊   48.5点

萩の鶴  48.5点

9位   やまいし 48.4点

10位    笑四季  47.8点

11位    春鴬囀  46.6点

 

 

ブラインドで無ければ首位争いをしただろう而今は4位でかろうじてベスト5を死守しました。

首都圏での評判はまだまだの銘柄は予想通りの下位でした。

ちなみに各自に「今夜のナンバーワン酒」も選んでもらいましたが、鳳凰美田と賀茂金秀に2票、大信州とおだやかに1票が入りました。

 

 

ブランドの飲み比べを十分に堪能した昼下がりでした。

自宅に長野県木祖村の湯川酒造店さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

最後の3本目はこれです。

 

 

木曽路(きそじ)純米 三割麹」。

 

さて、「SAKAGURA YUKAWA」にお邪魔して、お酒をいただかずに帰る手はありません。

このために車を使わず、弟子と二人で塩尻から各駅停車に乗り、薮原で下りて、てくてくと20分弱をかけて歩いてやってきたのですから。

 

 

長さ3㍍余りの角打ちカウンターは木曽檜の一枚板。

客が立つ足下正面の部分は木曽特産の天然さわらを使ったへぎ板で作られていて、非常に印象的でした。

 

カウンターメニューは以下の通り。

三種のみくらべ 1000円

純米大吟醸 1000円

あまざけ 300円

木曽の赤かぶ漬 200円

木曽のカマンベール 380円

まだ、開業したばかりなので、手探り状態だといいますが、、迷わず三種飲み比べを頼みました。

 

 

出てきたのは以下の3種。ワイングラスに60㍉㍑ほど注がれました。

「燦水木 木祖村産あきたこまち 特別純米 60%精米 15度」=すっきり

「木曽路 純米 三割麹」=麹が多い分濃い味わい

「木曽路 大吟醸」=カプロン酸エチルたっぷりの典型的な大吟醸

 

 

3種類のお酒は明確に酒質が異なるので、ビギナーでも違いがわかり、楽しい飲み比べになるなあと思いました。

まだ始めてまもなく、手探りの状態のようでしたが、知名度も上がって、「薮原に行ったら湯川酒造店のお店に必ず寄る」という観光客が増えてくれば、メニューが増えたり、お座敷でのイベントなども企画して頂けるものと期待しております。

 

さて、最後の3本目は、角打ちにも出てきた、通常2割ほどの麹歩合の酒が、これは3割と麹を多めに使って醸したお酒になります。

 

 

上立ち香から、濃くて甘いエキスの香りが鼻腔を撫でます。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面にとろみ層を適度に乗せて、ゆったりとした雰囲気で忍び入ってきます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのウエットな粒々を連射してきます。

 

粒から現出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味は水飴まではいかないものの流動性を確保しつつも濃醇なタイプ、旨味は3~4種類の個性的なコクが織り上がった印象で、両者は端からゴージャスなムードを振りまきながら、艶っぽい舞いを披露します。

 

流れてくる含み香も外連味のない甘い香りでデコレート。

後から酸味と渋味が少量現れて、かろうじてメリハリを施します。

甘旨味はその後も、周囲の状況には動じず、マイペースで艶たっぷりの世界を描き切るのでした。

 

 

このお店の繁盛を期待しております。

 

お酒の情報(25年107銘柄目)

銘柄名「木曽路(きそじ)純米 三割麹 2023BY」

酒蔵「湯川酒造店(長野県木祖村)」

分類「純米酒」「多麹酒」

原料米「岡山県産アキヒカリ」

酵母「不明」

精米歩合「70%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1441円」

評価「★★★★★(7.55点)」

自宅に長野県木祖村の湯川酒造店さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

2本目はこれです。

 

 

燦水木(さんみずき)特別純米 木祖村産あきたこまち」。

 

酒蔵ツーリズムの流れに対応することもあって、湯川酒造店は蔵の母屋をリノベして、昨年(2024)暮れに「SAKAGURA YUKAWA」をオープンしました。

外観は母屋のままいじらず、入口の潜り戸も敢えてそのままにして、蔵を訪ねる雰囲気を残してあります。

入口には狸の置物も。

 

 

母屋に入った三和土部分を改装して、左半分が販売コーナー、右半分がバーカウンター(角打ち用)になっています。

さらに、その右奥にはかつては客を応接する座敷が残っていたので、2部屋の壁を取り払って30畳の掘りごたつ形式の大広間にしました。

事前の団体予約客には、弁当などの仕出しも用意して、ゆっくりと酒を楽しんでもらう計画でいるそうで、この部屋には仏壇もありますが、あえてそのままにして、「蔵元の家にお邪魔した」という気分になるようにしたそうです。

 

 

販売スペースでは木祖村でしか販売していない「燦水木(さんみずき)」をメインに、問屋流通品の「木曽路」を並べています。

特約店限定流通品の「十六代九郎右衛門」は基本的には並べない方針ですが、それを期待してやってくる客もいるので、彼らががっかりしないように、1種類だけ必ず置くようにしていました。

甘酒は仙醸からの仕入れ品。

木曽の魅力を伝える空間にするために、地元薮原の特産品の「お六櫛」、地元の生薬メーカーの看板商品「普導丸(めまいに効く)」、木曽の檜で作った箸などを販売しています。

 

さて、2本目はそんな、木祖村限定販売のお酒です。

しかも、村内の農家に頼んで、秋田酒こまちを栽培してもらっており、その60%精米の特別純米酒、一回火入れです。

 

 

上立ち香は鮮度に優れた酒エキスの香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に油膜を張って、ツルツルの感触をアピールしながら、軽やかな雰囲気で駆け込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系の奥行きを感じるタイプ、旨味はシンプル無垢ながら厚みがあって、両者はお互いに配慮しながらバランス良く踊ります。

 

流れてくる含み香はミルキーの香りがはっきりと。

後から酸味がやや多め、渋味が少量現れて、乳酸主体の酸味が先行して甘旨味に絡んで、よりミルキーな世界へと導きます。

渋味はそれにアクセントを加え、そのまま味わいはペースを崩さずにミルキーの余韻を放ちながら、最後は反転縮退して昇華して行きました。

 

 

生酛酒母ではないのに、生酛チックな仕上がりでした。

それでは、湯川酒造店のお酒、最後の3本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(25年106銘柄目)

銘柄名「燦水木(さんみずき)特別純米 木祖村産あきたこまち 2024BY」

酒蔵「湯川酒造店(長野県木祖村)」

分類「特別純米酒」

原料米「木祖村産秋田酒こまち」

酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「○」

標準小売価格(税込み)「720ml=1375円」

評価「★★★★★(7.6点)」