【報告】座標塾・「脱成長の経済へ――日本は「元気」でも「強く」なくてもよい」
グローカル座標塾第7期第2回「脱成長の経済へ――日本は「元気」でも「強く」なくてもよい」
11月19日にグローカル座標塾第7期第2回「脱成長の経済へ――日本は「元気」でも「強く」なくてもよい」が開かれた。講師は白川真澄さん。
講演では白川さんがこれまで主張してきた脱成長論について確認した後
脱成長をめぐる論点として
①脱経済成長への転換が必然的と言えるか
②脱成長社会は「貧しくなる社会」なのか「豊かで幸福な社会」なのか
③脱成長経済は環境で成長する経済や内需主導型経済成長とどう違うのか
④脱成長経済は税収の減少を招き、社会保障を後退させないか
⑤中国など新興国が牽引してグローバルな経済成長が続く中で日本だけが脱成長に転換するのか
の5つについて検討。
そして現在新興国が高成長を進める中で、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済成長は地球環境悪化、資源の枯渇を加速する。温暖化防止など、民衆の側からのグローバル・ガバナンスが問われている。世界経済は遅かれ早かれ、過剰マネーの暴走を随伴する経済成長の破綻に直面する。
08年金融危機後の財政出動・金融緩和でリーマンショック前の倍の過剰マネーが世界に溢れている。
新興国の高度経済成長がいつまでも続くことは難しい。社会的矛盾の顕在化が経済成長路線にブレーキをかけ、転換を迫るに違いないと脱成長の必要性を再度強調
社会で受け入れられるようになるまでは、脱成長論者はこういう小さい集まりで細々とやっていくしかないのかもとも(苦笑)
議論では「脱成長のためにはコミュニティをどう再生が必要だと思うが、どのように再生していくのか」という意見に。
宮部さんは「再生できるかどうかではなく、再生しなければしょうがないと立てるしかない。NHK『無縁社会』でコミュニティの再建は自由の制約といっていた若者がいたが、とんでもない。現実の社会は自由の制約がたくさんある。どのような自由なら制約するのか中身を議論すべき」
白川さんは「ローカルを再生して、地域内でカネ・物が循環するようにすべき。今は不必要にモノとカネが世界を回っている。それを地域に戻す。ただし、人は自由に移動できる社会であるべき」
「若い時は地域に縛られずに自由に好きなことをやっているのがいい。年をとると隣の状態を知らない状況は困ることになる」
宮部さんの「ネットの島宇宙的なコミュニケーションはリアルの世界の大変さを解決してくれるわけではない」というネット批判に対して
「どうして地域のコミュニケーションは基本的で、ネットは基本的でないといえるのか」と反論も。
他には脱成長論は本来、地球環境問題の深刻化で注目されるようになったはず。環境NGOなどから、脱成長論がもっと出なければおかしい。
地球環境から見て成長主義の限界は明らかになっている。
宮部さんは「いま問われているのは『脱成長か野蛮か』ということだ」と断言。
今の資本主義では資本蓄積しても投資するところがない。投機マネーを規制し地域に戻さないといけないなど議論が行われた。
次回は【第3回】「国民」の超え方――ナショナリズムと対抗するために
2010年12月16日(木) 講師・白川真澄
文京シビックセンター4階会議室B
【紹介】脱成長の経済へ―日本は「元気」でも「強く」なくてもよい
≪グローカル座標塾第7期第2回≫
脱成長の経済へ――日本は「元気」でも「強く」なくてもよい
2010年11月19日(金) 講師・白川真澄
文京シビックセンター3階会議室
参議院選挙の公約で、すべての政党が経済成長率を何%にするかの目標をめぐって競い合うという奇妙な現象が生まれた。「失われた20年」から一日も早く脱け出し「元気な日本」、「強い日本」を取り戻そう、というかけ声ばかりが聞こえてくる。
だが、それらは、人びとが求めはじめている「幸福」や「豊かさ」とは根本的にズレているのではないか。経済成長がなければ雇用の拡大も税収の増大もなく、社会保障も充実しないという神話にサヨナラし、脱成長の経済を構想する。2年前(第Ⅴ期第1回)には環境の面から提唱した「脱成長社会」論を、労働・社会保障・財政・グローバル経済の面からより具体的に展開する。
◎会場 文京シビックセンター(3回目以降は予定)
○東京メトロ南北線・丸の内線「後楽園駅」徒歩1分○都営地下鉄三田線・大江戸線「春日駅」徒歩1分○都営バス「春日駅前」徒歩0分○JR総武線「水道橋駅」徒歩8分
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_shisetsukanri_shisetsu_civic.html
http://www.b-civichall.com/access/main.html
◆午後6時30分開始~9時終了
◎参加費 5回通し・4000円 1回・1000円
◆講師が作成する講義レジュメを使用します。テキストは用いませんが、参考文献は案内します。
◆毎月1回開き、今期は5回(第1、2回は金曜日、第3~5は木曜日)で1期間とします。
◆要申込み 下記へ。(1回だけでも参加可能ですが、期限後は申込できない場合もあります。詳しくは問い合わせください)
◎グローカル座標塾連絡・申込先
東京都千代田区富士見1-3-1上田ビル210工人社
tel03-3264-4195 fax03-3239-4409
E-mail: im43wj【@】bma.biglobe.ne.jp
(【@】=@ 迷惑メール防止のための表記です)
講師プロフィール
白川真澄(第2~5回)
しらかわますみ。1942年生まれ。60年安保闘争、ベトナム反戦、三里塚闘争などの社会運動に関わりつづけ、90年代からは「地域から政治を変える」ことを追求。フォーラム90s、ピープルズ・プラン研究所など理論活動のネットワークづくりにも力を注いできた。著書に『脱国家の政治学』(社会評論社)『アソシエーション革命へ』(共編著、社会評論社)『どこが問題!郵政民営化』(樹花舎)『格差社会から公正と連帯へ 市民のための社会理論入門』(工人社)『格差社会を撃つ ネオ・リベにさよならを』(インパクト出版会)『金融危機が人々を襲う』(樹花舎)ほか。
≪グローカル座標塾第7期≫
【第1回】サンデル教授の「正義」論の功罪
2010年10月22日(金) 講師・宮部彰
【第2回】脱成長の経済へ――日本は「元気」でも「強く」なくてもよい
2010年11月19日(金) 講師・白川真澄
【第3回】「国民」の超え方――ナショナリズムと対抗するために
2010年12月16日(木) 講師・白川真澄
【第4回】ベーシック・インカムは救世主たりうるか
2011年1月20日(木) 講師・白川真澄
【第5回】増税は悪か――「公正な高負担・高福祉社会」
2011年2月17日(木) 講師・白川真澄
〈これまでの座標塾〉
http://www.winterpalace.net/zahyoujuku/
【転載】「北方4島」は「日本固有の領土」ではない。排外主義と軍拡キャンペーンを許すな
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[声明]
「北方4島」は「日本固有の領土」ではない。「国益」を振りかざした排外主義
と軍拡キャンペーンを許すな
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11月1日、ロシアのメドベージェフ大統領は、旧ソ連時代を含めて国家元首として初めて、千島列島(ロシア名:クリル諸島)南端のクナシリ(国後)島を訪問した。菅首相は同日の予算委員会で「北方四島はわが国の領土であり、その地域にロシア大統領が来たことは大変遺憾」とメドベージェフのクナシリ(国後)訪問に抗議した。菅内閣は11月2日、その「遺憾の意」を実質的に示す措置として河野駐ロ大使の一時帰国を指示した。
「尖閣諸島」での海保巡視船による中国漁船船長の逮捕事件を通じて「尖閣=日本の固有の領土」論がなんの検証もなくまき散らされ、「中国の脅威」という排外主義キャンペーンが煽られているのに続き、メドベージェフのクナシリ訪問を機に、ここでも「北方領土=日本固有の領土」論が繰り返されている。
海保関係者によると見られる「中国漁船衝突ビデオ」のネット上での流出ともあいまって、「尖閣」「クナシリ」問題は、「菅政権の弱腰外交・国益への打撃」を攻撃するかっこうの材料となっている。
われわれはここで改めて、「北方四島は日本固有の領土」という主張の誤りを指摘し、あらゆる領土主義・植民地主義の主張とたたかうよう訴える。
政府は「北方領土」について無人の地を「和人」が独力で開拓したかのように述べる。しかしそれが事実ではない。アイヌモシリである北海道と千島の領有とはアイヌ民族など先住民族の抵抗を残虐に弾圧して、その土地を奪い取った侵略と植民地化の結果だった。
われわれは「北方領土」問題を語る際にこの侵略と植民地化の歴史を、まずしっかりと踏まえる必要がある。
アジア太平洋侵略戦争で敗北した日本は、1951年9月に調印したサンフランシスコ講和条約で千島列島ならびに、1905年、日露戦争後のポーツマス条約で奪取した南カラフト(サハリン)に対する「すべての権利、権原、請求権」を放棄した。サンフランシスコ講和条約を承認するかぎり、日本は千島全体への一切の権利を主張できなくなったのである。当時の吉田茂首相は講和条約調印に先立つ国会報告でも、エトロフ(択捉)、クナシリを含む全千島列島への権利を放棄した、と確言している。西村熊雄外務省条約局長も「条約にある千島列島とは北千島と南千島の両者を含む」と答えており、ハボマイ(歯舞)、シコタン(色丹)両島については請求権を有するものの南千島に属するクナシリ、エトロフについては有しないことが政府の統一見解となった。
それが変更されたのは、1955年からの日ソ交渉で当時のソ連が「ハボマイ、シコタン」の返還に応じる姿勢を見せ、重光外相が「二島返還」での日ソ平和条約調印に傾いたことを契機にしている。当時の米ソ冷戦の中で米国のダレス国務長官は、日ソ平和条約ムードに強烈な危機感を持ち「日本がクナシリ、エトロフのソ連領有を認めるならば米国は沖縄を併合することができる」という強力な恫喝をかけた。日米安保改定交渉を控えていた日本政府は、このアメリカの圧力に屈し、「二島返還」での日ソ平和条約締結を断念したのである。
ここで日本政府は、従来の国会答弁をくつがえし「サンフランシスコ条約で放棄した千島にはクナシリ、エトロフは含まれない」という詭弁で「四島返還」を「政府統一見解」とすることになったのである。「四島返還」論、「クナシリ、エトロフ」は「日本固有の領土」という主張は日本を米国に従属した「反ソ陣営」に縛りつけようとした米国製のものであった。それは日米安保改定とセットのものだった。そのために「二島返還」による日ソ間の平和条約交渉の決着が排除されたのである。
サンフランシスコ講和条約を受け入れるという日本政府の立場と、「クナシリ、エトロフは日本固有の領土だから返還を」という主張は決定的に矛盾している。それは国際条約の観点から言っても「正当性」を欠くものである。「北方領土返還」運動は、元住民の帰還要求や安全な漁業権を求める漁民の要求を逆手に取った、きわめてイデオロギー的な「反ソ」運動として国家によって組織されたものだった。
そこではアイヌ民族など北方先住民族の自治・自決権は完全に無視され、日本民族主義・領土主義の立場が貫かれた。
ここには1855年の日ロ通好条約や1875年の「千島・樺太交換条約」が、先住民族を踏みにじった日ロ両国間の領土再分割であり、アイヌモシリの侵略・植民地支配の表現であったという認識が完全に欠落している。
いまこそ「固有の領土」論による「北方領土返還」要求に反対し、アイヌ民族など先住民族の権利の回復を根底にすえた問題の解決をめざす必要がある。そのためには日本政府が「四島返還」の主張を放棄することが前提であり、日本の「国益」を振りかざした「日米同盟」論による自衛隊軍拡に反対することが決定的に重要なのである。
2010年11月10日
反安保実行委員会
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