【転載】「北方4島」は「日本固有の領土」ではない。排外主義と軍拡キャンペーンを許すな | 格差と戦争にNO!

【転載】「北方4島」は「日本固有の領土」ではない。排外主義と軍拡キャンペーンを許すな

**********************************
[声明]
「北方4島」は「日本固有の領土」ではない。「国益」を振りかざした排外主義
と軍拡キャンペーンを許すな
**********************************



 11月1日、ロシアのメドベージェフ大統領は、旧ソ連時代を含めて国家元首として初めて、千島列島(ロシア名:クリル諸島)南端のクナシリ(国後)島を訪問した。菅首相は同日の予算委員会で「北方四島はわが国の領土であり、その地域にロシア大統領が来たことは大変遺憾」とメドベージェフのクナシリ(国後)訪問に抗議した。菅内閣は11月2日、その「遺憾の意」を実質的に示す措置として河野駐ロ大使の一時帰国を指示した。
 「尖閣諸島」での海保巡視船による中国漁船船長の逮捕事件を通じて「尖閣=日本の固有の領土」論がなんの検証もなくまき散らされ、「中国の脅威」という排外主義キャンペーンが煽られているのに続き、メドベージェフのクナシリ訪問を機に、ここでも「北方領土=日本固有の領土」論が繰り返されている。
 海保関係者によると見られる「中国漁船衝突ビデオ」のネット上での流出ともあいまって、「尖閣」「クナシリ」問題は、「菅政権の弱腰外交・国益への打撃」を攻撃するかっこうの材料となっている。
 われわれはここで改めて、「北方四島は日本固有の領土」という主張の誤りを指摘し、あらゆる領土主義・植民地主義の主張とたたかうよう訴える。
政府は「北方領土」について無人の地を「和人」が独力で開拓したかのように述べる。しかしそれが事実ではない。アイヌモシリである北海道と千島の領有とはアイヌ民族など先住民族の抵抗を残虐に弾圧して、その土地を奪い取った侵略と植民地化の結果だった。
 われわれは「北方領土」問題を語る際にこの侵略と植民地化の歴史を、まずしっかりと踏まえる必要がある。
 アジア太平洋侵略戦争で敗北した日本は、1951年9月に調印したサンフランシスコ講和条約で千島列島ならびに、1905年、日露戦争後のポーツマス条約で奪取した南カラフト(サハリン)に対する「すべての権利、権原、請求権」を放棄した。サンフランシスコ講和条約を承認するかぎり、日本は千島全体への一切の権利を主張できなくなったのである。当時の吉田茂首相は講和条約調印に先立つ国会報告でも、エトロフ(択捉)、クナシリを含む全千島列島への権利を放棄した、と確言している。西村熊雄外務省条約局長も「条約にある千島列島とは北千島と南千島の両者を含む」と答えており、ハボマイ(歯舞)、シコタン(色丹)両島については請求権を有するものの南千島に属するクナシリ、エトロフについては有しないことが政府の統一見解となった。
 それが変更されたのは、1955年からの日ソ交渉で当時のソ連が「ハボマイ、シコタン」の返還に応じる姿勢を見せ、重光外相が「二島返還」での日ソ平和条約調印に傾いたことを契機にしている。当時の米ソ冷戦の中で米国のダレス国務長官は、日ソ平和条約ムードに強烈な危機感を持ち「日本がクナシリ、エトロフのソ連領有を認めるならば米国は沖縄を併合することができる」という強力な恫喝をかけた。日米安保改定交渉を控えていた日本政府は、このアメリカの圧力に屈し、「二島返還」での日ソ平和条約締結を断念したのである。
 ここで日本政府は、従来の国会答弁をくつがえし「サンフランシスコ条約で放棄した千島にはクナシリ、エトロフは含まれない」という詭弁で「四島返還」を「政府統一見解」とすることになったのである。「四島返還」論、「クナシリ、エトロフ」は「日本固有の領土」という主張は日本を米国に従属した「反ソ陣営」に縛りつけようとした米国製のものであった。それは日米安保改定とセットのものだった。そのために「二島返還」による日ソ間の平和条約交渉の決着が排除されたのである。
 サンフランシスコ講和条約を受け入れるという日本政府の立場と、「クナシリ、エトロフは日本固有の領土だから返還を」という主張は決定的に矛盾している。それは国際条約の観点から言っても「正当性」を欠くものである。「北方領土返還」運動は、元住民の帰還要求や安全な漁業権を求める漁民の要求を逆手に取った、きわめてイデオロギー的な「反ソ」運動として国家によって組織されたものだった。
 そこではアイヌ民族など北方先住民族の自治・自決権は完全に無視され、日本民族主義・領土主義の立場が貫かれた。
 ここには1855年の日ロ通好条約や1875年の「千島・樺太交換条約」が、先住民族を踏みにじった日ロ両国間の領土再分割であり、アイヌモシリの侵略・植民地支配の表現であったという認識が完全に欠落している。
 いまこそ「固有の領土」論による「北方領土返還」要求に反対し、アイヌ民族など先住民族の権利の回復を根底にすえた問題の解決をめざす必要がある。そのためには日本政府が「四島返還」の主張を放棄することが前提であり、日本の「国益」を振りかざした「日米同盟」論による自衛隊軍拡に反対することが決定的に重要なのである。


2010年11月10日


反安保実行委員会


〒101-0063
東京都千代田区神田淡路町1-21-7 静和ビル2A
淡路町事務所気付
Tel&Fax:03-3254-5460
メール:hananpojitsu@jca.apc.org
URL:http://www.jca.apc.org/hananpojitsu/