【報告】10・31三里塚現地調査②~東峰地区
10・31三里塚現地調査②~東峰地区
続いて東峰に移動。
東峰では、今年3月からの年間発着回数22万回化によって2分おきに飛行機が着陸。
この日は風向きの関係で南側着陸だったため、着陸のたびに90デシベル以上の騒音と衝撃波が響いた。
東峰共同出荷場での昼食の後、一坪共有地に建つ東峰団結小屋に。
渡邉充春さん(関西・三里塚闘争に連帯する会、東峰団結小屋維持会)が裁判について説明。
「この共有地は故・石井武さんから恒司さんが相続した。持ち分は18分の1。空港会社は、共有地は空港会社の土地に囲まれ、反対のためだけのものになっていると主張している。しかし、小屋の前には旧・空港公団が大木よねへの強制収用の誤りを認めて、小泉英政さんに無期限で貸している畑と島村昭治さんの畑がある。空港に囲まれているわけではない」
続いて大木よねさん、石井武さんなどが眠る東峰墓地に。
東峰共同墓地の大木よねの墓
東峰神社で頭上20~30mを飛行機が飛ぶ状況を体験した後、私服車のしつこい尾行を受けながら中谷津へ。
中谷津を回っている最中も、上空を絶え間なく飛行機が通過し騒音を撒き散らす。
【報告】10・31三里塚現地調査③~木の根ペンション
三里塚現地調査③~木の根ペンション
続いて、柳川秀夫さん(反対同盟代表世話人)宅を訪問。農作業中の畑にお邪魔して、話をうかがい、一坪共有地裁判の状況について報告した。
最後に木の根ペンションに戻り、清井さんから裁判についての報告を受けた。
ペンションから見た横堀(中央が横堀大鉄塔。右手前は空港会社の監視塔)
清井弁護士は裁判闘争の基本方針について、「第一に一坪共有地の地権者は反対同盟。全国の共有者は反対運動のために名前を貸しているだけ。だから、共有地は売るとか、渡すとかはできない。権利書は必ず所有者が持っているものだが、共有地の権利者は全て反対同盟が持っている。これはこちら側の主張の正しさを証明するものになる。
第二に成田空港会社はシンポ・円卓会議での約束を一方的に破ってB滑走路の供用を強行したことを主張していく」
裁判傍聴について清井さんは、まだ書面を交換している段階。必要な時に呼びかけるので、その時は来てほしいと述べた。
山崎さんは団結小屋強奪訴訟について報告した。
続いて大森武徳さんが木の根プール再開作業について報告。
「プールができたのは小学校低学年の時で、お兄さんたちがプールをつくってくれたと喜んで、自転車で木の根までこいできて入っていた。雑誌で木の根ペンションが『滅び行く光景』と紹介されていたのを見て驚いた。夏から4人でプール再開に向けて、水を抜き、泥をかき出す作業を行っている。」
そして、元々は要塞を造る計画があって鉄骨を入れてあるので、水さえ確保できれば十分使えるとのこと。今後の作業の予定や経費の見積もりなどについて報告。
参加者は一坪共有地裁判運動とセットで来年夏のプール開きを目標に応援していくことを確認した。
【報告】サンデル教授の「正義」論の功罪
グローカル座標塾第7期第1回
サンデル教授の「正義」論の功罪
宮部彰
10月22日に第7期を開講。
第1回は「サンデル教授の「正義」論の功罪」。講師は宮部彰さん。
これまでの講座は、前半が講演で、後半は討論だが、今回は講師が出した例題への賛否を聞いた後、受講者を指名して意見を聞きながら議論するスタイルで進められた。
宮部さんは、「サンデルの正義論が売れる前から正義の必要性を強調していたが、日本の政治文化なのか、違和感を表明する人が多かった。それが、サンデルがブームになったらみんなが『正義、正義』と言い出した。
サンデル正義論の功罪についてはグローカル752号=10月1日号にまとめておいた。
文章の最後に書いた『「コミュニケーション」「比較による相対化と認識の深まり」、最後の結論はいただけないが、その検討作業のプロセスは、賞賛に値する。』というのが私のサンデル評価。サンデルが共同体性の問題性について、どれほど自覚して結論を出しているのかは疑問だ」
続いて、議論の例題として3点を挙げた。
①死刑に賛成か反対か
②2200万円の地方議員の報酬は高すぎるか
③外国人参政権に賛成か反対か
賛成か反対かとその根拠について全員で議論。
① については、2、3人から人を殺した以上、命で償うべきだというよくある意見。
反対論は、社会的な背景を考えずに死刑はおかしい。国家が人を殺すことは許されない。死刑になりたいと殺人を犯した人を死刑にすることが刑罰になるのかなど。
これに対して、あだ討ちは良いのかなどの意見も。
宮部さんからは功利主義の立場から抑止力としての死刑容認論をどう考えるのか。被害者側の報復感情、社会的環境と自己責任の問題などが指摘された。
②の問題は、イチローの高額年棒問題から連想した例題で2人が賛成。
賛成論は、議員活動をしているとそれくらいかかるのではないか。赤字を出さないように自治体を経営してくれるのなら、それくらいもらってもいいのではなどの意見。
反対論としては、「自治体議員の報酬は少なければ少ないほうがいい。アメリカも日本も少ないほうが女性議員が多くなる傾向にある」
それに対して「そうすると金持ちしか議員活動ができなくなる、良い人材が集まらなくなる」という意見に
「給料が高くても良い人材が議員に集まるということはない」と再反論も。
宮部さんは、「全国の地方議員の平均は約6百数十万円。大阪市が一番多くて政務調査費などを除くと年1700万円。米国の50万人以上の自治体議員報酬平均は500万円。日本の同規模自治体の平均は1350万円。比較して妥当なのか考えるべき。
日本の平均給与は約420万円。自治体議員の平均は約6百数十万。日本の公務員の平均年収は7百数十万。
資本金20億円以上の大企業の平均給与は630万円。これはパートも含むから、男の平均では720万円、女は330万円。これらを比較して、妥当なのか。
ただ、日本では議員になると仕事をやめなければならない場合が多い」
白川さんは「議員経験者は議員は平均10年くらいで退職金がないからと報酬が高いのを正当化する」
宮部さんは「欧州型のボランティア的議員が理想。それに近づける努力をすべき」
受講者からは「制度改正が意図した通りが効果を生むとは限らない。直接民主主義を導入したら、生活のために働かなければならない貧乏人は政治に関わっている時間がない。政治参加への貧富格差が逆に正当化される」と反論。
そして、能力と責任の重さで給料に格差があるのは正当だという現在の考え方は正しいのかという点から議論が行われた。
「生きがいがある仕事をしている人ほど給料を安くして、嫌だけど必要な仕事ほど給料を高くすべきだ」「議員としての活動よりも、選挙が議員の一番の活動になっている」
宮部さんは「『優秀な人材を確保する』ためには高い給与というのは功利主義」「公共的観点がない人が2000万円ももらうのはおかしいという批判は“美徳”の立場」「私は普遍的人権という立場なので、最低限の生活が保障される報酬ならばいいと思う」