「殿」と「様」~「殿」となるのはこの場合(手紙・メール考9) | Prof_Hiroyukiの語学・検定・歴史談義

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「二重敬称」に気を付けましょうhttp://ameblo.jp/prof-hiroyuki/entry-10685576196.html の続きです。


前回は「二重敬称」となる「誤りやすい例」について解説致しましたが、「様」よりも「先生」が優先である事を付け加えれば、これで敬称「各位」「先生」については大体の注意点を述べる事が出来たと考えています。

御中も「団体・組織名」+「御中」の図式さえ頭に入っていれば問題無いでしょう。


あとは「様」と「殿」なのですが、「各位」「御中」「先生」「殿」の使い方が分かっているのでしたら(些か乱暴ではありますが)消去法的に「様」の使う場合が見えて来るのです。


そこで、今回は敬称「殿」の使い方を中心に解説をする事に致します。


(1)「役職名」か「敬称」か


部長・課長などの「役職名」が敬称の機能を有するかどうかは、実は会社・団体内の取り決めによります。


そういう訳ですので、もしも敬称の機能を持たない場合に「~部長」「~課長」のみで終われば、「敬称無し」。

理屈の上では大変失礼だという事になるのです。


この場合に付ける敬称は「殿」。日本では「様」を用いませんので御注意を:

×「~部長様」→○「~部長殿

×「~課長様」→○「~課長殿


なお、課長などの役職者が部下や目下である場合も同じ形式になります。

考察は十分に出来ていませんが、これが「様」が付けられない理由なのかもしれません。


そして、これらの役職名が「敬称の機能を持つ」場合は、付けるとタブーとされている「二重敬称」になってしまいます。

・・・これも理屈の上では!


(2)やはり「殿」は「役職名」+「殿」という使われ方が多い。

前項では「理屈の上では」という文言を用いました。

実のところは、「部長」「課長」「主任」などの役職名が「敬称としての機能をもつ」という会社でも、「役職名」+「殿」は使われます。


その理由は、「会社には必ず『相手の会社(組織)』があるから」。

そして、相手の会社(組織)は一つではありませんし、役職名が前項のどちらのルール下に置かれているかも判然としない場合が大抵です。


どの相手会社(組織)に対しても」おしなべて失礼の無い様にするためには・・・次の様に考えてみましょう:

・「部長」が敬称でないA社宛て・・・「~部長殿」でなければならない

・「部長」が敬称となるB社宛て・・・「~部長」でよく、「~部長殿」では実は二重敬称。


「失礼と取られる書き方のために相手を不愉快にさせる」のがまずいのか、それとも「二重敬称禁止のルールを破る」のがまずいのかを考えれば、前者を避けるという動きになるのは必然。

その結果、「~部長殿」の様な「役職名」+「殿」が標準に近い形になるという訳です。


ついでですが、口頭で「自分の上司」の事を相手の会社(組織)に述べる場合も同様に考えれば良いのです:

・「部長」が敬称となるB社に対して・・・上司に敬称を付けられないので、「部長の~が・・・」でなければならない
・「部長」が敬称でないA社に対して・・・「~部長が・・・」でよいが、「部長の~が・・・」でもよい


となります。

それならば、「部長の~が・・・」という形式が無難という事になるのではないでしょうか。


(3)無礼者にならない様に。名前の下に直接「殿」が付いて「構わない」場合とは?

前項の「役職名」+「殿」の頻度が高いので敬称「殿」が生き残っているとも言えるのですが、失礼を気にせずに名前に直接「殿」が付けられる場合が有ります。


それは、役割上で「直接の」部下の場合です。

(委員会・委員長)→(委員)の関係が典型的で、

「委員」から「委員」、「委員会(名義)」から「委員」へは「~殿」として結構です。


もちろん、複雑な構図下では「~委員殿」「~様」の方が無難な場合も多々有ります。

それゆえに、「役職名」+「殿」以外での「殿」の使用は避けられる傾向に有る様ですね。


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以上で、敬称「殿」のビジネス等における使用方法を概説致しました。


前回・今回で示した「各位」「御中」「先生」「殿」に当てはまらなければ、「様」の使用を考えられれば良いでしょう。


※追記:「殿」となるのはこの場合・補足(手紙・メール考10) も御参考に。