プロセスアプローチの本質
プロセスアプローチとはわかりにくい言葉だが、ISO9001の
最も基本的な考え方である。世の中にこのプロセスアプローチ
をわかりやすく解説しは本はあるのだろうか。残念ながらない。
なぜか?それはコンサルタントも審査員もプロセスアプローチ
をわかっていないからである。だから企業の人たちがわかる
わけがない。審査員はわかっていないといったが、ごく一部の
人たちはわかっている。コンサルタントは全滅的である(限られた
経験の中で、いままで審査員より優秀なISOのコンサルタントに
会ったことがない)。
プロセスアプローチとは次のことをいっている。
1)ひとつの同じ目的とする仕事を集めてプロセスと定義する
2)プロセスの手順をきめる
3)プロセスの経営資源を決める
これらのことから。目的を達成できるかどうかを評価する。
簡単なのは料理である。
材料とレシピと手順が決まっている。
そのとおりやれば、期待する料理がアウトプットされるか
どうかである。
正しくやれば正しいものができる この仕組みが
プロセスアプローチである。
正しい是正処置をしよう!
是正処置の意味は皆さん理解しているはず。
なのに正しい是正処置をあまり見かけことがない。
不適合が発見された。是正処置としては
原因
①手順が不明確だった。
②担当者の認識がなかった
対策
①手順の文書化
②担当者への教育訓練
大体このパターンではないか?
つまり原因は人の問題であるということなのか?
確かに問題を起こしたのは人である。
しかし、システムの問題はなかったのだろうか?
問題解決のアプローチに問題があるのではないか。
ヒューマンエラーは避けられない。
これは当たり前である。問題はその程度で、
力量の適切性が問われる。また、ポカヨケ
の仕組みはあるのだろうか。
まずここでは、是正処置を短絡的に人の問題に
しないことを主張したい。
では他の問題はないのか。
例えば、設計がウマクないので
作業性の悪い製品になっている。
生産技術部が作った機械は故障が多い。
これらを予防する方法は何か?
そのシステムとしては次のことがある。
①設計段階による関連部署のチームによる設計審査
②試作段階での検証
③過去の不具合データベースの活用(カコトラとも呼ぶ)
これらができていたかどうかを原因分析として調査すべきである。
久々の負け組企業との会談
久しぶりに営業で地方のとある企業に訪問した。
顧客からの要請があるのでISOの取得を検討しているという。
社員は14名。会社の雰囲気に活気がない。
5Sはよくない。人に覇気がない。
どうみても負け組企業である。
そもそも顧客からの要請というのは気に入らない。
もっと自発的な発言がでないのか。
幹部が火の玉になっていない企業に
将来はない。もう負け組なのだから死ぬ気で
仕事に打ち込まなければ活路はない。
ISOにお金をかけるより廃業した方がよいのでは?
普段頑張っている企業を見ているだけに
ああ こんな企業もあるのだと暗くなった。
マネジメントのシステムアプローチ
品質マネジメントの8原則にマネジメントへのシステムアプローチがある。
これは一体何を意味しているのだろうか。
マネジメントとは経営である。
システムとは何か。思いつくのは組織、制度だろう。
経営への組織的なアプローチ。経営への制度的なアプローチ。
なるほど少しイメージがついた。
経営を組織構造として考えると、階層のムダやプロセスのムダが見えてくる。
フラット組織や第一線の担当者に権限を委譲した組織 逆ピラミッド組織がある。
判子が10個もある稟議書はムダである という提言はシステムアプローチである。
制度はどうだろうか。
官僚的風土の組織。即ち、縦割り。失敗分析をしない。手続きが複雑。
正にシステムアプローチである。
ただし、これらの問題は主観で判断せず、事実前提にもとづいた審査結果として
提示しなければならない。
企業の体質にメスを入れる審査。これがシステムアプローチである。
現場の技能をどうみるか
「この機械は高精度を要求される加工なのでAさんしか扱えないのですよ。
だから他の人にはできませんね」
「他の人への教育訓練ですか?まあ今言ったように職人芸なのでAさんに任せて
いますよ」
このような仕事を聖域化していることはないだろうか?もしあれば
問題である。だってAさんはもう定年なのだから。
現場の技能をどうみるか考えてみよう。
もう十数年前の話。ある金型加工の2代目社長は将来の経営に不安があった。
金型職人は腕がよいが、仕事が自動化されていないので時間がかかって
効率が悪い。そこで冒頭のように誰でも同じ精度で加工できるように教育訓練を
試みたが現場の抵抗にあう。彼らが引退した後はどうなるのか不安を覚えていた。
そこで社長は一大決心して自動機を投入し、誰でも加工できるように機械化した。
古くからの職人の中には辞めるものもでたが仕方ない。若い者に熟練職人に劣
らない技能を覚えさせた。初めは不良もでたがあきらめずに耐えた。離れていく
顧客もでた。しかし、なんとか品質が確保できるようになった。当時は自動機の
導入の走りだったので、つまり業界全体が同じような悩みをもっていたので、
早い決断はライバルに差をつけることができた。経営者の先見性と現場の
頑張りが功を奏した。
次は別の話。この会社は組み立ての多能工化を試みた。世間では
一人作業、セル方式や多能工化がブームのようになっていた。
顧客も多能工化を勧めて、原価低減をせよという。
そこでラインを組み替えてやってみた。最初はうまくいかなかいのは
仕方がないと見ていたが、なかなか習熟度が上がらない。不良はでるは、
応援をださなければならないわで混乱した。
結局、多能工化はあきらめて元のラインに戻した。
何がうまくいかなかったのか。冒頭の例はうまくいったのに。
どうもそこには作業者の意欲の差があったのではないか。冒頭の例では
若手は自分も一人前になって仕事をしたかったが聖域に入るのには徒弟
制度ならぬ修行に時間がかかる。そんなときに機械化になって仕事を任される
ようになった。
後者の例は企業の都合での多能工化がきっかけである。多能工化は当然ながら
特定の作業者に負担をかける。これは時代の流れなので仕方ないのであるが
作業者にはインセンティブを与えたとしても、負担の方を重く感じたのだろう。
第三者が現場を見て、何故、多能工化をしていないのか?と言うのは
たやすいが企業には企業の都合がある。試みたが出来ないという言い訳を
もっている。このような時、どのようなアドバイスをすればよいか。
再度、トライしてみてはどうか?
インセンティブを工夫してはどうか?
経営戦略は問題ないか?
経営者もジレンマを抱えていることだろう。
現場の技能の問題はマネジメントの問題である。
追記:機械化や多能工化の導入はチェンジマネジメント(改革のマネジメント)
である。その失敗は長期にわたって企業の収益を左右する。くれぐれも
慎重に成功裡に進めることである。
リーダーのタイプ ウサギとカメ
リーダーのタイプといっても様々であるが、ここではウサギとカメに例えた
リーダーのタイプを考えてみる。
ウサギとはIQが優れた人で、カメはEQが優れた人である。
若いときは仕事がよくできるということでウサギがカメを抜いて先を進む。
カメは周りの感情に配慮する分、仕事が遅いが信頼を確実に勝ち取っていく。
ウサギはバリバリ仕事をして部下をもつようになる。しかし、ここで壁にあたる。
部下はウサギタイプばかりでなく、カメもいればその他のタイプもいる。
リーダーはそれらをまとめてモチベーションをあげなければならないが、
意に反して仕事が進まない。一人でできる仕事はたかが知れており、
チームの総合力が問われる。こうなるとウサギは苦手である。
一方、カメはチームをまとめるのが上手い。メンバーの感情に
配慮しつつ確実に業績をあげる。しかし、判断力やスピードに難がある。
ウサギがよいかカメがよいかは一概に言えない。
組織の置かれた状況によって適した人材が配置されればよいだけの
ことである。
ただ言えることは、部下は指示すれば動くというのは勘違いである。
それに気づかないリーダーが多すぎるのではないか。
部下を動かすリーダーシップなんて本が出ているが
そんな小手先のテクニックで部下が動くほど甘くない。
審査をしていて、不徹底とかポカミスとか ヒューマンエラーの
言い訳をよく耳にするが本当の問題はどこにあるのだろうか。
指示が守られない、ルールが守られないことが多い部門は
リーダーシップのあり方を見直すことが問われているのでは
ないだろうか。
設計審査のノウハウ(5)
設計とは何か?と質問されると何と答えるだろうか?
設計は要求事項を図面や仕様書に置き換える活動
といってよいでしょう。
例えば、すわっていて疲れない椅子が欲しいという要求事項を
具体的に図面や仕様書に置き換えるのである。
従って、要求事項が何か?これが明確でないと設計は
間違ってしまう。即ち、設計のインプットの明確化である。
「ウチはお客様から図面をもらうのでそれで明確です。」と設計者がいった。
「わかりました。この特性はJIS○○を引用されていますね。
そのJISを見せて下さい。」
「それはありません。」
「どうやってJISの内容を確認されているのですか?」
「お客様の指定ですのでそれを信用していますし、ウチで
それを修正することはありません」
「もし、客が間違っていたらどうしますか?その時は
製品自体が不良品になりますよね」
「それは客の責任です」
「その製品のせいで人身事故がおきたら誰の責任ですか?
100%客の責任といえますか?」
「それは‥‥」
このような無責任設計が中小企業ではありえる。
要求事項は確かに明確になっている。しかし、
それを鵜呑みにせず、設計者は設計審査、検証、
妥当性確認を怠ってはならない。
これはリスクマネジメントの問題でもある
人材不足の謎
経営者はいつも人材不足という。
でもこれは逃げ口上であると思う。
人材が育っていないのは
経営者の責任である。
人材って何?ときくと それはマネジメント能力を意味している
ことが多い。
確かに中小企業ではマネジメントのできる人が不足している
所が多い。
設計部長 製造部長。彼らは経験もあるし、部下の信頼もある。
でも何か足りない。それはマネジメント能力である。
そこで中間採用で元○○部長の肩書きのある人を雇う。
しかし当たり外れが大きい。部長になったのは単に世渡りが
上手かっただけでマネジメント能力がない人が多い。
マネジメント能力って何だろう?大体
次のようなことができる人をいうのだろう。
本質的な課題設定ができる
それを実行する計画がつくれる
コミュニケーションが上手い 信頼できる 動機づけができる
レビューし、分析できる
改善の行動ができる リーダーシップを発揮
実際はこれらの全てができるとは限らず
レビューはできるが計画ができないとか
得て不得手があるようだ
そんな中小企業で、社長自身がマネジメント能力を失っている
所も多い。
「企業戦略がわかりにくですね。もう一度説明してもらえますか?」
「そんなことは実際、わからん。来年の受注があるが、再来年は
どうなるか読めない。浮き沈みが激しいのだよこの業界は」
「社員は社長の指示がないといっていますよ」
「確かに、コミュニケーションはできていない」
「企業の将来はどうお考えですか?」
「人材をつくっていかないといけない」
「どんな人材が必要ですか?」
「マネジメントができる人だな」
*「マネジメントができないのは社長あなたでしょう」
というのをこらえて
「どの部門に必要ですか?(営業?設計?製造?)
どうやって人材をつくりますか?」
こんな感じで、社長のプライドに配慮しつつ
人材不足は社長の問題であることを
気づいてもらうように問答を続けることがある
リーダーシップ というと聞こえはよいが
ワンマンタイプが多い こういう企業は
部長が指示待ちになってしまう体質になる
社長に勢いがある時はよいが 社長が
静かになってしまうと企業の動きそのものが
止まってしまう
すると社長は人材不足と嘆く。
社長も問題であるが、中堅社員ももっと
戦う姿勢を示して欲しい
「今年の教育訓練計画はこれです。」
「今、市場の要求はソフトウエア設計能力ですよ。
その人材育成計画が入っていないではないですか」
「でも社長の承認をもらっていますので」
「さっき、ソフトウエアが大事といったのに矛盾
しているでしょう」
「その問題とこれとは別に考えています」
「社長に計画の修正をしてもらえばいいのでは?」
こういう問答からいかに部長と社長のコミュニケーション
がおざなりになっているいるのか、教育訓練計画が
腹を割った話がされずに、事務処理的に進められて
作成されたのかが伺える
人材不足の謎は、社長から始まって
社員で終わる というのが真実のようである
設計審査のノウハウ(4)
今までの一連の設計審査で何か忘れていないか?
それは品質保証水準である。
宇宙ロケットのような一品製品では不良ゼロが品質
保証水準となる。
では、量産する部品でも不良ゼロか。理想はそうだ
ろうし、ものによってはゼロである。しかし、10PPM
以下というような現実的な品質保証水準を顧客
は要求してくることが多い。
この10PPMという品質保証水準をどのように
達成するかを設計で作ることが必要である。
*10PPMは一例にすぎず、要は狙った品質保証
水準をどのように達成するかである。
例えば、コンピューターのプログラムを組むとき、
バグの発生がある。それは統計的にどのくらいの
ボリュームのプログラムをくむとどの程度のバグが
でるか予想がつく。
コピー機を開発したとき、市場でどのくらいの故障が
おきるか予想がつく。それにあわせて交換部品や
保全マンをあらかじめ準備しておく。コピーは不良
ゼロであるべきだからといって何も準備がなければ
クレームの嵐を受けて顧客は離れていく。
不良率をいかに予測するかは技術力が問われる
マターである。
設計にあたって、既存製品があればそれをもとに
不良率が予想できる。それに改善を加えることに
よってさらに低減した不良率にできるだろう。
不良率の予測には大きく二つの方法がある。要素
ごとの不良率を集積して機器全体の不良率を予測
する方法。もうひとつは既存製品から類推する方法である。
どちらも必要なことは不良を起こす要素(製品、部品、材料、
作業)の不良率をデータベースを保持しておくことである。
これが品質保証水準を決定する拠り所になる。
品質保証水準をどう設定するかは、製品の構造、
使用する部品・材料、組み立て方法などから決まってくる。
不良の目標ばかり低くしても、実際の設計が対応できて
いないと絵に描いた餅である。
この場面で使用する統計的手法をあらかじめ定めておくとよい。
お奨めはFMEAとCpkである。
こうやって決めた品質保証水準が実際に達成できている
かどうかは、量産でよく検証してみることである。
それを財産とし、技術力のレベルアップにつなげていく。
今や抜取検査で%の不良率をみつけようとしているようでは、
検査費用もかかるし、抜き取りなので不良流出は起きて
競争力を殺ぐだけである。
あくまでも工程で品質を作りこむようにして抜取検査を廃止
すること それは設計で決まることを忘れないでほしい。
設計者に開発した製品の不良率はどのくらいだと予測しますか?
と質問して根拠が示せないとプロとはいえない。
「量産をやってみないとわかりません」
「ゼロを目指しました」 のようなことでは信頼がおけない。
技術者にはモノゴトに対する冷静さと対極的に見る目が欲しい。
JR西日本とISO
JR西日本の脱線事故で多くの死傷者をだした。JR西日本がISO9001
をもっているかどうかは知らないが、もしISOをもっていればあの事故は
防げたのだろうか。もっていても防げなかったのだろうか考察してみた。
キチンと審査すれば、日ごろから制限速度を守っていない事実を発見
することができるはずである。しかし、JRはそれに対して了解事項とし
て120KmまではOKとしているというような不文律があることをいう
だろう。やりとりを想像してみた。
「制限速度を守っていない。これは問題です」
「120KmまではOKしている。それで今までも問題はない」
「脱線しない確率はどのくらいですか」
「数兆分の一です。つまり、現実的には脱線はありえないというこ
とです。120Kmをこえれば話は別ですが」
「正確に確率をだして下さい。中目黒の日比谷線の脱線事故も
同じ話がありました。結局、見過ごしたばかりに事故を起こ
してしまいました。
許容リスクを事実前提で確認することが必要です。」
「脱線確率は○○(数兆分の一ほどの極小)です。」
「これは100Kmをこえるところから脱線確率が急上昇してい
ます(それでも極小の確率)。許容できる確率は
いくらですか?」
「△△を超えれば問題です。そのためのATSをつけています。」
「福知山線には新型ATSがついていません。ここで100Km
をこえることは車両運転記録から日常化しています。危険な
状況であり、手を打っていないことは問題です。
改善処置が必要です。」
運行ダイヤからして100Kmを超えない運転は無理な
状況である。従って、この指摘をよしとはしないだろう。新型ATS
をつける計画はあるので、それまで待っても良いのではないか。
その間は注意して運行する。など 逃げをみせる。
行政指導や規制から直接逸脱しなければ、強制力は無く、
組織の経営判断に委ねられる。
ここでは第三者(審査員)の立場で、事実前提で許容リスクを
明確にし、実態のリスクをどう処置するかを経営者に迫る。
「改善処置をとって下さい。その効果確認がされないと
ISOは取り消しです」
「冗談でしょう。ATSをつける必要性は認識して計画を
もっている。今までも問題が無い。何故、いまさらISO
取り消しですか?」
「極めて今の運行は重大瑕疵で、事故の可能性があります」
「ダイヤは経営の最高意思決定です。ダイヤ変更は無理です。
理想論を振りかざすのは止めて下さい。」
「理想論ではありません。事実前提のもとに今の脱線確率は
許容範囲を超えています。」
「わかりました。おたくの審査を受けるのは止めます。
審査機関を変更します。
どうぞISOを取り消して下さい。
ほかの機関からのISOをとります」
まあ、結末はこうなって、融通のきく審査機関が乗り換えるの
ではないか。
他の機関に変えてISOが取れるのも問題なのだが。。。
行政は今のダイヤの妥当性確認を行っていないのだろうか???
補足;上記のようなストーリーでは実は高度な審査技術
が駆使されている。
・福知山線の、それも一部のカーブのある箇所のリスクの高い箇所の特定
・運行記録の分析
・脱線確率の分析
・リスク許容範囲の明確化
これらを時間をかけずに収集分析し、理論武装して経営者に
判断を迫ることになる。その間、組織の担当者の協力と情報提供
がなくてはできない。組織ぐるみで事実を隠されれば手が出ない。
時間との戦い、データ分析能力、担当者の協力‥
二重三重の壁を乗り越えなければ経営者と本質問題について
対峙できない。
内部監査や行政監査の結果を参照情報としてみるのもよいが
組織の体質から問題提議されているとは想像しがたい。
そのような"形式監査”の情報を鵜呑みにしないことも要注意。