【報告】6月18日講演会「世界食糧危機の犯人は誰だ?~G8サミットと食糧問題」
6月18日講演会
「世界食糧危機の犯人は誰だ?~G8サミットと食糧問題」
6月18日、国連・憲法問題研究会の主催で講演会「世界食糧危機の犯人は誰だ?~G8サミットと食糧問題」が開かれた。
講師は佐久間智子さん「環境・持続社会」研究センター(JACSES)。
現在の食糧危機の「犯人」について以下のような講演を行いました
食糧高騰の背景はバイオ燃料、原油高騰による農資材・燃料コスト増、新興国の需要増、豪州の異常気象、投機マネーの流入などからなる
食糧暴動の背景に、途上国は食費の割合が高い(30~70%)ことがある。先進国は13~20%。日本は先進国では高いが20%、低い国は13%
エンゲル係数が低い方が文明的という考え方は間違っている。生産者にきちんと支払うべき
「途上国=輸出国、先進国=輸入国」という観念が日本では強いが間違い。輸出国10カ国は中国以外全て先進国
先進国が輸出補助金によるダンピングで穀物市場をおさえ、アグリビジネスが世界市場を支配している
途上国の多くは主食の農業生産が自由化で破壊され、輸入国になっている
農業補助金の実態は極めて不透明で王族やアグリビジネスが受給している
WTO交渉で農業補助金は削減の方向だが、エネルギー補助金に振替えられ、結局カーギル社など同じ企業=アグリビジネスが受け取る
バイオエタノールは米・ブラジルが二大生産国。輸出のためのエネルギー作物生産で、パーム椰子、サトウキビ、キャッサバ、トウモロコ
シ生産が拡大。作物価格が高騰している
だが、バイオ燃料ブームも地球に有害という批判をうけて、ブームが終焉する可能性が出てきている
日本の自給率は低下を続けているが、日本と同じ先進国で純輸入国は10カ国程度
食糧の対米依存は、日本を「反共の砦」とするという反共政策とならぶ米国の戦後対日政策の結果だ
近代農業は化石燃料を畑にぶちまけてるようなもので持続可能ではない。儲かるのは食品加工や流通段階で、生産者にはほんの少ししか入
らない
その地域にあった伝統食が環境に良い農業につながる
【報告】派兵恒久法を許さない6・14集会
派兵恒久法を許さない6・14集会
6月14日、派兵恒久法を許さない6・14集会が東京で行われた。主催は新しい反安保行動をつくる実行委員会(反安保実)。参加者は五十九人。
集会では、川口創さん(名古屋イラク訴訟弁護団事務局長)と島川雅史さん(立教女学院短大教員)が講演した。
川口さんは「イラク派兵差し止め訴訟は全国11地裁で提訴され、4月17日名古屋高裁でついに違憲判決を勝ち取った。政府は門前払いしろというだけで、合憲とは主張できない。違憲だと自認している。
判決はファルージャやバグダッドでの米軍の掃討作戦の実態を克明に認定。イラクでの空輸活動が憲法九条一項違反と認めた。判決文には珍しく読みやすい文章で、裁判官の人としての怒り・悲しみが書かれている。私たちが輸送した米兵が子どもを含むイラク人を殺している。判決は、平和的生存権の具体的権利性を認め、原告について『平和憲法下の日本国民として共感すべき部分』と書いている。派兵恒久法にも盛り込まれる自衛隊の『平和協力』の実態を判決は指摘している。
派兵恒久法石破案によれば、『我が国として特に必要であると認める事態』と政府が認定すれば全ての活動がOK。イラク特措法では『安全確保支援活動』として米軍を輸送している。恒久法では、自衛隊が安全確保活動=掃討作戦を行うことも可能。判決は空自輸送を『武力行使一体化』と認定したが、恒久法では自ら武力行使する。明文改憲は必要ないことになる。
違憲判決を活かそう。派兵恒久法が違憲であることは明確だ」
島川さんは、湾岸戦争から派兵恒久法へ、「後方支援」から「全面的一体化」へと続いてきた海外派兵について講演した。
【報告】NHK番組改変で最高裁が不当判決
NHK番組改変で最高裁が不当判決
6月12日、NHK番組改変事件で最高裁は、原告の「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)逆転敗訴の不当判決を出した。
この事件は女性国際戦犯法廷を扱った二〇〇一年一月三十日放送のNHKのETV2001の「問われる戦時性暴力」が、政治家と右翼の圧力を受けたNHK上層部の現場への介入によって、放送直前に改変されたもの。
取材時の説明に反した番組改変に対して、01年7月、VAWW-NETジャパンが提訴した。一審東京地裁は孫請にあたるドキュメンタリー・ジャパンの責任しか認めなかった。控訴審の途中、チーフプロデューサーだった長井暁氏の内部告発によって安倍晋三、中川昭一ら右翼政治家がNHKに介入し圧力をかけた事実が明らかとなり、二審では全面勝訴した。
だが、最高裁はNHKの期待権侵害と説明義務違反を認めた二審判決を否定。取材対象者の期待・信頼が法的保護の対象になるのは、取材に応じることで著しい負担が生じ、取材側が「必ず取り上げる」と説明したような極めて例外的な場合に限られるとして、請求を棄却。二審が認めた安倍ら政治家の圧力・介入については正面から取り上げることを避け、判断を示さなかった。判決後、安倍は「朝日新聞報道が捏造であることが再度確認された」と判決内容を歪曲して居直った。
判決は前々日6月10日のBRC(放送と人権等権利に関する委員会)決定が、昨年の高裁判決に関するNHK報道が不公正だと判断したのとはあまりにも対照的だった。
判決について、原告側は、「メディアの経営者の『編集権』を不当に拡大させ、たとえ、政治家やスポンサーによる不当な圧力に基づく編集を自由に行うことを認めることとなる」「この判決は、憲法二十一条を『市民のための表現の自由』から『政治家のための表現の自由』に変貌させた歴史的判決」と批判した。
夜に開かれた判決報告集会で、西野瑠美子さん(VAWW-NETジャパン共同代表)は「改変事件には四つの側面がある。一つは、政治家がNHKに不当介入し自立を侵害した。第二にNHK上層部が現場に介入し現場の表現の自由を侵害した。第三に『慰安婦』を『商行為だ』とするメディアセクハラ。四つ目にNHKが自ら表現の自由を手放し、市民・視聴者の知る権利を裏切った。そして、NHKは信頼回復の道を断ち、政治介入を容認した」
緑川由香弁護士は、「これで取材対象者はどうやってメディアと信頼関係を構築できるのか」と判決を批判。
飯田正剛弁護士は「結論が先にあった判決だ。実際の事件はNHK上層部、現場、取材対象者、政治家の四者が関係しているのに、判決は取材者と対象者という抽象論に逃げた。そして、政治家の圧力問題を矮小化した。最高裁ではなく最低裁判所だ」
西野さんは七年間の裁判の意義として「裁判を通して、この問題を社会に発信することができた。高裁判決に対して、メディアに萎縮効果をもたらすという批判が一部であったが、萎縮効果をもたらしているのは何か。メディアが権力を怖がって自主規制している。守られるべきは権力を批判する表現の自由」
特別発言で松田浩さん(元立命館大学教授)は「NHK上層部による安倍への説明は明らかに検閲。判決は問題をすり替えている。NHKも最高裁も権力におもねる仲間。根底に社会の歪みがある。メディアが権力監視の役割を果たせなくなった。
NHK幹部が自民党の政調部会に出席して予算案の説明をし承認を受けているのは明らかに放送法違反。現場に憲法なしだ。放送法違反の現実があらゆるところにある。運動はこれからだ」
田島泰彦さん(上智大学教授)は「この裁判は『市民対表現の自由』と理解されているかもしれないが、その前の段階。
第一に編集の自由が大事にされたのか。公権力が乱暴に介入してはならない。
第二に現場との関係。本来、現場が自由闊達に議論する関係でなければならない。幹部が番組をズタズタにし、NHK自らが自由を掘り崩した。
現場への介入と取材対象者の期待権・説明義務を同次元で受け止めるべきではない。
今回のように番組内容がズタズタにされたら、法律が出て行って自由を守るべき。この点を最高裁は受け止めなかった」
梶村太一郎さんは「NHK幹部に安倍晋三が語った『持論』は国際的に全く通用しない。昨年オランダ議会決議は安倍発言を名指しで批判している。日本は一世代遅れている」
東海林路得子さん(VAWW-NETジャパン共同代表)は「おかしいことはおかしいと言い続けよう」と結んだ。